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come next story 0001 隅っこの僕

ちゃぶ台がひっくり返る音がした。母の叫び声、父親の怒鳴り声。

足音が近づいてくるたび、僕は押入れの奥に身を隠すようになっていた。


湿った布団の匂いと畳の匂いと誰にも届かない自分の呼吸の音だけナカマに思えた。

"どうしてこうなるのだろう"それが、幼い頃の初めての疑問だった。


夕方になると、父は酒を飲む。最初は笑って陽気、そのうち少しずつ顔が変化し、目が座り、声が荒くなる。何かの拍子に突然爆発するダイナマイトみたいだ。母が泣く。


その一連の流れはまるで山の上の天候の変化のように覚えていた。

 「今日の天気は晴れ、のち曇り 夜は雷雨」

そんな表現をして、必死に自分を誤魔化していた。


 酒の飲まない時間の父は優しかった。

日曜日の朝には公園・散歩・キャッチボール・運動会では、二人三脚に参加したり、はたからみたら、一般的な"父親"なのだ。


怖い夢を見て夜中泣いていた時、ギュッと抱きしめてくれた。

大きな胸元に抱かれて、『賢くなれ、五郎』その声はとてもやさしくしみこんだ。



だからこそ理解でない、人を殴る事、母を悲しませること。

押入れの中で五郎はいつも思っていた。

 "僕が母にできることはあるのか? 守れるのか? 悲しみから抜け出せるのか?"


その問いは、大人になった今も心のどこかで、答えを探している。





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