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月兎大亡命  作者: タナカ
7/17

決闘!博麗の巫女

戦闘シーンを書くのはこれが初めてです。おかしなところが沢山あるかもしれませんけど読んでいただけると幸いです。

 ジメジメとした森は不気味なほど閑散としていた。虫の音も草木のざわめきの音も聞こえず、五人の耳に入るのはドクンドクンと脈動する自分の心音だけだ。

 

「それで、早く何をするの?」

 

 静寂の中、霊夢が最初に口を開いた。鈴仙も「ここではあまり敵を作らない方がいいわ」と続く。だが目の前の玉兎トリオはうんともすんとも言わない。

 

「じゃあこうしましょう。私の条件を満たせばあなた達全員の罪を軽くしてあげる。庭を燃やした何とかって子に余りきつく当たらないように魔理沙に言っておくわ」

 

 唐突に交渉を持ち掛ける敵に緋燕達は顔を見合わせる。彗青はこのチャンスを逃すまいと「条件は何?」と一歩前に出た。そのとっさの行動を他の二人は止めようとはしない。彼女らも罪が軽くなるならそれはそれで良いと考えているからだ。

 

「条件は一つ、私とスペルカードルールで戦うこと」

 

 淡々と条件を説明する霊夢に対して彗青はきょとんと立ち尽くしていた。月の兎である彼女らすればスペルカードルールは未知の存在。彗青の「そのスなんとかルールで戦えばいいのね」という発言に黙ってうなずく霊夢。

 

「詳細は知らないでしょ? 説明するわ」

 

 鈴仙が三人に大まかなスペルカードルールの内容を説明する。それを理解した玉兎達は誰が戦うかを話し合っていた。

 

「飛び道具が使える私が一番適任。だから私が……」

 

 緋燕が黒色のフレームで覆われたレーザーライフルを生成して霊夢へ真っ直ぐ向かおうとするが秋翠に肩を掴まれ阻まれる。

 

「元は私が石段を撃ったのが原因。緋燕が戦う必要はない」

 

「私がケジメをつける。二人は下がってて」

 

 彗青が二人の前に立ち、壁となった。すると緋燕は「ちょっとちょっと」と肩の手を振り払って目の前の兎の横に立つ。

 

「ダメだよ、だって彗青は……」

 

「いいの、いつまでもこのままじゃいけないから」

 

 そう言って彗青は緋燕に向かってにこりと笑う。すると緋燕は真剣な眼差しの親友に短機関銃を渡した。

 

「お守りだよ」

 

「ありがとう」

 

 彗青は“お守り”をスカートのゴムに挟んで真っ直ぐ前を見据えて歩き出した。

 

「別に三人がかりでかかってきても構わないのよ」

 

 霊夢は挑発するかのようにお札をひらひらと振る。彼女には絶対的な自信がある事を鈴仙は知っていた。幻想郷でも実力者である霊夢に勝つには彼女の攻撃をある程度把握しておかなくては勝利を勝ち取ることは出来ない。

 

「今に見ていな、必ず地に墜としてやる!」

 

 彗青はブレザーを脱ぎ捨て、ブラウスの袖をまくった。緋燕が無造作に落ちたブレザーを拾う際に手にしていた武器を彗青に渡す。

 

「ありがとう、それじゃ行ってくるね」

 

 彗青は曇る顔の緋燕に笑顔を向けて紅白の巫女に対峙する。辺りは静まり完全な無音の空間が出来上がる。雲から覗く月明かりが森に降り注ぎスポットライトのように相対する二人を照らした。

 

「そんなに緊張する必要はないわ。所詮これは遊び、気楽にやればいいのよ」

 

「簡単に言ってくれる……」

 

 彗青は汗で濡れる両手で武器をしっかり持ち、安全装置を解除した。

 

「私は二枚使うわ。あなたは?」

 

「一枚で充分よ、名前は『銃撃』だけだから」

 

「ふーん……それなら私から行くわよ!」

 

 霊夢は勢いよく地を蹴り空へ舞う。その際に風が吹き荒れ彼女の力の強さを示す。

 

「地上人にはこんな力を持った奴が山ほどいるの!?」

 

 緋燕が風を手で遮りながら鈴仙に訊くと「霊夢が強すぎるだけよ」と返される。月の民の一般的な認識では地上は監獄のようなものだ。そんな場所にこれほどの力を持つ者たちが蔓延(はびこ)っていると思うと認識が大きく変わりそうなのだ。

 

「地上人も侮れないね」

 

 彗青も空を飛び霊夢を追いかける。だがこの遅れを霊夢は狙っており、森から上空へ飛び出した敵へ先制攻撃を仕掛ける。

 

霊符「夢想封印」

 

 それは霊夢の十八番であり、彼女を象徴する技と言ってもいい。様々な色の光球が彗青目掛けて飛んでくる。それらはまるで個々に意思があるかのようだ。

 

「何のこれしき!」

 

 思わず瞼を閉じてしまうほどの光に彗青は飲み込まれる。その瞬間大きな爆発が起こり、辺り一面を真昼の様な明るさで包んだ。

 

「彗青!!!」

 

 緋燕が親友の名を叫び、風が収まったのを確認すると急いで爆心地へと向うがそこには何もない。跡形もなく消えてしまったのか、それともどこかに落下しているのか。

 

「そんな……」

 

 落胆する緋燕に霊夢が声をかける。

 

「下よ。直撃する前に爆破させたからその風で下に落ちたわ」

 

 その言葉を信じてすぐさま下へと降りる緋燕。霊夢の言う通り地面に伸びている少女が見つかった。

 

「彗青! ねぇ起きて!」

 

