退屈な生活に刺激を求めて
最初からもう訳わかんないです
月は決して地球に背を向けることはない。その性質を利用して月の裏側に文明を気づいた者たちがいた。彼等は月人と呼ばれ、高度で発達した技術を持っている。だがそれだけではなく月にはもう一種族存在する。それらは玉兎といい、その名の通りの兎の耳を生やした者達を指す。だが玉兎達は大半、性格に難があったりする。
「返しなさーい!!」
「こんな貴重な銃返せと言われたら返したくなくなっちゃうよ」
薄い赤色の髪と白い耳を揺らしながら少女は追手から逃げる。その手には短機関銃が握られており、いつでも発砲できるようにトリガーに指をかけていた。少女は木々の生い茂る獣道を抜け、街道に出る。人通りが多い街道なら追手を撒くことが容易になる。人々の合間を縫いながらちょこちょこ後方へと視線を移す。誰も追いかけていないことを確認した少女は一息ついて、すぐそばの建物に入った。
「また月の使者から武器を盗んだの? 緋燕は懲りないなぁ」
銃を抱えた緋燕の元に同じ玉兎の仲間の彗青が苦笑いをしている。
「今回のはヤバイよ、ファイアレートが馬鹿みたいに高いから敵なんて一瞬でボロ雑巾にできるし反動はゼロ!」
そういって手に持った銃を友に掲げて見せる。緋燕は重度の武器コレクターで、自分の気にいった武器を見るとすぐに手にしたくなるそうだ。それ故に過去に何度も窃盗を繰り返している。だが彼女は盗む相手を寛容な者や玉兎だけ絞っており、これと言ったお仕置きを受けていない。
「これでまたコレクションが増える」
緋燕は込み上げる笑いを抑えるながら銃を自分の部屋に持って行き、壁に掛ける。壁一面に掛けられた武器の量は彼女の武器マニアっぷりを物語っており、ルームメイトの彗青も初めて見た時は驚いて腰が抜けた程だ。
「そういえばあんた結構髪伸びてきてない?」
いつの間にか部屋に入っていた彗青にそう言われ緋燕は髪を触って「本当だ」と呟く。それは彼女の右目を隠して視界を悪くしている。
「初めて会った時はさっぱりしてて良かったのに」
「結べばいいでしょ」
緋燕は机の引き出しから黒色のヘアゴムを取り出し、長い髪を後頭部より少し上で結んだ。
「ポニーテールね、いいじゃん」
そう言いながら緋燕の髪を少し整える彗青。だが長い前髪が気になり、合点のいかないような顔をする。
「前見える?」
そう聞くと「全然生活に支障はないけど」と緋燕は前髪を弄りながら答える。
「そんな私じゃないんだから」
彗青は『視界を操る程度の能力』を持っている。彼女の目は他人の視界すらも映すことができ、その上好きなように操ることができるのだ。ゆえに視界の大切さを一番理解しているつもりであるのだ。
「それに兵士にとって目は命そのもの、銃だって狙えないじゃない」
二人は玉兎で編成される部隊の兵士……だが戦う機会がほとんどなく実戦経験は皆無に等しい。訓練こそ行っているもののやる気があるのは一部の者だけで大半が怠けているのが現状だ。
「最新式は狙わなくても当たるよ」
「もう知らないからね」
彗青は呆れた表情をして部屋を後にする。その後、緋燕は窓から外を眺めた。
「地上か……」
正直、彼女は月での生活に飽き飽きしていた。毎日繰り返す訓練は退屈で、趣味の武器コレクションも大体目処がついてきたのだ。刺激の無い日常から抜け出し、新しい生活を送りたいと緋燕は思っている。
以前に月から逃げ出した人がいるのを耳にしたことはあった。だが連れ戻された者もいるという噂を緋燕は聞いた事があり、中々逃げ出す決心がつかない。あれだけのことをしておいて逃げ出すなんてしたら、連れ戻された時に何をされるか想像もつかない。だから今は憧れを抱く程度にとどめておくのだ。
オリキャラしか出てないぞ! 大丈夫か?