エピソード2
透明人間。
ホントに自分は周りから見えてないんじゃないかとすら思ったことがある。学校にいても誰からも話しかけられず、自分から話しかける勇気のない俺は、芸術的なまでに孤立していた。
なんのために学校に通っているのか、もちろん勉学のためだが、その代償がこの孤独感では割に合わないなと感じた。
自分に価値があるのだろうか、価値がないから関わろうとしないのだろう。皆きっと誰かや何かの役に立っている、どんな小さなことでも、きっと存在する価値を持ってる。
自分だけが・・・でも今、少し変わった、変われたのかもしれない。
「助かった〜、ありがとうな!マコト!」
これで全員分のバッグの整理を終えた。
まさか収納アドバイザーの勉強がこんなところで活きるとは。さっきまで自分を必要としてくれてる人が列をなしていた。こんなにも嬉しいことがあるのだろうか。
「お疲れ様!はい、水」
1人ボーッと考えているとコールドさんがペットボトルの水を持ってきてくれた。
「ありがとうございます」
受け取って初めて自分の喉がカラカラだったことに気づいた。
一気に半分ぐらい飲んだ。
「ほんとにありがとうな、あいつらのこと助けてくれて」
「いえいえそんな、お役に立ててよかったです」
「ちょっと提案があるんだが、マコトがよければなんだけど、ここで働かないか?」
「え?」
思わずペットボトルを落としそうになった。
「このギルドで、あいつらの荷物の整理をやってあげてほしいんだ」
「ここで、俺が」
「さっきみたいに荷物の整理で四苦八苦してる冒険者は意外と多いんだ、あいつらのためにもここで働いてくれないか?」
「俺が、いいんですか?」
「いいもなにも、あいつらにはきっと君が必要だと思う!」
「それなら・・・お願いします」
「よし!じゃあ決まりだ!改めてよろしくな!」
本日2回目の握手を交わした。
必要、今の自分にはこれほど気持ちの良い言葉はない。ここで働きたいと心から思えた。