Ending01
白んだ空はやがて暁に染まり、そして闇が訪れようとしていた。
感覚の無い手足。
痛みさえない身体。
クロウは横たわっていた。
氷となり、亀裂の入った手足は動くことをやめている。
その隣には氷の神の巨大が物言わぬ氷となっていた。
やりとげた。
クロウは、思う。
しかし、そこに達成感も何もない。
凍らないよう目元には布を巻いたのが最後。
景色は暗く視力はもうない。温度とともに、命が凍っていく。
痛みもない、寒ささえ感じない。
僅かな呼吸は音さえなかった。
失っていく命。
その中、クロウはただただ、ハルを想った。
何度も謝った。
何度も願った。
何度も祈り、何度も胸の内で想いを綴った。
生きてくれ。
生きて欲しい。
笑って。 どうか幸せに。
誰よりも長く生きて、長く幸せで、笑ってくれと。
自分の行ったことは無意味かもしれない。
本当に村人の言うように、更なる怒りを招いただけかもしれない。
それでも、いいと。
クロウは思った。
自分の親を食った獣を神と崇めるよりは、きっと、ずっといい。
結果凍って死ぬことになっても、今生きてるだけ、親の後を追うように食われて死ぬより、ずっといい。
クロウは満足だった。
絶望も恐怖もなく、ただハルを想う。それだけで胸の内は温かい。
ハル。愛してる。
俺の想いだけは、何も凍らせない。