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夢の中から落っこちて・・・   作者: 東山紗知子
一章 落ちてきた私
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1.よく見る夢


 気がつくと幸羽ゆきはは外に立っていた。 記憶では、いつものように自分のベッドに入ったはずだった。 今着ているのも、リボンをつけたネコのパジャマだ。   

それなのに幸羽は裸足で、月夜の草わらにぽつんと立っているのである。


 幸羽は一つため息をつくと、前が見えないほど密集している背の高い草を掻き分け始めた。

イグサに似た細長い葉を持つ銀色の植物は、思いのほか腰があり、掻き分けて進むのも一苦労だ。

 幸羽が、この状況に少しも動じないのは、この場所に何度も来ているからであり尚且つここが夢の中だと知っているからだ。


  そうこれは繰り返し見る夢なのだ。不思議な事に何度も見ているのに目が覚めた時には、忘れてしまっていた。 同じ夢を見て

 「そういえば前にも…」と思い出すのが常だった。

 夢の中で夢を思い出すというのもおかしな話だが、何せこの夢は ただ同じ場所に立っている事に気づくだけの夢だった。

なので「またか」と思いながら幸羽は草を掻き分けるのだった。

  

  

 高御位たかみくら 幸羽ゆきは 23歳。  性格は真面目で 自分のことより他人のことを優先してしまうお人好しだ。 あちこちに首を突っ込みバタバタしているため、周りの人間が苦笑しながら、ついつい手を貸してしまう。 なぜか放って置けない娘なのだ。 

身近に美形が多かったせいか自己評価が低く、それなりの容姿なのにメイクや服装はおざなりだ。 それを、のんきな幸羽を心配する友人たちが、虫よけに丁度良いと放置したため本人を含めて周囲には地味な娘だと認識されている。 

 




 草の海を脱けて、やっと開けた場所に出た。そこは草の壁に囲まれた円形の広場になっていて、中央に石でできた建物がある。

四方に二段段差がついて高くなった四畳半ほどの床の四隅に石の円柱が立っている。 円柱には細かな模様が彫りこまれており、その上に真ん中に丸い穴が開いた屋根がのっていた。


 その天窓?の丁度真下に、やはり石でできたデザートグラスのような形の台座付きの水盤が置かれている。 10センチほどの深さの水盤の中心から水が湧き出しているのだが、何か仕掛けがあるのか透き通った水はあふれ出ることはなかった。

  

 

 幸羽は天窓を通して水盤に映る、半月よりは少し丸くなった月をちらりと見た後、石段に腰を下ろした。抱えた膝にあごを乗せ、明日の休みの予定を考え始めた。

ここでは他にすることが無いからだ。何度も試してみたのだが、違う場所に行こうとしても、結局この場所に出てしまう。そして、ウロウロしているうちに目が覚めるのだ。

 

 今では夢なのだから何でも有りなのだろうと自分を納得させている。 それなら無駄なことはしないほうが賢明だと、最近ではボーっと過ごすことにしていた。

看護師をしている幸羽は夜勤もあるため丸一日休める休日は貴重なのだ。

  

「ええと、まず洗濯して、銀行に行って…」 指を折りながら独り言を言っていると、何かよい香りが鼻先をかすめた。思わずくんくんと鼻を鳴らして香りを探す。


「花なんて咲いてないよね。香水? じゃなくてアロマかな?  うーん、この香りはネロリみたいな…もしかして誰か他にいるの?」


 香りをたどってきょろきょろしていると広場を囲む草の壁の一ヶ所に、妙なものを見つけた。それは細い隙間だ。猫が通るような獣道? がずっと奥のほうまで続いている。

 幸羽は悩んだ。 行ってみたい。でもどうしよう?

  

  幸羽は基本心配性なので、物事はよく考えてから決めようとする。

しかし、たいていは考えすぎて疲れ果て、開き直ってテキトーに決めてしまうことが多い。

 真剣に悩んでいたかと思ったら最後には 

「まっ、いいか。なんとかなるよね。」 で済ましてしまうのだから、周りの人がため息の一つもつきたくなるのは当然の成り行きだろう。 


「慎重なんだか、大胆なんだかわかんない女だ!」 と呆れられてしまうのだ。

 

 そして今回も考えた挙句 

「夢だからたぶん大丈夫」 と訳の解らない言い訳を自分にしながら幸羽は、自分の身体には狭い小道に沿って草を掻き分けて進んでいった。


それは別の広場に繋がっていた。

 

そして真ん中に大きな木が一本立っていた。



そこで記憶が途切れて、はっと意識を取り戻した幸羽が感じたのは、自分の身体にかかる重力だった。




  

初めての連載です。書き方を模索中ですので読みにくかったらすみません。

しばらく毎日投稿したいと思います。


読んでくださってありがとうございます。

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