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ICE  作者: Karionette
6/9

06




暗い洞窟。

進むと光る苔が生えており、ぼんやりと明るくなった。


クロウは荷を解き、乱暴に食料を置く。



「……親父さん…。遺体だけでもって思ったけど」



クロウを迎えたのは無限とも思える氷の洞穴だ。

命の香りはしない。

ハルの首飾りを、無意識に握りしめた。


クロウは少し離れたところで身を隠す。

息が、うまく吸えない。

吸えたところで、内から身が凍るようだった。


命の炎から遠いここでは、首飾りの守りも気休め程度だ。

刻々と、体から温度と同時に命が消えていく。


しかし時はそう経たず、動きがあった。

置いた食料が、がさりがさりと動く。


食らう音がする。

凍りついた肉がいとも簡単に引き裂かれる音がする。


クロウは待った。

寒さが晴れるのを待った。


しかしそれはない。


クロウは剣を抜き、迷いなくそれを振り抜いた。


けたたましい鳴き声が洞窟内に響く。

クロウは凍った体を無理やり動かし、更にもう一撃を与えるも、硬い毛に阻まれ、刃は通らない。


向き直る。

クロウはその姿を見た。


目の前にいるのは、氷の神様。全身を氷で包んだ巨大な獣だった。


人語を話すでもなく、ありがたい言葉や感謝を唱えるでもない。

ただ、苦痛を訴えたか、敵に対して吠えたのか。理解のできない咆哮だけだ。


その姿は村人が見れば神と崇めるのかもしれないが、クロウにとっては日頃相手してきた魔物とそう変わらない。


氷の神ではなく、氷の獣。



「…さすがに、あれ以上嫌われたくないし、言わなかったけど、間違いないよな」



クロウは1人つぶやく。



貢物(エサ)をもらって喜ぶのは、獣の類で間違いない」



クロウは剣を握った。

知る限りで何よりも大きく、何よりも強大。


それでもやるしか無かった。

やらなければならなかった。





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