番外編 コンが悠に興味を持ったきっかけ
あらすじ
シンとコンがほぼ常にと言っても過言ではないくらいに喧嘩するので、コタツが呆れて二人を『仲良くならないと出られない部屋』に閉じ込めた。
この部屋から出るための条件は『仲良くなること』。果たしてギスギスしてばかりの二人がこの部屋から出れる時は来るのだろうか。
シン「部屋から出るための条件ふわっとしすぎてない?誰がどうやって判断するのさ、これ。」
コン「天井に監視カメラやスピーカーが設置されているので、きっとコタツが別の場所で見てるんでしょう。コタツが満足すれば出してもらえるとかですかね。」
シン「まずツッコミとして『なんでこれの実行犯がコタツくんだって分かるんだよ!』ってのがあるんだけど??僕としては寝て起きたらここにいるって感じで状況把握があまり出来ていないのに。」
コン「騙し討ちのような形でコタツが私をここに連れてきたので。『美味しいいなり寿司の専門店がある』と聞いたから来たのに騙すだなんて許せないですね。」
シン「僕はそんなお店聞いたことないよ。単純な嘘に騙されてるじゃん。ダッサ。」
コン「ブチ切れますよ。なんなんですか。どうせあなただって『コタツから美味しいお酒を貰ったのを飲んだら急激に眠気が…。』とかそんなオチでしょう?」
シン「違うよ!?僕がそんなあっさり騙されるわけないじゃんか!!」
コン「声を荒げるあたり大体当たってそうですね。まぁ、興味ないですが。」
シン「興味ないなら聞かなくていいんじゃないですかー。僕だってそんなにコンと話すことないし、さっさとここから出てしなきゃいけないことがあるんですけど?」
そうやって二人かギスギスしてたら、天井にあるスピーカーからコタツの声が流れた。
コタツ【あーもう!そんな感じでずっと喧嘩ばかりするから、無理やりにでもってことでこういう状況にする羽目になったんですよ!僕だって忙しいんですからね!今から3時間以内に仲良くなれなければ明日まで放置しますから。僕は本気でやりますからね!!】
ガチャン。と電話を叩きつけるような音がして再び部屋は二人だけの空間になった。
シン「…とりあえずコタツくんのことを褒めてみる?」
コン「条件と関係ないのであまり効果はないでしょうね。」
シン「じゃあどうする?このまま二人きりとかいう地獄からは早急に終わらせたいかなって思ってるけど。」
コン「適当に話でもしますか。長引かせても良いことはなさそうですし。」
シン「話題どうするの?特に共通の趣味とかもないし。」
コン「…。お互いになにか相手に質問する。でいいですか?黙っていても状況が変わるわけではないですし。」
シン「そうしようか。順番は?」
コン「あなたから聞いてくれて良いですよ。」
シン「じゃあ気になってることがあるんだけどさ、なんでそんなにあの子にベタ惚れになってるの?元々、誰にも興味ないって感じだったよね?僕らが時々集まりみたいなのをやっても、コンはほぼ不参加だったし。」
コン「ベタ惚れと言われるとまた別だろうと返したくなりますが、状況的には近い気もしますね。理由を話すとなると三話分くらい消費しそうなので控えておいた方が良いと思います。あと、集まりに参加しなかったのは酒に酔った方々の相手をさせられるのがとてつもなく面倒だからですよ。特にあなたなんですがね。」
シン「言葉の節々に嫌味が混ざってる気がするけど、ここで反論するとまた喧嘩になるから大人な僕が控えておくとして。僕はそんなにお酒弱くないよ。」
コン「そうですね。弱くはないけど、酔うまで飲むから同じようなものなんじゃないですか?」
シン「お酒は酔わなきゃ楽しくないじゃん。コンが嗜む程度しか飲まないから理解出来ないだけだよ。」
コン「あなたといる時にそこまで飲もうと思わないだけです。コタツと晩酌する時は酔うまで飲む時もあります。」
