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20話 悪党退治は一秒未満?



怪我を負った蒼々狼の手当を村人たちに任せ、俺とセレーナは真っ暗闇の中へと繰り出した。


ただし今回は二人だけではない。


フスカも連れてきた。……というか村を出ようとしたら、ついてきたのだ。


「もしかしたら、親父の敵討ちをするつもりかも。やっぱりかしこいわね」

「だな。親孝行なもんだよ」

「どこかの誰かは犯罪を重ねたうえに追放されてるけどね」

「改めて言わなくてもいいだろ、それ」


冗談を言い合いつつも、一応声をひそめながら俺たちは進む。

狼に出会う日としてはふさわしい、雲一つない満月の夜であった。比較的足元は見やすかった。


体長は人間3人分と、身体の大きな蒼々狼だ。


注意して見ていると、その足跡は山肌にたしかに残っている。

それを伝うようにして歩いていくと、少し開けた場所に出る。そこには、蒼々狼らしき血の跡が一帯に散らばっていた。


どうやら、ここで一戦を交えたらしい。


「相手の血も残ってるかもしれないわね」


セレーナが鑑定魔法により、現場の鑑定を行う。

そうして見つけた敵の匂いをフスカにかがせると、彼は俺たちを誘導するように森の中を進んでいった。


険しい道を上り下りするなか、時には魔物にも遭遇した。


しかし、音を立てて大本命である悪党たちに逃げられたら話にならない。


そのため、もっとも目立たない風属性魔法・『縮突』や距離を一気に詰める技・『縮地』と腰に差したナイフを使い、最低限の力で倒していく。


これくらいの魔法ならば、無詠唱で発動することができた。


そうしてしばらく、フスカの足がぴたりと止まる。なにかと思って草陰からその先を見ると、崖地になった地点の下に立ち並ぶのは家々だ。


どうやら隣村まで抜けてきたらしい。


「ちっ、また取り逃がしちまったぜ」


通りから不意に声が聞えてきたので、俺とセレーナは目を合わせ息をひそめる。


「あのサントウルフ、すばしっこいな。しかも、よりにもよってトルビス村に逃げ込みやがった」

「あそこはもう手を出せなくなっちまったからなぁ。たしか、アルバとかいう馬鹿息子が村に赴任してきたんだろ?」


「あぁそうだ。たしか暴行罪やらを犯して追放されたぼっちゃんだ。そんな奴が貴族だなんて世も末だよな、まったく」

「はは、だったら俺たちみたいな連中が役人やってるのも同じだがな。とっとと薬草の押し売りなんてせせこましいことはやめて、サントウルフで一発当ててぇな」


……俺がクロレルの悪行のせいで、散々に言われているのはともかくとして。


村の柵を壊したのも、サントウルフの密猟をしようとしていたのも、どうやら役人だったようだ。

村人たちが口を割らなかった理由も、これで納得がいく。もし口外すれば、危害を加えるよう脅されていたのかもしれない。


そこまで考えたところで、よもやのことが起きた。

俺とセレーナの間を抜けて、フスカが大跳躍とともに彼らへと跳びかかっていったのだ。


「待て、おい……!」


と、止めるがとっくに遅い。


「おいおい、幸運かもしれないぜ俺たちよ!」

「へへへ、まったくだ。獲物の方から出向いてくれるんだから。若い狼の毛皮は飛ぶように売れるぜ」


すでに着地し、真っ向から対峙してしまっている。

それは、あまりに無謀な突撃だった。彼らは、フスカより二回り以上大きい彼の父親でさえ倒すことはできなかった相手なのだ。



しかもどちらも役人であり、魔法が使える。

実際、その土魔法によりすぐに彼は足を拘束されてしまっていた。


「アルバ、どうしようあれ」

「本当はもっと静かにやるつもりだったけど……しょうがないな」


迷っている時間はなかった。


「ははは!! 俺の風魔法は貴族の中でも相当だぜ? 切り裂いて、毛皮にしてやるよ!! 風よ、速き風よ! 我が斬撃に高速の――」


フスカへと大槍が振り下ろされる。


「風よ、彗星がごとき推進力を。縮地活歩……!」


その直前、俺は詠唱とともに両足へと貯めた魔力を風属性魔法へ変換した。


これはただの『縮地』とはわけが違う。より速さを追求し、魔力を漲らせた技の一つだ。


正直、大槍をふりかざした男の動きはほとんど止まって見えた。少なくとも、高速を名乗るにはまったくふさわしくない。

俺は一足飛びに、敵とフスカの間に割って入る。


さらには、右手に握ったナイフを裏手で、その首元に突きつけた。


……一応、刃のついていない裏側で。

こんな腐った人間を殺した罪でまた悪名を着せられるのはごめんだ。


ばたりと、槍を握っていた男が倒れる


「な、な、な、お前! どこから現れた……! この一瞬でどうやって!」

「質問が多すぎるだろうよ」

「というか、何者だ!?」


もう一人は恐れおののいて、じりじり後ろへと下がっていく。


集中が切れたのだろう。彼がフスカを捕えていた土属性の魔法はすっかり解けていた。

俺はその脳天に、ナイフを投げつける(これも一応、裏側で)。


それだけで、ばたりと倒れた。


せっかく寝る時間を惜しんできてやったのに、あっけない。


もう聞いてはいないだろうが、一応質問に答えておく。


「そうだなぁ。あえていうなら、こいつの飼い主だよ」





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