神世界
私たちは液晶画面を観た。空を見上げた。戦争を止めた。
そして、蘇るものがいた。天地が一体になった。降臨したのだ。
私たちが言い伝えて、書き残して、信仰の対象とも言える存在である『神話』の世界がこの現世にやってきた。同時に神の子や英雄、王などだ。
そんな非常識な世界へ変貌したのは、20XX年のことだった。
そんな世の中に生を受けて15年のちょうど受験生の佐野尊は突然、カァー!! という鴉の一声で起きる。しかも耳元である。
少しの間、違和感を感じなかったが、もう一度耳元で鴉の甲高い鳴き声が聞こえて、飛び起きる。
「どぅわぁ!!?」
と驚いた声を出して、枕のところを見ると通常よりも少しばかり大きい鴉が居た。
「どゆこと?」
当然の反応だろう。起きたら、真横に鴉がいたのだ。しかもよく日常で見る鴉の一回りはデカいのだ。初心者セットで貰ったギターのアンプぐらいはある。再度こう言った。
「どゆこと?」
それに対して、鴉が口を開いた。
え? 口を開く?
「自己紹介ヲシヨウ。儂は八咫烏ナリ。名前グライハ聞イタコトアルデアロウ?」
ただでさえ、今のこの鴉が喋ったりの状況に何も追いついていないというのに、自己紹介されても……というような気持ちである。
「やたがらす? なんか漫画とかアニメとかで出てくる?」
「現代社会ダトソンナトコニナルカノ」
なるほどと一旦、納得したうえで、冷静に考え始めて、色々とツッコミどころ満載だと気がつく。
「……いやなんで鴉が喋ってるわけぇ!?」
まずの問題に戻る。
「ソレガ儂ニモ分カランノダ。気ガ付ケバ、其方ニ仕エルト云ウ使命ダケヲ持ッテ現世ヘト参ッタノダ」
つまり、どっちもこの状況が理解できていないのだ。
なにか情報がないのかと、枕の隣にあるスマホに手を伸ばす。
「なんだ、これ……」
ForXiというチャットアプリには、『神様』という単語がトレンド入りしていた。そこで画面をスクロールしていくと、動画あった。
そこには、手足がドロっとしたデカい赤子のような姿のなにかが人間を襲っている映像だ。
少し前なら、こんなんAIだろとかなんとか言ってたかもしれない。しかし今、隣に喋る鴉がいるのだ。
「ウーン、アレハ蛭子命ノヨウジャナ」
「なんだそれは?」
「ナンジャ知ラヌノカ。伊邪那美ト伊邪那岐ハ何処カデ聞イタ事ハアルジャロ?」
と聞かれ、
「まあ名前ぐらいは」
「其奴等ノ出来損ナイノ子供ッテ処カノ」
そう簡単に説明した。
もっと画面をスクロールしていくと、今度は山の上が光り輝いている動画があったり、札を持ったツリ目の男が異形のモノを呼び出して、頭に角の生えた鬼のようなものと戦っている動画が出回っていた。色々と見ていると、
ドッダダダ! という足音が聞こえる。
「儂ガ居タラ面倒ナコトニナルジャロ」
と発光したと思えば、どこかに消える。
「ちょっと尊!! いつまで寝てるの! もう7時半よ!」
とお母さんが怒鳴り込んできた。
朝から色々とあったが、今日はあくまで祝日でも休日でもなんでもない平日である。つまり、学生の佐野尊はもたついている場合ではないのだ。
「わかっとるっての」
と立ち上がって、制服と鞄などの一式を一回へと運んでいく。テーブルにはサンドウィッチが置いてあった。
さっさと着替えると、テーブルに置かれたサンドウィッチを口にぶち込んで、急いで食べると、鞄を持って、
「行ってきまーす!」
とトビラを開け放って、走り出す。
違和感があった。アホみたく足が速くなってるのだ。50m走が中学生の平均的な8秒台であるはずが、なんか今なら車と同じくらいで走れてしまいそうなほど、体が軽いのだ。
試しに本気でジャンプしてみれば、2階建ての家ぐらいなら簡単に飛び越えられたりしてしまった。
「俺人外なった?」
そんなことを言いながらも、自分の体のコントロールの仕方が不思議と本能でわかる。
学校には8時15分までにつかなければならない。現在、8時である。普通に走ったら、30分はかかる。
しかし今なら、10分もかからず着きそうである。一体全体、何が起こってるんだ? という疑問は置いといて、時間厳守だ。
校門は目の前だ。尊は非常識だと思いながらも、家の上を跳んでいきながら、走っていく。
「セェェーーフ!!」
と言いながら、上から滑り込む。
「お前、どっから来たぁ!?」
先生がツッコムが聞き流す。自分にも分からないのだから。
そんなこんなで学校開始である。
彼は知らなかった。
この先、あらゆる個性豊かな危険な出会いが多くなるなんて。
どうも憶無です。
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