シン「初耳だなぁ。嘘ついてたりしない?」
コタツ【嘘じゃないですよ。ごく稀ですが、とてもストレスがかかった時とかに飲んでます。】
シン「急に話に入ってくるね!?」
コタツ【シンさんがコン様が珍しくまともに話をしているのに、疑うような発言をするからですよ。ここでコン様が嘘じゃないと言ったとしても信じないでしょう?】
シン「たしかに。これは僕が悪かったよ。ごめん。」
コン「気にしてないんで大丈夫です。いつかそのままお返しするだけですから。」
シン「ちゃんと根に持ってるじゃん。悪かったってば。」
コン「というか、どこからか話が逸れたでしょう?私に悠さんのことを聞いてきてたじゃないですか。」
シン「三話分とかメタ発言をするし、しかも長いから話題変えようとしただけだよ。」
コン「聞くなら最後まで聞いてくださいよ。長くなりすぎないようにまとめてあげますから。」
シン「なんとなく上からな感じがして腹立たしいけど気にはなるし、聞こうかな。」
コン「話は1年前に遡りますが…。」
シン「やっぱ聞くのやめようかな『話は○○年に遡る』的な始め方をして短いのそんなにないと思ってるから。」
コン「私が気晴らしに千本鳥居まで出かけた時に寒さにやられて動く気力が削がれて立ち止まってたんですよ。そこに悠さんが声をかけてきてくれて『貼れないカイロ』っていう自虐っぽいカイロで良ければあげれるよ。予備で持ってきてあるし。』って言ってきてくださったんです。」
シン「今、悠ちゃんボケなかった?ツッコミちゃんとしたの?」
コン「話を遮るのやめてください。私の話はまだ終わってないんで。」
シン「あーはい、じゃあ終わってからにするよ。」
コン「で、『ありがとうございます。とても助かります。』って言って受け取ろうとしたら『あ、ごめん。おばあちゃんが持たせてくれたやつだから貼れちゃうカイロだわ。あなたの今の格好じゃ貼れなそうだし、私のマフラーと手袋貸すから、それで下まで一緒に降りる?返すのはそれからで良いし。』って言って身につけていたマフラーを外して、カバンの中から手袋を取り出してそれらを渡してくれたんです。」
シン「またボケたじゃん。あと、手袋はカバンから取り出したの?使ってないの?予備??」
コン「また遮りましたね。次はありませんから。あと、手袋は予備じゃなかったです。あとで理由を聞いたら『持ってきたはいいものの、スマホを操作しづらいし、感覚が鈍るからね。』って仰ってました。」
シン「スマホを操作しづらいってのはまだ分からなくもないけど、感覚が鈍るってなに?」
コン「勝手にツッコミをしないでください。話が進まなくなります。」
シン「えぇ…。ごめんね?ってかこれは僕が謝るべきことなのか…??」
コン「話を続けますが、そうして貸してくださった2つを受け取ろうとした時、悠さんの手が私の手に触れたんですよ。」
シン「え、なに?それにキュンとしちゃった的な?」
コン「違います。勝手な想像をしないでください。あと、次はないって言いましたよね?」
シン「ごめんってば!ツッコミするべきとこだらけな悠ちゃんが悪いとも思うけどね!」
コン「じゃあ話すのやめましょうか?どうせ面白くないあなたの話に移ってくれてもいいですよ。」
シン「話の続きが気になるってのもあるけど、今のフリをされた後に自分の話始めにくいかな。コンが全部の尺持ってってくれて良いよ。3時間経過するまであと半分くらいだろうし。」
コタツ【怒らないんですか。絶対今までのシンさんなら怒ってたとこでしょう。今の。】
シン「怒りたい気持ちもあるけど、それより今は話の続きが気になるからね。ってかまた急に話に入ってくるね。」
コタツ【コン様が明らかに悪口な発言をするので、さすがにフォローを入れるべきかと思いまして。恐らく話を遮られてイライラしてるからだとは思いますが。】