 緋燕はぐったりとしている彗青に必死に呼びかける。それが答えたのか彼女はうめき声を上げながら瞼を開く。見るからに目立った外傷は無いようだ。

 

「あれ、緋燕……」

 

「彗青大丈夫なの?」

 

 そう訊くと彗青は立ち上がって腰などをひねったり肩を回したりしてどこか痛まないか確認する。

 

「あぁ……別に何ともない」

 

 彗青がそう言うと緋燕は「よかった!」と泣きながら目の前の少女に抱きつく。彗青は自分の胸に埋もれる少女の赤い髪を撫でる。ここまで緋燕が心配してくれたことを嬉しく思った。すると近くから咳払いが聞こえた。音の方向を見ると霊夢が気難しそうな顔で「まだ戦う?」と彗青に問う。

 

「ええ、まだ私の番がまだだからね」

 

 そう言って霊夢に笑みを飛ばす。それに対して彼女もニヤリと歯を見せて笑った。

 

「そう来なくっちゃ、それでこそ幻想郷! 退屈しなくて済むわ」

 

 霊夢は上空へ舞い上がり、彗青のスペルカードを待ち受ける。その時の彼女は実に生き生きとしていた。鈴仙もこんな姿は初めて見てとても驚いていた。

 

「緋燕、武器お願い!」

 

「任せなさい!」

 

 彗青は緋燕から武骨なバルカン砲とレーザーライフルを受け取って空へ上がる。辺りが暗く互いの姿は非常に見えづらい。月と星の明かりを頼りに敵を探り弾幕を放つ。

 

「喰らいな! 20ミリバルカンの弾幕を!」

 

 彗青は体系に不似合いな巨大バルカンの銃口を巫女へ向けて射撃スイッチを押しこむ。その瞬間、リング状に並べられたいくつもの銃身が回転し曳光弾(えいこうだん)をばら撒いた。軽量で制止力が高いこの砲の通称は『片手バルカン』だ。

 

 霊夢は目で弾道を確認しそれらを華麗にかわす。彗青が無茶苦茶に弾を撃っているうちにやがて弾薬ベルトが尽き、銃身だけが回り続ける。

 

「もう弾切れ!?」

 

 バルカンを放り投げ、もう片方の手に握るレーザーライフルの引き金を絞った。銃口からは一筋の光線が重低音を響かせながら夜の闇を切り裂く。その時霊夢は放り棄てられたバルカン砲に一瞬だけ気を取られていた。そのせいで迫るレーザーの対応が遅れる。

 

「嘘!」

 

 霊夢はレーザーをすんでの所で回避するが服の袖の一部が焼け落ちる。彗青は即座に次弾を手動で装填し、狙いを定める。

 

「次は当てる!」

 

 そう言葉にはするが彗青は射撃に自信がなく、普通に撃って当てることができるか疑問に思っていた。相手も初見で高速のレーザーを回避する化け物であることもあって正攻法では適わないことぐらい彼女にはわかっていた。策を練っているうちに彗青はスカートに挟んだ“お守り”を思い出す。

 

「これだ!」

 

 彗青は向かってくる霊夢にレーザーライフルで迎撃する。しかし霊夢はその銃撃をへでもないかのように軽々と避ける。彼女の速度はまるで落ちず距離は徐々に迫ってくる。

 

 霊夢の姿がはっきり認識出来る距離までになると彗青はレーザーライフルを思い切り月の方へ投げる。

 

「武器を捨てた?」

 

 彗青は武器に気を取られている霊夢の視界外へ迅速に移動しLMP1を構える。一度霊夢が捨てた武器に注意を向けることを彗青は目にしていた。それを利用して相手の死角へ移り攻撃するという一か八かの作戦を立てたのだ。そして今、その成功を収めるため彗青は勝利の引き金を引く。

 

(もらった!)

 

 無数の光弾が耳をつんざくような音を立てて霊夢へと襲い掛かる。だが博麗の巫女の名は伊達ではない。彼女が二度も同じ策にかかるはずもなく弾幕は容易に避けられる。

 

「悪くないけどまだまだね」

 

秘儀「背水之陣」

 

 霊夢が二度目のスペルカード宣言をする。すると彗青の真後ろで控えていた陰陽玉が隙間の無い、まるで川の様に終わりのない光弾を放った。それと同時に霊夢が弾幕を張る。

 

「これで終わりよ」

 

 彗青は後ろへ逃げることができないため弾を避け続けるが疲労がついに限界を超え体が悲鳴を上げる。

 

「まだ終わらないっ!」

 

 必死の抵抗の末、彗青の体力は無くなり気を失って地へと真っ逆さまに落ちていく。それを霊夢は受け止めて他の玉兎の元へ運ぶ。

 

「ちょっとやり過ぎたかしら」

 

***

 

「彗青!」

 

 霊夢に抱きかかえられる彗青のもとへ走る緋燕と秋翠そして後から鈴仙もついてくる。

 

「大丈夫、寝てるだけよ」

 

 霊夢の腕の中で寝息を立てる彗青の姿を見て三人の玉兎は安堵する。緋燕は緊張がほぐれたのかぺたりと地面に座り込んだ。秋翠もほっと息を吐いた。

 

「この三人は明日魔理沙の家へ連れていくから私が預かるわ」

 

 緋燕、秋翠の二人は軽く頷き、神社へと歩く霊夢の後を追った。

 

「私もやっと帰れるのね」

 

 鈴仙が大きなため息をつくと「鈴仙、ありがとね」と霊夢が後ろ姿を見せながらお礼を言と鈴仙は「こちらこそ」と返しその場を立ち去った。こうして鈴仙の長い長い一日は幕を閉じた。

うどんげ、やっと帰還ですね。まだ鈴仙には帰れる所があるんだ。こんなにうれしい事はない。


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