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31話 最高のカップル?


「この腕輪とかもいいわね」


……そもそもの目立たないって趣旨忘れてない? そう思いこそしたが、純粋に楽しそうに振る舞う彼女を見れば言えない。


「あ、このマフラーを巻けば顔も隠せるんじゃないかしら」


それに一応、忘れているわけではないらしいのでよしとする。

むしろ問題は――


「これ、格好いい腕輪ね。お揃いでつけるのはどうかしら」

「……でもお高いんでしょう? 財布には優しくないんでしょう?」

「まぁたしかに、そこそこ値が張るわね。魔力の勢いを強める魔石も埋め込まれているみたいだから」


お金のほうだ。こちらばかりは許容できない。

元来の目的は、食料と魔導具の原材料を手に入れることなのだ。


「……そうね、これは諦めようかしら」


それまで、にこにこと明るい表情をしていたセレーナの表情に少し陰りがさす。短めの紫の髪で目元が隠れると、結構落ち込んでいるように見えた。


だが、こればっかりはどうにもならない。

そう思っていたところに、その救いの手は差し伸べられた。


「お値引きしちゃいますよ!! めっちゃ割り引いちゃいますよ!!」


と、さきほどセレーナの姿に頬を染めていた女性店員が申し出てくれたのだ。


「え、いや、でもなんで? いいんですか、そんなの」

「いいんですよ、だって最近はどうせ売れてませんし」


たぶんクロレルの悪政の影響だろう。俺が眉をしかめていると、それに、と彼女は続ける。


「なによりも私癒されちゃいましたから。お二人の関係性に!」

「……え」

「だって、仲睦まじいことがすごく伝わってきます。彼氏さんのために一生懸命な彼女さんも、彼女さんの希望を聞いてあげようとする彼氏さんも、もう最高!

お金がなくても、変わらぬ愛って感じでいいです、とても」


……どうやら、少し変わった人らしい。

早口で喋る彼女の様子に、俺はかつて屋敷に勤めていたメイドのことを思い出す。


似ている、すごく似ている。

ベクトルこそ違うが、彼女も思い立ったら一直線であった。


俺が勝手に少し懐かしく思っているうち、セレーナが割引購入の話を進めていた。


まぁ理由はどうあれ、安くなるなら金欠の俺たちにはありがたい話だ。



そうしてセレーナによる、衣服選びは再開となる。

結果として、彼女が選んだものと同じ少し制服テイストの入ったものだった


「似合ってるわよ、すごく」


セレーナがにっこりと笑顔になってこう褒めてくれる。


「俺としては、着こなせてないと思うけど?」

「いいの。私が似合うと言ったら、似合うの。格好いいわよ」


いつもクロレルと比較され、平凡だとか庶民ヅラだとか揶揄されてきた俺だ。

見た目を褒められて慣れていないので、かなり照れくさかった。


返事が思いつかず、こめかみを掻く。


「お二人とも、とってもお似合いです!! もう最高です、最高のカップルですよ!!」


……そんな様子に、一連のやり取りを見ていたらしい店員さんが、なぜか一番興奮していた。


まじで、なぜ。


「ていうか、カップルじゃないけどいいの」

「いいの。実質それ以上でしょ。毎日一緒に寝てるんだから」

「こら誤解を招く言い方はやめなさい」


とにもかくにも、無事に新しい服を購入することができたのであった。


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