崖と犬
この尽きず続く海と、足元の果てしない砂粒。
化け物に肢体を撫でられたような、素晴らしいトキメキを感じませんか。
体中に今にも、世界の細々した全てが昇り詰めてきそうな。
キャリーバッグに私がつまっている。
私はやっと、生きてきた中で見つけた。
海の青黒さ、私を待っていてくれてありがとう。
赤い手枷を、その青黒い夢で熔かして迄、待っていてくださってありがとう。
砂粒は一匹一匹となり踊り出す。
さくさくと、くらくらと、ぐらぐらと。
脚を繰り上げると、貴方の、反発する磁石のような重さが沁みる。
砂粒たちは私に狭い道を開けだして、誘う。