エピソード4
「なあ、収納アドバイザーの資格取ってみないか?」
コールドさんのその一言から俺はまた資格の勉強を始めた。
今の仕事の土台は収納アドバイザーの勉強によって築かれたものだと話すと、勉強に必要な費用は負担するからやってみないかということだった。
まずこの世界にも収納アドバイザーという資格が存在していたことに驚いた。他の資格を見てみると俺が元いた世界にあった資格はだいたいあった。
本屋でテキストなどを揃え、仕事の休憩中や寝る前、休みの日も勉強に取り組んだ。図書館で勉強することも増えた。リーサさんとはそこで知り合った。彼女も同じく収納アドバイザーの勉強を図書館でしていたのだ。
最初に声をかけてきたのは彼女だった。
「収納アドバイザーの勉強してるんですね」
お互い軽く休憩をしている時だった。
そこから図書館で会うと軽く話すようになっていった。
それから明らかに図書館に行く回数が増えていった。
リーサさんはとにかく優しい女性で、見た目は茶髪のボブで、とても清純そうな見た目をしていた。
朝の10時。
今日も図書館に。勉強を始めて1時間が経った。
疲れた体の色んな部分を伸ばす。骨が小気味の良い音を鳴らした。
「おはようございます、マコトさん」
周りに気を使ったような小さな声が聞こえた方を向くと、そこにはリーサさんがいた。真っ白なワンピースを着ていた。
「おはようございます、リーサさん」
小声で言い、頭を下げた。
「あの、今日ちょっと渡したいものが」
席に座ったリーサさんは、そう言って手提げカバンの中から何かを取り出そうとする。
「これなんですけど」
そう言って取り出したのは白い弁当箱だった。
「え、これ、俺に?」
自分を指差して聞いた。
「うん、いつも近くの食堂でお昼ごはん食べてるんですよね?」
「うん、そうだけど」
「私いつもお弁当作って持ってきてるんですけど、いつも作り過ぎちゃうんです、それで余ってしまったので、よかったらマコトさんどうかな〜って」
リーサさんは少し恥ずかしそうだった。頬が赤らんでる。
「逆にいいんですか?」
俺まで恥ずかしくなる。
「もちろんです、あ、でも味は期待しないでください!あ、すいません、声大きいですよね」
さらに頬が赤らむ。その姿が物凄く可愛かった。
「俺たち、ちょっと喋りすぎですね」
ここは図書館、基本的に私語は厳禁だ。お互いに少し冷静さを欠いていたかもしれない。
「あの、じゃあ有り難くちょうだいします」
「はい、どうぞ」
リーサさんの手から弁当を受け取った。
12時を少し過ぎた頃、2人で図書館の中庭にあるベンチに向かった。
図書館内で飲食可能なエリアはここだけだからだ。
「じゃあ、いただきます」
手を合わせる。
「はい、どうぞ」
少し緊張しているように見える。
なんだか俺まで緊張してきた。
弁当をゆっくり開ける。
「美味しそう!」
中にはサンドウィッチがギッシリと入っていた。
具材はハムと卵とレタスにマヨネーズだろうか。
一口食べてみる、とても優しい味だった。まるでリーサさんのように。
パンはふわふわ、キャベツはシャキシャキ、食感も楽しかった。
「リーサさん、とても美味しいです!」
「ホントですか?よかった〜、ホントによかったです」
さっきまで不安そうだった顔が、みるみる安心した顔に変わっていった。
1つ2つと平らげていく、そこである事に気づいた。
(サンドウィッチって、作りすぎるかな・・・)
そんな疑問をサンドウィッチと一緒に飲み込んだ。