001.プロローグ
CoCのシナリオは書いたことがありますが小説としては処女作です。生暖かい目で見てください。
「……起立、礼。」
ホームルームが終わり、みんなはぞろぞろと席をたつ。積極的に他人に絡むようなコミュ力を所持していない俺は、いそいそと鞄を持ち、スマホのストップウォッチを開始して、小走りで学校を出る。家は徒歩で15分、信号は6つ程。どうやら今日は運が良かったらしく、6つ中4つを素通り出来た。そうして俺は今の自宅であるマンションに着き、ストップウォッチを止める。
「9分24秒…微妙だな」
そう世間一般の男子としては比較的高めではあるがはっきりと男子と分かる声で言う。一昨日あたりからなんとなく始めた帰宅RTA、本日の記録は微妙だった。初日は信号で全部止まり13分、昨日は上振れて7分という記録だったため、数値的には平均である。これが統計マジックか。
「夕飯どうしよう……あ、昨日のポテサラあったっけ。ご飯炊いてそれ食べよう。」
さっきとは違って男子とも女子とも判別がつかない、中性的だがどこか気だるさがにじみ出ている声でそうつぶやき、事故物件のため広さと機能の割に安い2LDKのマンションであるわが家に入り、着替え、夕飯の用意をする。僕は結構独り言を言う方だ。そこは俺に意識をシフトしても変わらない。あ、あと風呂も沸かさなければ。
「……ご馳走様でした」
ピーッ、ピーッ、ピーッ
夕飯を食べ終わるとちょうどお風呂が沸いたようd…あっまだメイク落としてない。家に着いたらもう意識が僕になってたから忘れてた…。
「今日なんか疲れるようなことあったかなぁ…」
そう言いながら僕は洗面台へと向かう。そこにうつったのは前髪と黒縁メガネで目を二重に隠し、しっかり陰キャなモブ男に見える顔。男子にしては長い前髪ともみあげは中学生の時にしてた校則への抵抗の結果だ。あとアホ毛。アイデンティティアホ毛。ビバアホ毛。
「よいしょっ…と」
僕はメガネをはずし、前髪をピンで留める。するとそこには二重で目が細めな顔が出る。この前髪メガネ&細い目状態が俺の状態だ。そしてメイク落としを取り、メイクを落とす。すると現れたのは、二重は変わらないがぱっちり大きな目、小ぶりな鼻、形の整った唇、そして印象としては中性的な美少女…少年?があった。この状態が僕である。
「我ながら絶妙なモブ感だよなぁあの状態…」
メイクの理由はプライベートと人とかかわる時を分けたいというだけである。そのためだけに中一後半のときからメイクを独学で勉強し…すいません嘘です厨二病期間だったので二重人格設定とかで特殊メイクまでやりました。ついでに声真似というか人力ボイチェンまで無駄にバカ高いクオリティまで仕上げてイロイロ遊んでました。それが原因で中学時代おもにTRPG(CoCの卓)をやるゲーム部に入れられたんだよなー…。まぁそのキャラシが俺のキャラの元になってるしRPのコツも理解できたからよかったけど。先輩たちどこに進学したんだっけ…。まいっか(フラグ)。
「あーなんか電波だなぁ…。お風呂入ろ」
そう言って服を脱ぎ、同年代だとどうあがいても発育不良と診断される華奢すぎる体があらわになる。160cmで69-57-80って女子すぎるでしょ。なに骨格バグってんの?っていう。おっかしいなぁ染色体はしっかりXYなのになぁ。うちは三人姉妹で父さんが180cm代の細マッチョ、母さんが167cmでスレンダー、姉さんが170cm代グラマラスで妹が現状155cmロリ体系だ。もしかして姉にいろいろ持ってかれたのかもしれない。おのれ姉。
「あ あ゛ぁ゛ぁ ー ー … … …」
お風呂は命の洗濯とは本当によく言ったものだ。心の底からの声が思わず漏れ出てしまう。漏れ出るってレベルじゃなかったけど。割と絶叫に近いような雰囲気だったけど。なんか喘いでいる感じの声出たけど。声が中性的だからなんかそのテのビデオみたいな感じになってしまってる。恥ずかしっ。このマンションは防音対策がしっかりされているので、窓を開けていなければこの声が外に漏れるようなことはなさそうだが、それはそれとして恥ずかしくなる。高校生の一人暮らしなのになぜこんな設備があるのかと言うと、単純に僕が中学生の時までピアノを習っていたりギターをかじっていたため、よくストレス発散に演奏していたからである。事故物件のため家賃としてはいい感じに収まっている。
