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34話 元メイドのお料理は抜群の出来。


とにかく、外までセレーナの名が響き渡るのを避けることはできた。

もしそうなっていたら、また特別警ら隊の連中と戦わなくてはいけなくなる。


俺は安堵と呆れからため息をついた。


このままでは、ろくに話もできない。

今は別の意味で興奮してしまっているメリリに、まず落ち着いてもらうため、料理をお願いすることとした。


昔よく作ってもらった三種肉のチーズ丼を注文すると、彼女は目の色を変えて、カウンターの奥へと戻っていった。

待ち時間、セレーナは真顔ながら口元に手を当てて思案顔をする。


「こんな人に料理なんかできるのかしら。そもそもメイドとしての仕事、成り立ってたの?」

「そこは心配いらないよ。腕だけは本当に確かなんだ」

「ぼっちゃま、腕だけとは失礼ですよっ!!」


そして、耳も確からしい。

再び幕の下ろされたカウンターの奥から、鋭い指摘が入る。


そうこう話しているうち、食欲をそそる音とともにいい香りが店内を漂い始めた。


少しして、カウンターの奥から手と皿だけがにゅっと差し出され、まずは白身魚のハーブ蒸しが提供される。


見た目や匂いの時点で、その腕の高さは伝わってきた。

野菜の配置もよく彩りも豊かなら、皮目はぱりっと焼き上げられており、その香ばしさを湯気に乗せてこれでもかと漂わせる。


ちなみに、三種の肉丼はご丁寧なことにわざわざカウンターから出てきて、両手で添えるように提供された。


……俺とセレーナへの態度の差は、ともかくとして。


「すごい、本当に美味しい。中までふっくら仕上がってるし、香辛料の効き具合もいい。オリーブオイルにも旨味が出ているわ」

「うん、やっぱりこれは外れないな。このワインソースの味、どの肉にも合うんだよ。単純な料理だからこそ、この旨味はふつう引き出せないな」


料理には、手を抜くことはなかったらしい。


「アポロン家にいたどのキッチンメイドが作ったものより、美味しいわ。丁寧でありながら、遊び心もある」


セレーナのメリリに対する評価もかなり上がったようだった。


言葉だけではない証拠として、次々とフォークが白身魚に刺され、見る間に量が減っていく。添えられていたパンも、いつのまにかなくなっている。


元主人としても、それは嬉しい限りだった。


「むふふふ、やっぱりご飯食べているぼっちゃま見るのは格別ですね……。なんだかうっとりしてきました」


カウンターに肘をついて、べったりと視線を浴びせられたのは少し困ったが、そんなのは些細な話だ。

セレーナともども、お代わりまでたっぷりといただいて、満腹になった。



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