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15. 思春期にさせる

 えっ、と小さく叫んで新米審査官は上体をのけぞらせる。

「後輩魔闘士さんは、まさかこれ誘ってるってことですか? 妹さんを好きってことですか? 妹さんの方は? お兄さんの同僚に対して親しげだなと思ってはいましたが」

 中堅審査官が首を横に振る。

「信じられない」

「信じられない急展開ですよね!」

「今頃か、新米くん。君が一番寄り添えるという期待で担当を任せられたのに。気付いてなかったとは信じられない」

 恋愛感情に新米だったらしい新米は身を縮めた。

「だから先輩魔闘士さんが後輩さんをしょっちゅう連れ帰ったんでしょうか。どっちのため? 逆に後輩をフィッシュパイで嫌がらせして諦めさせようとした説も。それは罪深い…傷害罪で罰金というところでしょうか」

「何を審査しようとしてるんだ、新米くんは」

 新米はこぶしを握った。

「先輩さんを失う深い悲しみの中で闇堕ちして隔離され、孤高に北嶺の秘密と対峙していたところに突然訪れた想い人! 彼女の奪還をもくろむ傲慢魔術師をかわして過ごす温かな再会のひととき…」

「僕は僕のような振る舞いを見ていてうらやま恥ずかしいよ」

「そして夜が訪れ、彼は思う…このまま彼女を帰してしまっていいのか、自分が下山できる日は来ないかもしれない、もう誰も失いたくないんだ!」

「うらやましい気持ちが勝ってきた」

「彼の心臓は早鐘のように打ち、これが鐘でチン! なら銀盆融解。顔もほてって最大火力を浴びてるようだ、一体チン何回分だ、彼の理性は焼失間際」

「鐘でチン! はどうかなあ、詩的情緒に欠けるかなあ、鐘とかチンとか語感が連想させるものが真ん中過ぎない?」

「彼女にとっては兄の後輩にして親友、密かに慕っていたのに連絡が取れずにいた彼が目の前に」

「密かにと感じているのは新米くんだけでは」

「兄との思い出を共有し、一緒に涙し一緒に笑う。そして彼の唇から情熱的な誘いが」

「彼は自分の闇がち魔力に彼女を近付けまいと、距離を保っていたようだが?」

「紳士道など、崖っぷち青年の熱い若さの前には! …そうでしたね。彼女のローブの闇性魔力反射機能がバチバチに防御してましたね。物理的に接触不可です」

 新米は冷静を取り戻して椅子に座り直した。隣で中堅がぼそっと呟く。

「彼女がローブを脱げば解決だよ。除染設備もあるようだし」

「深雪にしんと静まる二人きりの僻地、岩窟の寝室は月さえも見ていない。彼は遠慮がちに決断をゆだねてくる…『どういうベッドをご希望ですか』!」

「紳士的でも遠慮がちでもない聞き方だね」

「彼女の緊張に震える手がローブを握り締める。果たして彼女の答えは!」

 新米が熱演している間も、記憶石の水盤は再生を続けていた。後輩魔闘士が彼女に所内を案内している。

『観測機器の整備やデータ分析に追われてて、いつどこで睡魔で倒れてもいいように各所に寝具を配置しているんです。先輩と研究した日々の経験が活きました。ハンモック、野営地テント風、毛皮でライニングした寝袋、基地時代の二段ベッドも残ってます。どれでも好きな所でゆっくり休んでください』

『えっと…はい…寝袋はゆっくり自戒するのに良さそうです』

 新米は机にばーんと両手を突いて立ち上がった。

「自分は何を見せられていたんですか!」

「自分の空想を見せられていたのでは?」

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