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夢の中から落っこちて・・・   作者: 東山紗知子
一章 落ちてきた私
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10.賑やかな夕食


 再び顔を洗って朝行った部屋に行くと、もうすでに食事は始まっていた。


「おっ、来たか。腹減っただろう?」 朗が気さくに声をかける。

 

それにあいまいにうなずきながら幸羽は席につく。そこに富貴恵が食事を運んできた。

今夜も和風の献立だ。 朝と変わらず何気ない煮物一つをとっても、驚くほど美味しい。

昼を抜いたこともあり、幸羽は夢中で食べた。


「夕食はとれそうだね」 蒼聖が安堵したように微笑んだ。

 

そう言われて、ハっとする。


(ヤダ、私ガッツいていたかしら、恥ずかしい)

   

 幸羽は少し顔を赤くして箸を止め、ごまかす様に周りを見渡すと知らない人が混じっていた。

その中でも斜め向かいにいる男から目が離せなくなった。 


ブロンドに青い目の若い男なのだが、その髪は背中までありオマケに縦ロールに巻いてある。

そして、レースが付いたフリフリのシャツと豪華な刺繍の黒い上着を着ている。

隣にマ○ー・アント○ネ○トが居てもおかしくない格好だ。


「今夜も富貴恵さんの飯は最高!」 良太が言うのに答えて、


「ええ、本当に。わたくしは、これを頂くためにどんなに遠くへ行っても、この場所に舞い戻ってきてしまうのですよ」 大仰に言い、ブロンドの縦ロールを揺らすのをまじまじと見つめる。


(この人って、コスプレ趣味なのかしら…… それとも舞台俳優さん?)


そんな幸羽の視線に気づいて男が微笑む。


「美しいレディに、そのように熱く見つめられては胸が高鳴って、この極上の食事さえ喉を通らなくなってしまいます」


幸羽はあわてて目をそらしうつむく。


「ははは、大方あんたの格好に面食らったんだろう。派手だからな」 朗が笑う。


「そういえば今朝は居なかったもんね。 その人は、アンティーク・ジュエリー専門の宝石屋さんだよ」歩が幸羽に説明する。


「わたくしはレオンハルト・M・バルバローザといいます。どうぞ、お見知りおきを」 縦ロール男は優雅に一礼した。


「面倒くせーから、そいつは宝石屋でいいぞ」 朗が口を出す。


「それから、こっちのヤツが薬屋だ」 あごで示された中年の男が顔をしかめる。


「ボクには『厳命堂』と言う名前がちゃんとあるんだけど」 黒ぶち眼鏡をかけた小太りの、こちらはオタクぽい男だ。


「それは屋号じゃないの?」 今度は歩が口を挟む。


「どっちでもイイだろう、とにかく怪しげな薬を売り歩いている男だ」


「怪しくなんかないだろ。ボクの薬はよく効くんだぞ。 失礼な」 自分のことをボクと呼ぶ中年男が、ムッとする


「怪しいのは薬の材料だよな。中身が不明だから、オレは最後の手段でしか飲まないって決めてる」 


良太が真面目な表情をして言うので幸羽は目を瞬いた。


「秘伝処方なんだから、教えられないのは普通だろ。企業秘密だよ」


「もう、それくらいにして置きたまえ。 幸羽君、今のところ長期滞在で部屋を借りているのは、ここに居ないミアを含めて、このメンバーだよ。 他は離れにいる短期の宿泊者になる。

 彼らも定期的に来る常連さんが多いかな」 それまで黙っていた蒼聖がまとめるようにいい、幸羽はうなずいた。

そして異質な存在であるはずの自分を特別扱いせずに普通に接してくれる皆に感謝したのだった。

 


 幸羽は食事を終えると、帰宅したミアにつれられてお風呂に入った。 

この館には岩風呂があり、温泉がわいていたのだ。 ちゃんと男女別に分かれている。


「毎日、温泉に入れるなんて贅沢ですね」 幸羽は目を丸くする。


「美肌効果が高いからツルツルになるわよ。朗の頭を見れば効果がよくわかるでしょう?」


「やだ、ミアさんたら!」 幸羽が笑い転げた。


 確かに朗のスキンヘッドはつやつやだった。 笑う幸羽にミアは目を細めた。



そして、転移による影響が残っていたのか幸羽は起きたばかりなのに、また眠りに付いたのだった。


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