04
儀式を行う日。
それまで2人は話すことも、目を合わせることもなかった。
ただ、クロウは1日中見張りを行い、ハルは儀式の用意を進めた。
淡々と、しかし確実にその日は近づき、ついにそれは翌日と迫った。
誰もいない時間に、クロウは命の炎の部屋を訪れた。
しかしそこには先客がいて、その姿を見て咄嗟に姿を隠す。
いたのは、ハルだ。
「命の炎。私は、明日、氷の神様の所に行くの」
いつかの日にクロウに言ったように、ハルは炎の話し相手になっていた。
「怒っているのか、何かあったのか、本当はわからない。分からないから、行って、出来ることをする。もしかしたら、帰って来れないかもしれない。その可能性があることも、きちんと分かってる」
ハルは分かっていた。
今の寒さは、体力があることも若いことも、簡単に打ち砕くほどに強い。
意志の力では、どうにもならない事も分かっていた。
震える手を首飾りに。
握りしめて、ハルは笑う。
「でも、私は……。私は生きて欲しい。父さんや母さんが居なくなって、1人になった私と、ずっと一緒に居てくれたから。ずっと、ずっと、一緒に……」
ハルは泣かなかった。
涙を落としはしなかった。
「お願い。みんなを、クロウを守って。あいつ、私がいなかったら1人になっちゃうから。私は死んでも、父さんも母さんもいるけど、クロウは本当に、ひとりになっちゃうから。だから、お願い。どうかクロウを守って。クロウとの、約束を破ったこと…ごめんねって……っ」
クロウはその場を去った。