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勇者魔王短編作品

魔王軍四天王、「イケメン」「ガチムチ脳筋」「紅一点美女」までは決まったけど、あと一人をどんな奴にするかで激論になった

 魔王城最深部にある魔王の間。

 玉座に腰かける魔王の前に、三人の魔族がひれ伏していた。


 三人はいずれも魔族としてはエリート中のエリート「上級魔族」である。


 まず一人目は、長い銀髪と鋭利な角を持ち、精悍な顔つきをしたシーバ。

 首から下の肉体もまるで彫刻のように整っていて、芸術品さながらである。


「魔王様、このたびはこのシーバを四天王にして下さりありがとうございます」


 美しい魔族はやはり声も美しい。もちろん、容姿だけでなく強さも全魔族トップクラスを誇る。


 続いて二人目はグランドス。シーバよりも二回りは大きい巨体を誇り、手足は太く、見るからに凶暴な顔つきをしている。


「グハハハ……俺が四天王になったからには人間どもを瞬く間に滅ぼしてみせますぜ!」


 鋭い牙の生えた口から発せられる声はやはり野太い。

 そして、凶悪な外見に全く恥じないパワーを秘めているのは言うまでもない。


 三人目はピエネ。唯一の女性魔族である。

 この中では最も人間に近い容姿をしており、スタイルは抜群で、露出度の高い服装をしている。

 もし彼女が人間界に降り立ったならば、たちまち男たちを虜にすることは間違いないだろう。


「四天王になったらアタシの美しさがますます磨かれてしまうわ」


 滑らかな肢体でなまめかしいポーズを取る。ピエネは自分の強さと美貌に絶対の自信があり、決して過信ではない。


 魔王がうなずく。


「うむ、頼もしいぞ。お前たち三人を魔王軍四天王に任命したかいがあった」


 ここでシーバが尋ねる。


「しかし魔王様、我らは三人。四天王にはあと一人足りませんが……」


 当然の疑問である。


「グハハ、俺が二人分ってことだろォ!? 俺はつええからよ!」


「相変わらずあなたは脳みそまで筋肉ね」


「な、なんだとォ!?」


 グランドスとピエネが小競り合いを始めようとしたところで、魔王がそれを制すように答える。


「残る一人はお前たちで決めてもらいたい」


「どういうこと……?」怪訝な表情をするピエネ。


「今のお前たちはちょうど『イケメン』『ガチムチ脳筋』『紅一点美女』と綺麗に個性が分かれておる」


「言い方はともかく、おっしゃる通りですね」うなずくシーバ。


「ガチムチ脳筋……」落ち込むグランドス。根は繊細なのかもしれない。


「そこでだ、あと一人……四天王として相応しい者をお前たちで見つけ出し、推薦して欲しいのだ。期間は一週間、四人目が決まった暁には、推薦者には『四天王リーダー』の地位を授けよう」


