第一話 これが私たちの日常
「ユメ」なんて一括りに言ってもその「ユメ」にも様々な意味があるというのは言ってみれば当たり前な気がしますが、一番多用されているのは、眠っている時にみる「ユメ」でしょうか。他にも将来の「ユメ」という使い方もあったりしますが、毎日のように眠ればみるような「ユメ」よりも多用することはあまりないように思います。いや、叶えるために毎日のように将来の「ユメ」について考えている人もいるかもしれないですね。まあ、それについて考えてもキリがないんですよね。でも、そうやってふと思いついたことを考えている時間が一番…楽しいと…私は…思い…ます…
悠の母親「悠!おーきーろー。いい加減に起きないとご飯食べる時間がなくなるよー?」
…考え事をしていた。何について考えていたのかも、ぼんやりとしか思い出せないような小さな考え事を。それで、いつの間にか眠ってたんだろう。少しずつ目が覚めてきた。確か、今日は月曜日…いや、のんびりしてる余裕なんてなくない?
悠「え?待って、今何時?」
悠の母親「7時半。」
悠「待ち合わせの時間が8時で、45分には学校に向かわないといけなくて、あと15分…ってもう時間ないし、急いで着替えて行かないと遅れるやつやん。」
悠の母親「…そっかー、遅れないようにしてね。あと、明日からはちゃんと目覚ましかけて起きれるようにしなよ?」
悠「いや、ちゃんとアラームを設定してから眠ったはず…あ、通知の音量が0になってる。」
悠の母親「それで起きれたらすごいと思うわ。」
悠「ー無理でしたね。ってやっば!もう家を出ないと間に合わない!」
悠の母親「そか、いってらっしゃーい。」
悠「いってきます!」
15分後
悠「おはよう、彩葉。」
彩葉「おはよう、悠ちゃん。結構息切れしてるけど、なんかあったん?」
悠「えーっと…起きたのが7時半で…めっちゃ急いで家出たんやけど…それでもこのままじゃ間に合わんなって思って…ちょっと走った。」
彩葉「めっちゃ途切れ途切れやん。大丈夫?」
悠「ちょっとばたんきゅーしそう。」
彩葉「ちょっとなんだ…。で、ばたんきゅーって?」
悠「ばたんできゅーだから、ばたんきゅーだよ!」
彩葉「え?本当にそんな感じ?」
悠「いや…分からないっすね。適当言ってみただけですね。帰ったら調べておくわ。」
彩葉「あ、うん。分かったら教えて。」
悠「まかせて!ちゃんと調べてサイトのURLごと送るね!!」
彩葉「URLごと!?まぁ、いっか。任せた!」
悠「ついでに豆知識十個くらい調べて送るね!」
彩葉「うん!?えっと…楽しみにしてるね!!」
悠「とっておきのを探しておくわ!」
彩葉「自分でハードル上げるんだね!」
悠「その方が楽しいかなって!」
彩葉「いいと思うよ!」
悠「ありがとう!これで今日帰って暇じゃなくなったわ!!」
彩葉「あ、暇つぶしだったんだね!宿題出なかったらいいね!」
悠「そういえば、明日は国語で漢字テストあるから確実に宿題あるわ!それでも暇だよ!」
彩葉「宿題あっても暇なの!?」
悠「それとこれとは別枠だよ!そして私は暇つぶしに本気で取り組むタイプだから期待してて!!」
彩葉「なるほど!って私はそんなタイプ初めて聞いたよ…。まぁ悠ちゃんが楽しめるならそれでいいけど。あとさ」
悠「どうしたの?彩葉」
彩葉「先程の質問とは別にもう一つ質問があるんですが。」
悠「はい、なんでしょうか?」
彩葉「ふざけて敬語っぽくしただけなのに合わせてくるとは…さすがですね。」
悠「ふっふっふ…私にかかれば造作もないことですよ。って、質問は?」
彩葉「あ、そうだった。意味を知らないのに、なぜ『ばたんきゅー』って言ったの?事細かめにどうぞ。」
悠「承知致しました。昨日の夜にぷよっとしたやつとがちっとしたやつがどちらも楽しめる落ち物パズルゲームをしてたんですよ。かちぬきで負けたら終わりってやつを一回だけして眠ろうと思ってたんですが、一回だけって思ったら、なるべく長く続けてたいなーって思ったんですよ。なので、負けないようにしつつ、相手をすぐに倒さないようにしてたんです。そして、かちぬきって自分が負けるまで終わらないんですよ。まあ、夜遅めな時間にやってたので、眠くなってきて1時間くらいで負けたんですが。そして、そのゲームの負けた時のボイスが『ばたんきゅー』なんですよ。で、そのまま私は眠りについたのです。」
彩葉「なるほど。話しにくいから敬語っぽいのはもう中断しよ?」
悠「うん。私も話しにくかった。」
彩葉「普段してないことをいきなりするのは疲れるよね。」
悠「そうなんよ。しばらくこれはやめるわ。」
彩葉「それがいいと思う。話戻すけどさ、ゲームを中断するってのは思いつかなかったの?」
悠「それはCPが相手でも相手に失礼かなって思ってしない派ですね。」
彩葉「そっかー。あとさ」
悠「なんでしょうか?」
彩葉「悠ちゃん、敬語から戻しきれてないね。」
悠「そんな簡単に言葉を変えることも戻すことも難しいことを知った。」
彩葉「確かに…。質問に戻っていい?」
悠「うん。なんでも聞いてくれていいよ。」
彩葉「え?なんでも?」
悠「うん、いいよ。」
彩葉「あ、じゃあスリーサイズを。」
悠「スリーサイズって、身長、体重、座高?」