「なんか今日疲れるようなことあったっけ…。まいっか」
そして僕は風呂を出て、寝間着に着替え、寝室兼私室に入る。ちなみにもう一つの部屋は基本物置兼服の部屋干しの部屋になっている。そして僕はベッドに寝転がり、スマホを取り出し、適当に目についた動画を見る。今回チョイスしたのはVtuberの雑談配信。名前は「【悲報】高校入学したのに未だに友達ゼロ人【絶望】 宇風遥/SorakazeHaruka」というもの。なかなか共感できる話題である。内容が悲しいが。そしてよく見るとこのV、企業勢だし結構人気がある。なんだよチャンネル登録者数2万人って。まぁあまり尖ってないらしく同期では一番伸びてないらしいが。厳しい世界だなぁ…。
「V楽しそうだなー。まー始めるのに金かかるし炎上とかしたらあれだけどなぁ…。あーお金無いな。バイト探すか…。」
悲しい現実を直視してしまったが、まあ後で考えよう。幸い高校1年の4月、まだ考える時間はいっぱいある…あるよね?まあ放課後とかにいろいろ見てみよう。RTAは諦めるか…。
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「あっ…ともうこんな時間…」
スマホの左上を見たら「2:23」を指していた。なんかどこぞのBGMと同じ時間なのは偶然だ。あの曲は神。
「まぁ鳥さん見たら寝よう…。明日も学校だし」
現在ペケがつけられているかのような状態の元青い鳥を開き、そうひとりごつ…フラグっぽいけど。
そして僕は渡りに船のような呟きを目にする。…思えばこれがきっかけだったのかもしれない。猫被りの僕があんな人生を歩めるようになるなんて。
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ふぉるてるて@fortelte 49秒
なんか珍しく急ぎの仕事がないから息抜きに新しいV用のガワを無料で抽選(乱数)3名に描くよ
応募したい人はファボ、リツイ、リプ、フォローしてね
受付は1時間後まで、100人超えたらリプ欄閉じるよ
あたった人は明後日あたりまでにDM送るので受け取ってから1週間以内に連絡してね
返信がなかったら再抽選するよ
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…神か!?いや神か!?(大事なことなため2回言った)
この「ふぉるてるて」氏、通称「ふぉるて」氏は年齢不詳の女性神絵師である。そして、結構大物なVの「ママ」である。ちなみにママというのはもちろん生みの親的なマッマではなくVの2次元アバターを描いた人のことを指すものだ。先ほど見ていた宇風氏もこの方の「娘」だったはず。
「こりゃやるっきゃないな」
迷いなく応募した。こういうのは夢を見るだけいいものだ。まぁホントに当たるとは思えないけども。
「よし、寝るか」
時刻は2:30を回ったところで、ちょうどいい区切りだと思い就寝する。そうだ明日は体育じゃん。めんどっ…。
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アラームが鳴り、僕は目を覚ます。朝だ。
「…あぁーねむっ。だが起きねば…」
そう言いながらが着替え、朝食と昼食(10秒でチャージするアレ)を用意し、朝食を食べる。
「あーメイクしないと…」
洗面所へ行き、メイクをする。やり方はもう体に染み付いているため、流れでやっていく。
「はぁー…憂鬱。行ってきます」
応答する声があるはずがないが、半ば癖のように俺は言う。挨拶は大事。まぁ俺は学校だと会釈しかし無いが。
そう考えながら、今日も俺は日々を過ごす。
ーーーそして、僕は今日も猫を被る。
地の文の量の調節って難しい