選択―子猫の命
ある朝、子猫を見つけた。
何となく肌寒くなった、夏の終わりの早朝のことだ。
いつもどおり、町の学校へ向かうバスの停留所へ歩いていく途中だった。
街路樹の根元のしげみのなかに、三匹、白い子猫がいた。
生まれたて、というわけではなかった。眼もぱっちりと開いていて、自らの足で歩いていた。
しかし、ひとりだちするには早すぎるようだった。歩くのも、よちよちといった具合だった。
三匹が互いにもたれかかりあって、丸い眼をくるくると、未知なる外界へ向けていた。
眼があっても、鳴き声ひとつあげず、そこにいるだけだった。
同じ親から生まれたのなら、めずらしいことに、三匹とも真っ白だった。
辺りを見回しても、親猫らしき姿はなかった。人もおらず、静まりかえっていた。
とっさに、家へ引き返して、保健所に連絡してもらうべきかと考えた。
どう見たって、飼い猫ではないのだから、そうしてしかるべきところに引き取ってもらうのが妥当だろう。
その先すぐに、殺処分が待ち受けているとしても。
もしかしたら、その前にもらい手がつくかもしれない。これくらいの子猫なら、十分期待できる。
しばらく立ち尽くして、考えた。
でも結局、そのままバスの停留所へ向かうことにした。
一週間ほどでやってきてしまう確実な命の終わりと、それまでにやってくるかもしれない愛情。
何もかもが未知で、すべてが不確定、そしてすべてが自らにかかっている世界。
それぞれをてんびんにかけてみて、勝手ながら選ばせてもらった。
一言だけ、「死ぬなよ」と残して、学校へ向かった。
【A Choice for Kittens’ Lives】