シン「それも分かってるから大丈夫だよ。」
コン「じゃあ、私の話を遮らないでくれますか。」
シン「分かっていてもツッコミをせずにはいられない状況なんだよ。逆になんでスルーしがちなのか聞きたいくらいだね。」
コン「寒さであまり頭が働いてなかったからです。話の続きしていいですか。」
シン「どうぞー。頑張ってツッコミを我慢しておくよ。」
コタツ【私も静かに聞いておきます。】
コン「では続きから。悠さんの手が私の手に触れて私はすごく驚いたんですよ。悠さんの手がすごく冷たくて。感覚的には氷より冷たかったです。」
シン「それは…!ごめん、続けて。」
コン「…?はい。その冷たい手に触れて『こんな状況である彼女が私のためにカイロやマフラー、手袋を貸してくれようとしたのか。』と思いまして。そして、登ってきていた道を戻って、しばらく適当に話をしながら進んで。それから、近くにあった自販機で温かいコーンスープを買って私にくれたんです。『もう大丈夫?のんびり歩いたから体もマシになってきてはいると思うけど。』って。ちなみに悠さんはスポドリを買って飲んでいました。」
シン「ストップ。さすがにそこはツッコミさせて。…そこは温かい飲み物にしとこうよ!」
コン「私もそう思いました。今回はノーカウントにしてあげます。さっきなにか言いかけてましたよね?ついでに言ってくれていいですよ。」
シン「あー、それね。氷より冷たかったらその人多分生きてないよって言おうと思ったんだけど、そんな状況で冷たいスポドリを買うなら、そういう人がいてもおかしくないのかな…。って思ってきた。」
コン「じゃあスルーでいきましょう。それで話の続きなんですけど。」
シン「まだ続くんだね。ちょっとずつ疲れてきたよ。」
コン「話してるのは私ですけどね。」
シン「ツッコミするとこが多すぎるからだよ。これは悠ちゃんが悪い気がする。」
コン「悠さんが悪いことなどこの世にありません。勝手な発言はやめてもらえますか?」
シン「さすがに暴論すぎるって。時間切れになるから話の続きをしてほしいんだけど。」
コン「仕方ないですね…。私がコーンスープを飲み終えて温まった頃に、マフラーと手袋をお返ししようとしたら『私も歩いて温かくなってきたから、カバンの中になおしておいてくれる?』って言われて、カバンに入れたら『あ!』っていきなり悠さんが叫んで。『どうしたんですか!?』って聞くと、カバンのポケットからカイロを取り出して。『貼れないカイロ、ちゃんとポケットに入れてた!もしまた寒くなったら困るだろうし持ってけば?』って言ってくれたんです。」
シン「惚れるやつやん。」
コン「つまりそういうことです。私はそういう状況でも悠さんは初対面の私を優先してくれたことに対して感動して惚れたんです。…まぁ、本当は初対面ではないんですけど。僕の話はこれで終わりです。満足ですか?」
シン「最後に不穏な発言あったって。」
コン「気のせいですかね?」
シン「まぁ、気にしたって仕方ないしいいか。気になってたことが聞けたから僕は満足だよ。コンにも寒さに凍えるかわいいとこもあるんだなって知れたし。」
コン「どの目線で話してるんですか。まぁ、茶化されなかったのでいいですが。」
コタツ【今回はこれで許してあげましょうかね。いつまでも2人をこの空間に放置することで状況が悪化しても困りますし。】
そうして、2人は仲良くなれる部屋からの脱出に成功した。『今回は』という気になる発言をスルーして。
続き考えているうちに書きたくなった話があって番外編になりました。
この話だけでも楽しめる内容になってますが、いつか見返せば更に深読み出来る話になります。(予定)
次回は本編の続きを書く予定なので、お待ちいただけますと幸いです。
投稿予定日は9/1ですね。
また次回もよろしくお願いします。