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科学部招集


「相原さん、近藤先生が呼んでるよ」


 教室で科学誌を読んでいた乃那未は、呼ばれて顔を上げた。教室の前方のドアの前に、蕾が相変わらずの仏頂面で突っ立っている。


 先生からの呼び出しが初めてだったので、何だろうと不安そうに席を立って蕾の元に向かった。



「朝からどうしたんですか」



 まだホームルーム前で、生徒の数もまばらである。


「科学部のことだが……。夏休み中に何か活動をして、活動報告をしなければいけないそうだ。そこで、他の部員と話し合って何をするか決めてほしい」


 乃那未はそこで、自分が部長であるということを思い出した。



「分かりました。いつまでに決めれば良いですか」

「日程調整や準備がいる場合もあるから、早ければ早いだけ良い」

「じゃあ今日話し合って決めます!」


 初めての部長らしい動きだった為、乃那未はやる気に満ち溢れていた。


「今のうちにあとの2人に今日集まるように行ってきますっ」


 乃那未はそう言って嵐のように走り去って行った。残された蕾はぽかんとしてから、自分の後頭部の髪を撫でつけた。そして、授業の準備の為に職員室に戻っていった。



 まだ朝の早い時間。乃那未は、あの子なら登校しているだろうとふんで、1年生の教室を訪れた。

 廊下に面している窓が開いていたので、そこから教室を覗く。


若葉(わかは)ちゃん!」


 そう言って手招きし、モデル体系で、栗色の髪を下の方で2つにくくっている女子生徒を呼び出した。

 若葉は乃那未を見ると、驚いたように席を立ち、乃那未に駆け寄る。


「どうしたんですか」


 長いまつげに縁取られた、大きな目を瞬きさせる。


「久しぶりだねぇ。元気にしてた?」

「元気にしてましたっ」

「部活のこと忘れてない?」

「ごめんなさい。茶道部とテスト勉強で忙しくて行けてませんでした」

「そうなの? ……可愛いから許す」


 しゅんとして謝る若葉をあっさり許す乃那未。


「今日の放課後、科学部の夏休みの活動について話し合いをするから、部室に来て欲しいの」

「夏休みの活動……」

「そう。廃部になったら私が困るから絶対に話し合いに来てね。新しい顧問とも会ったことないでしょ」

「あ、あの家庭科のイケメン先生ですね」

「イケメン? 近藤先生が?」

「ハーフっぽくてかっこいいって皆言ってますよ。生徒と話しているとこはあまり見かけないですけど」



 蕾をイケメンと認識していなかった乃那未は、しきりに首をかしげていた。



「まあ、とにかく来てちょうだい」

「分かりました」



 もう1人の部員は、同学年の大垣(あきら)という男子生徒だったが、こちらはきっとぎりぎりに来る性格だろうと思い、授業の間の休憩時間に訪ねることにした。



「大垣くんいますかぁ」



 今度は教室の窓が閉まっていたので、教室のドアの前に立ち教室の中にいる生徒に聞いた。


「大垣、呼ばれてるぞ」


 友人に言われ、暁が乃那未を見る。近づいてくるなり一言。


「なに?」

「科学部のことなんだけど、夏休みの活動について話し合いをするので今日の放課後に部室に来て欲しいの」

「え、夏休み活動すんの? 何するんだよ」

「それを話し合うんでしょう」


 暁はちょっと抜けている性格のようだ。遠い目をしてああ……と呟く。


「すぐ終わるから、ぜったいに来てね。顧問も来るから来ないと後で呼び出し食らうかもよ」

「そんな厳しいのか。最近入ってきた家庭科の先生だろ。だるいなぁ」

「若葉ちゃんも来るんだし絶対来い」

「分かった」


 乃那未の部長としての権力は絶大なようだ。暁は力強く返事をして「授業始まる」と言って乃那未を教室へ帰らせた。


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