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夜の蓋

作者:ハクノチチ
 布団の中にいる男は何かに緊張しているでもなく、生活にプレッシャーを感じてもいないのだが、今夜は眠れそうにないぞと気が付いた。
 幼いころより思い当たる理由がないままどうしてか眠れないときにだけ現れた、言わば
不眠の匂いを久しぶりに嗅いでみたくなり、自らが命名した「夜の蓋」を開けてみることにする。しかし男はそうする前に、これまで開けてきた過去の「夜の蓋」がいつのころだったろうかと記憶を遡るのだった。
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