~異世界そんなに甘くない~
異世界転生。それはオタクなら誰もが一度は願ったであろう夢である。
それを今、成し遂げた自分は、何もかもが変わってゆく気がした。
* * *
僕、神崎空は、高校生である。クラスのポジションとしては、陰でも陽でもないような微妙な立ち位置にいるオタクだった。
特に目的もないまま友人と戯れていた。
「え?」
しかし、次の瞬間から何かとまばゆい光が僕たちの教室を包み込んだ。
気が付くと、そこは青い空が広がる緑色の草原が広がっている。
まさに異世界転移のテンプレのような展開に、喜びより先に驚きが自分の中を駆け巡った。
(僕は、死んだのか…?いや、でもさっきまでの出来事で死ぬような節は思い浮かばないが…?)
考えても仕方がないと思い、思いっきり自分の頬をつねる。
「…痛ッ、」
どうやら夢ではないみたいだ。
そのことを体で感じた瞬間、言葉にならない嬉しさがこみあげてきた。
「やっぱり、異世界に来たってことはステータスとかあるのかな…?」
ふと、
「”ステータス”」
と、声に出す。すると瞬時に、ゲームのメニューなんかを開くと出てくる、黒色の板が出てきた。
どうやらこの世界では、ステータスバーは実物として出てくるらしい。
自分の役職やら、スキルやらを確認しているときに、見慣れないスキルを見つけた。
”faith・credit・dependance”
「なかなか見ないスキルだな…ユニークスキルか?」
横に<ユニークスキル>と書かれているので、どうやらそうらしい。
信仰に信用に依存、人の心を支配する、強いスキルだな。
そんな強いスキルを自分に付与してくれた神様(多分神が異世界転生させた)に感謝する。
異世界転生してからのテンプレを大体クリアした後、あたりに人工物がないか探してみると、丘の向こうから煙が見える。
できれば、人族と出会えるといいななどと、心に思う。
異世界初の邂逅を果たす人は、誰なのだろうかと心を膨らませ、煙の上る方向へ向かってゆく。
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