 露骨に餌をぶら下げられ、三人のモチベーションも高まる。


「分かりました、四天王最後の一人に相応しい強者を見つけて参りましょう」


「グハハ、俺に任せてくれや、魔王様!」


「四天王リーダーになれば、アタシの美しさはさらに高まるわ……」


 かくして三人の魔族による「四天王四人目探し」が始まった。



***



 一週間後――

 魔王の前に再び四天王の三人が集結していた。


 魔王がおごそかに告げる。


「三人とも、その様子だと推薦する者を見つけてこれたようだな」


 自信満々といった表情のシーバ、グランドス、ピエネ。


「よろしい。ではシーバから推薦する者を紹介してくれ」


「分かりました」


 シーバが一人の魔族を連れてくる。


「私が推薦するのは……このゴゼン殿です」


 ゴゼンと呼ばれた魔族は老人だった。長い白髪頭でしわの多い顔つきをしている。


「ケッ、ジジイじゃねえかよ!」とグランドス。


「こんな人が戦えるの?」ピエネも笑っている。


 シーバはそんな二人の反応をあざ笑うかのように続ける。


「分かってないな……我々三人は皆若い。だからこそ、老人を入れた方が絵としても映えるじゃないか」


「うむ……一理ある」魔王もうなずいている。


「さらに『老獪』という言葉がある。老人ならではの狡猾さや悪辣さは、きっと魔王軍の大きな力となるはずです。ねえ、ゴゼン殿?」


「ワシは基本的にシンプルに拳でドーンとやるのが好きですじゃ」


 ゴゼンの言葉を無視し、シーバは続ける。


「さらに、ゴゼン殿は外見通り1000年以上生きている老魔族……その経験豊富さで我々にアドバイスをしてくれることもあるでしょう。ねえ、ゴゼン殿?」


「あんまり昔のことは覚えてないのう~、このところ物忘れが激しくてな」


「……」


 余計なことを言うなよという表情のシーバ。

 グランドスとピエネは笑っている。


「と、とにかく! ゴゼン殿のような年配を入れれば四天王としても絵になりますし、我々若い魔族の助けになることは間違いありません! 以上!」


 無理矢理まとめてしまった。

 色々と問題はあったものの、魔王の顔は歓喜に満ちていた。


「『イケメン』『ガチムチ脳筋』『紅一点美女』に加え、『ジジイ』……ふむ、悪くない、悪くないぞ! シーバよ、よくやった!」


「ありがとうございます!」


 シーバがだいぶ高得点を稼いだので、グランドスとピエネは不快と不安が混じった顔色を浮かべた。


「では次……グランドス。お前が連れてきた者を紹介しろ」


「分かりましたぁ!」


 グランドスが連れてきたのは、ゴゼンとは対照的にずいぶん若い――少年の魔族だった。

 金髪で小さな角が生えており、人間でいえばまだ10歳ぐらいの子供に見える容姿だ。


「子供じゃないか……!」驚くシーバ。


「あら可愛い」ピエネが微笑む。


「ガキだからって甘く見んなよ。こいつは俺と同郷なんだが天才児だなんて呼ばれていて、この年ですでに上級魔族レベルの力を身につけてるんだからな。なぁ、ミロ?」


「は、はい!」


 ミロは緊張している。


「しかしいくら強くても所詮は子供だ。四天王の座は無理がありすぎる」


 シーバの指摘をグランドスは笑い飛ばす。


「グハハ、分かってねえなぁ! ガキだからこその残忍さってのがあるだろ! こいつなら人間どもをまるでオモチャで遊ぶ子供のように殺しまくってくれるぜ!」


「グランドスさん。ボク、戦うのはともかく、殺したりするのはあまり……」


 打ち合わせ通りやれ、という目で睨みつけるグランドス。


「アハハハッ! 人間なんてボクにとってはオモチャだよ! みんなと遊んで壊しちゃっていいんでしょ? ボク、オモチャを壊すの大好きなんだ! アハハハハッ!」


「どうだ、この残忍さ! 俺ですら残忍さじゃ、こいつには敵わねえぜ!」


「言わせてるじゃないのよ……」ピエネはミロに同情している。


「四天王ってのは魔族の未来のための幹部だ! だったらこいつぐらい若いのにしなきゃあな! グハハハハハ……!」


 脳筋魔族らしく、都合が悪くなると大声でごまかそうとするグランドスであった。


 魔王の反応は――


「先ほどの『ジジイ』もよかったが、『ショタ』も悪くない……うむ、悪くないぞぉ!!!」


 どうやらミロのことを気に入ったらしい。

 シーバとピエネは心の中で舌打ちする。


 魔王がピエネに向き直る。


「ではピエネよ、最後はお前だ」


「はい、アタシが推薦するのは……彼よ!」


 現れたのは――


「私ハ『ROB-15』トイイマス」


 明らかに機械で作られた人形だった。


「なんだこりゃあ……!?」目を丸くするグランドス。


「彼はね……魔導科学の結晶なの。つまり……ロボットなのよ!」


 まさかのロボット登場に、皆が驚く。

 シーバは心当たりがあるようで、


「そういう研究が秘密裏に行われていたのは聞いていたが……本当にロボットなのか?」


「ロボデス」


「弱点は?」


「水ト雷デス」


 この回答に、その場にいた全員が「ロボだ」と納得した。

 グランドスが問いかける。


「だがよぉ、ロボットなのはいいとして、つええのか?」


「もちろんよ。ドラゴンをもねじ伏せるパワーアーム、鉄をも焼き切るレーザー光線、山を吹き飛ばすミサイルを搭載してるわ」


「なっ……!」


 さすがのグランドスもたじろぐ。


「シカモ、耐久値ガ90%以下ニナルト無差別攻撃ノ『発狂モード』ニ移行シ、半分以下ニナルト広範囲ヲ巻キ込ンデ『自爆』シマス」