彩葉「違うよ?どう考えたらスリーサイズがそうなるの?」
悠「いや、ボケにはボケで返さないとって思って。」
彩葉「ボケ返しだったのね。あと、ボケにはちゃんとツッコミを入れて?」
悠「そうだよねー。あ、今ふと思ったんだけどさ」
彩葉「なにを?」
悠「彩葉のボケに私がただツッコミを入れるだけだとなんか足りないかなって思って私もボケてみたけどさ、ボケてから自分でツッコんでもよかったかもなって思って。」
彩葉「ちなみにそれだったらなんて言ってたの?」
悠「『スリーサイズって身長、体重、座高?いや、それは学年変わって最初の三測定やないかーい』かな。」
彩葉「悠ちゃん…ただ1人で追加でボケてツッコミを入れた人になってるよ…。」
悠「私も言ってみてからそう思った。」
彩葉「ボケただけにしててよかったね。」
悠「そうだね。危うく空気を冷やしちゃうとこだったよ。」
彩葉「まぁ私に話してるからどっちみちって感じがするけど…。ってまた話が逸れてってるよ。聞きたいことがあるから戻していい?」
悠「いいよー。」
彩葉「質問なんですが」
悠「あ、そこに戻るのね。なんでしょうか。」
彩葉「悠ちゃんも返しがそのままだね。では質問です。」
悠「クイズみたいだね。」
彩葉「そこは流しといて。」
悠「おけ。」
彩葉「夜遅めな時間って何時?」
悠「えーっと、始めたのが23時で終わったのが0時くらいかな。」
彩葉「それじゃあ朝起きられなかったのって…」
悠「そのことにおいては、朝起きれるように設定しておいたアラームに通知の音量が0になってたせいで気付けなかったってのもあると思う!」
彩葉「それはちゃんと悠ちゃんが確認しなかったからでしょ?」
悠「ごもっともですね。」
彩葉「もし、それで待ち合わせに遅れたらどうするつもりだったの?」
悠「土下座。」
彩葉「公衆の面前ならされる側のほうが恥ずかしいやつじゃん。」
悠「言われてみればそうだね。」
彩葉「ってことは私が言うまで気付いてなかったんだね。」
悠「うん。『ヤバい!このまま歩いてたら間に合わない!遅れたらどうしよう…!土下座で足りるかな!?』って考えてただけだったよ。」
彩葉「もし足りなかったらどうするつもりだったの?」
悠「コンビニでなにか1つ私が彩葉とシェア用に買うとかかな。いつもは半々でお金払ってるし。」
彩葉「シェアってそういうことでしょ。片方が全額払うとフェアじゃないじゃん。」
悠「なるほど。シェアとフェアで韻を踏んだんだね。」
彩葉「違うよ?」
悠「冗談です。そういえばさ」
彩葉「悠ちゃんが分かりやすく話を逸らした。」
悠「私達が通ってる高校の周辺にコンビニが三社も揃ってるのいいよね。」
彩葉「そしてそのまま話を進めた。」
悠「んー?なにか言ったー?」
彩葉「いや、なにも言ってないよー。(悠ちゃんが明らかに聞こえなかったフリをしてる...)確かにそうだね。しかも、通学路の途中に全部あるし便利だよね。」
悠「そうなんだよ。でも、朝に昼ご飯買って行くってなっても一番近いところにしか寄らないよねー。」
彩葉「時間が危うくなった時に一番間に合う可能性が高いからね。」
悠「そうなんだよ!そこで私は考えたんだよ…。」
彩葉「なにか思いついた?」
悠「うん!あのさ、今日コンビニ三社巡りしようよ!」
彩葉「楽しそうやしいいと思うんやけどさ、悠ちゃん。」
悠「どうしたの?彩葉。」
彩葉「今日シャトルランの日だよ?」
悠「え...?それって私がさっき言ったみたいな冗談かな?」
彩葉「今このタイミングでわざわざ冗談言わないよ。」
悠「そうだよね。今からくるっとターンして帰っていいですか。」
彩葉「駄目ですね。そしてもう学校の門の前まで来ましたね。あ、先生がこっち来てるよ。」
悠「そうだね、急いで逃げようか。」
彩葉「なんで!?」
先生「おーい、聞こえてるよー?悠ちゃんは今日、日直でしょう?日誌取りに来ないから連絡なしの休みなのかと思ってたよ。」
悠「…間に合わなかったか。あ、先生、おはようございます。そんなこと私がするわけないじゃないですかー。忘れてただけです。」
先生「おはよー、『間に合わなかったか。』ってのも聞こえてるよー。そっかー、忘れてたのならしょうがないね。ってなるわけないでしょう?」
悠「ですよね、ごめんなさい、以後気を付けます。」
先生「そうしてください。日誌は一応、悠ちゃんの机の上に置いておいたから。」
悠「ありがとうございます。先生、大好きです。」
先生「うん!?ありがとう?」
悠「先生、顔めっちゃ赤いですね」
先生「いきなりそんなこと言われるなんて思ってなかったし、教え子に慕われる先生になるのが夢で...。」
悠「叶ってよかったですね、先生。それと丁寧語がちょっと崩れてますよ。」
先生「それは悠ちゃんが不意打ちみたいにさらっと告白みたいなことを…!でも、そうね。すごく嬉しいわ。って悠ちゃん達、もうすぐチャイムがなる時間よ。早く教室へ向かわないと。」
悠「え!?あ、ほんとだ!彩葉、急ぐよ!!」
彩葉「うん!」
結果として、2人はなんとか授業開始には間に合ったけど、既にほとんどの人が席に座っていて周りからの視線がかなり痛かったのでした。
この物語は不定期投稿となります。気長にお待ちください。