1.5話
死んだ。
ひどくあっさりと。
人間、生まれてくるのは大変なのに死ぬのは簡単なんだな。
体の感覚がほとんどないように感じる。自分の輪郭があいまいだ。
ああ、これが死んでるってことなのか。
布団でウトウトするみたいな感じ、といえばいいのだろうか。
これから、どうなるんだろう。
死ぬ?
もう死んでる。
消える?
ああ、そんな感じだ。たぶん消える。
・・・・彼女は、妹の美香はどうしたんだろう。
一緒に巻き込まれたのかな・・・
『それでいいのかい?』
・・・・遠くのほうから声が聞こえる。女の子の、まだ幼さの抜けきっていない声。
誰だ?
『このままだと、君は君個人ではなくなる。それでもいいのかい?』
・・・どういうことだ?
『魂が溶け込むのさ』
・・・溶け込む?
何に?
『そっちの世界に。そっちの流れに』
・・・・世界に・・・
あぁ、眠い
・・眠い・・・
・・・・・すごい、眠い・・・・
『ぐぬぬ、思っていたより分解が早かったか・・・』
・・・・・自分がとけていくのがわかる
周りとの境目が、あいまいになっていく
きえて、しまうのかなぁ
『・・・そうだっ!君、可愛がってる妹がいるだろ!』
?
美香のことか?
『ええと、キクモトミカ、だっけ。このままだと、もう会えなくなっちゃうよ?いいのかい?』
・・・・・
・・・・・・・会えなくなる?美香ちゃんに?
それはだめだ
『うん、そうでしょ?溶け込みたくないでしょう?』
ああ
会えなくなるのは嫌だ
『なら、こっち側へおいで!』
こっち側?
どうすればいい?
『君が行きたいと願えばいいんだ!早く、時間がない!!』
そういわれて、僕は『願った』
これが僕、菊本信也が、
菊本信也だった、最期の時間だった