「もうちょっと粘り強く戦った方がいいんじゃ……」とシーバ。


「う、うるさいわね! これから改良される予定よ!」図星だったピエネ。


 ROB-15をじっくりと眺めた後、魔王が独りごちる。


「四天王に一人ぐらい『ロボット』がいるのもいいかもしれんな……」


 これまた魔王は気に入ったようだ。ピエネ以外の二人は焦りを抱く。


「『ジジイ』もいいし、『ショタ』も悪くないし、『ロボット』も捨てがたい……。ううむ……どれもいい……」


 だいぶ迷っている。


 ここが勝負どころだと感じた三人、押しの一手に出る。


「やはりゴゼン殿にすべきです。経験豊富な老人を入れてこそ、幹部集団というのは引き締まるというもの!」


「いいや、ミロにすべきだ! 今のうちに幹部にして経験を積ませりゃ天下無敵だぜ! 可愛らしさもあるしよぉ!」


「可愛らしさならアタシがいるでしょ! ROB-15にすべきよ! これから改良を加えて、どんどん強くなる予定だもの!」


 すると――


「てめえは可愛いというよりエロ枠だろうが! しかも下品よりのエロさだ! いつもいつもみっともねえ格好しやがって!」


「なんですってぇ!?」


「その通りだ。ピエネ、お前には恥じらいというものがないのか」


「言ってくれるじゃないシーバ。アンタだって毎日鏡見て自分の姿にうっとりしてるの知ってるんだからね!」


「な、なぜそれを……!」


「ホントかよ! 男のナルシストとか気持ちわりい! 終わってんな!」


「無礼な! お前こそ子供など連れてきて、その図体で子供好きだったりするのか!」


「なっ……! て、てめえこそジジイなんか連れてきて、おじいちゃんっ子かよぉ!」


「おじいちゃん好きで何が悪い!」


「やめなさいよ二人とも、みっともない……」


「うるせえ! てめえこそロボットなんか連れてきやがって!」


「魔族の男には遊び飽きて、ついに機械に欲情するようになったか。この色欲の権化め」


「言ったわねえ!」


 口論がどんどんヒートアップしていく。


「もう許さん! 今日こそ決着をつけてやる!」


「グハハハ、望むところだ! 二人ともひねり潰してやるぜ!」


「アタシが美貌だけじゃないところ、見せてあげるわ!」


 ついに四天王同士によるガチバトルが始まってしまった。

 三人とも上級魔族、あちこちを破壊しながら派手な戦いを繰り広げる。


 これに魔王は――


「やめんかぁっ!!!!!」



***



「よく集まってくれた、四天王たちよ」


 玉座に座る魔王の前に、三人の魔族が集結していた。

 ただし、シーバ、グランドス、ピエネの三人ではなく――ゴゼン、ミロ、ROB-15の三人だった。


 魔王の前でみっともない喧嘩を繰り広げた三人は「幹部として不適格」とされ、仲良く左遷されてしまった。

 四天王は一新され、今や彼らが新しい四天王である。


「いやはや、ワシのような老体が四天王とは……光栄ですじゃ」嬉しそうなゴゼン。


「ボク、まだまだ未熟だけど頑張ります!」ミロもはりきっている。


「敵ハ全テ排除デリートシマス」ROB-15も機械ながら貫禄が身についている。


「さて、今日は四天王の四人目を決めようと思うのだが……」


「今度はワシらが誰かを推薦するんじゃろうか?」


「いや、それをやるとまた口論になりかねんからな。四人目は私が決めることにした」


「一体どんな人なんだろう?」


「楽シミデス」


 ミロとROB-15は期待に胸を膨らませている。


「『ジジイ』『ショタ』『ロボット』に次ぐ、四人目に相応しいのは……この者だ!」


 玉座から立ち上がり、「出てこい」という仕草をする魔王。


「四天王四人目は……『黒髪ロングケモ耳メガネセーラー服巨乳ヤンデレツンデレジト目委員長3000歳ロリババア』のランランちゃんだぁっ!」


 魔王が言った通りの特徴を備えたランランという魔族が現れる。


「ランランじゃ。よろしくな」


「うっひょおおおおおおお! ランランちゃん可愛いぃぃぃぃぃ! 萌ええええええ! いやー最初から君を四人目にしてればこんなに揉めることもなかったのにねえ! もちろん君を四天王リーダーにしてあげるからねええええええ!」


 よほどランランが好みなのか、鼻の下を伸ばしはしゃぐ魔王。


 この光景を見ていたゴゼンたち三人は顔を向き合わせた。


「のう……四天王だけじゃなく魔王も一新した方がよいのではないか?」


「ボクもそう思います」


「私モ賛成デス」






おわり

お読み下さりありがとうございました。

何かありましたら感想等頂けると嬉しいです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 最初の3名の不毛な争いが面白かったです。 ランランちゃん最強ですね。 ゲラゲラ笑ってしまいました。 面白かったです(^^)v ありがとうございました。
[一言] 属性山盛りw 結局、魔王様の好みで決まるのね。 三人が魔王様に不適格って思うのも無理ないわー。 てっきり魔王様も加えて7英雄とかになるかと思った笑
[良い点] 焼き鳥屋さんの話と、駅の話、そしてこの作品を読ませて頂きました。 ジャンルに囚われない多種多様なお話の数々は、やはり何作読んでも飽きることなくそのたびに笑いや感動を頂けます。 ストーリー…
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