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死神腕の少年剣士  作者: 風炉の丘
【1】ハグレモノ案件
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1-2 ハグレモノ

 "野薔薇ノ王国"から見て、北から北東にかけては、広大無辺な森林群が溢れかえっている。

 そこは、"深キ深キ森"と呼ばれる、人の支配が及ばぬ魑魅魍魎の領域。

 私利私欲のために森を荒らすなら、大きな代償を払う事になるだろう。

 だが、"深キ深キ森"は、闇も深いが懐も深い。

 居場所を求め、森の奧へと踏みいるなら、如何なる者も拒まない。

 

 魔獣"掃除屋"は、"深キ深キ森"に最も数多く生息する魑魅魍魎だ。もはや森の一部といっていい。

 外見は巨大な昆虫のアリそのものである。成虫のサイズは大体大型犬や中型犬くらい。

 屍体や手負いの動物を食料として捕獲回収したり、歩行の邪魔になる障害物を獣道から取り除いたりと、結果的にとはいえ、森の環境保全に多大なる貢献をしている事から、"掃除屋"の異名が付けられた。

 また、"掃除屋"自体が森では貴重なタンパク源であり、その肉も非常に美味しいと評判である。

 "野薔薇ノ王国"の北部では、"掃除屋"の肉を使った家庭料理まである。


 以上のように"掃除屋"は、"深キ深キ森"では無くてはならない存在であり、多くの美食家に愛されている。

 しかし、森の外で繁殖を始めた途端、恐るべき害獣へと変貌する。

 "掃除屋"は、血の臭いを嗅いだ途端、恐るべきハンターとなるが、無傷の動物には興味すら示さない。だからこそ、森では多くの動物が"掃除屋"と共存している。

 ところが、森の外で繁殖を始めた"掃除屋"のハグレモノは、辺り構わず捕食を始めるのだ。

 恐らく"掃除屋"は雑食性。特殊なキノコを食べるハキリアリのように、森で採れる植物が主食と思われる。ところが、森の外にはそれがない。繁殖するには圧倒的にエサが足らず、生き餌を求めるようになるようだ。

 家畜が襲われる程度で済めばまだいい。繁殖に気付くのが遅れれば、数の暴力で一斉に襲いかかり、半時もせずに村が全滅…なんて事も十分にありうる。

 過去を振り返ると、"深キ深キ森"に隣接する多くの国で、小さな村がいくつも滅んでいるようだ。

 "野薔薇ノ王国"でも襲撃は何度も報告されている。幸い発見が早く、大きな犠牲が出る前に退治している。


 過去に何度も退治しているということは、対策が確立しているということだ。

 シロガネにハグレモノ退治の経験はないが、現場には経験豊富なラズ爺がいる。問題は無いだろう。

 問題は……あれ? シロガネは大切な事に気付く。

「ねえ、エンジャ」

「なんスか? シロガネ先輩」

「ハグレモノ退治ってどんな装備で行けばいいの?」

「さぁ……。よく分かりませんが、いつも通りで良いんじゃないスか?」

「ごめん。エンジャに聞いたボクが馬鹿だったよ」

「え~~!! なんでそんなに辛辣なんスか~!?」

「だってさぁ…」

 エンジャはオールマイティ型である。火力の強弱も自在な上に、炎を身にまとったり、火炎を放射したり、火球を作って飛ばす事も出来る。接近戦から遠距離戦まで思いのままなのだ。

 対してシロガネの死神腕は強烈だが、接近戦に特化している。おまけに推定年齢13歳の少年なので、大人に比べリーチが足りない。それを補うためには装備で工夫するしかない。そんなシロガネの苦労は、エンジャには分からないだろう。

 服装はいつものヤツにする。王宮戦士の制服だ。

 勇者を彷彿とさせる紅い制服は、物理ダメージを軽減する効果がある。白いマントは魔法ダメージを軽減する。

 問題は武器だ。シロガネはクローゼットを開ける。剣、槍、斧、鎚。扱える武器は一通り揃えている。どれを使うべきか。

 "掃除屋"は一匹や二匹じゃない。複数を相手にするとなるとリーチがほしい。しかし一匹一匹を確実に潰すなら攻撃力も…

「やっぱり…これかなぁ」

 心なしか笑顔のシロガネが選んだのは、自分の身長よりも長く、肉厚で、鉄板のように幅広いグレートソードだった。

 これなら"掃除屋"の集団も一振りで一網打尽。ドラゴンだって両断できるだろう。

 あくまで、ちゃんと振り回せればの話だが……

 だけどしょうがない。

 異世界ガングワルドでなら、シロガネは中学校に通う年齢だ。正に中2病の真っ盛り。

 抗えるはずもないのだ!

 ロマンには!

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