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綿菓子製造機をつくる


 部室のドアを開けてみると、テーブルに空き缶をセットした装置が置かれていた。


「もう火を付けるだけなんですよ。先生は実験を見ながらラムネでも飲んでてください」


 乃那未に、氷水が入ったビーカーを渡される。


「この氷……」

「家庭科室から貰いました。ちゃんと家庭科の先生に言いましたよ。何先生ですっけあの女の……」


 蕾も家庭科講師である。言ってくれれば職員室の吉岡先生に会わなくて済んだのにと思う。


「あと重曹を入れたら完成です。入れ過ぎたら苦いのでちょっとですよ」

「ちょっとってどれくらい?」

「2グラムです」


 はかりを探すがテーブルの上にはなかった。目分量でいけということか。


「大丈夫です。入れ過ぎたら薄めれます。実験ですよ実験!」


 にやにやして乃那未が言った。絶対にからかわれている。


「マッチってかっこいいのに売ってるの見たことないんですよね。どこに売ってるんでしょう」


 アルコールランプにマッチで火を付けながらそんなことを言う。

 乃那未が電池をはめ込むと、モータ音がして取り付けてある空き缶が高速回転を始めた。カラカラと缶の中から音がする。


「先生ぇ見てて下さいね。アルコールランプは最大火力って所がポイントですよ」


 蕾は、苦くて酸っぱくて歯がぎしぎしになるラムネをビーカーから舐めている所だった。まずいと言って流しに捨てようとする。


「ああっ捨てないで下さい。綿菓子が出来たら後で作り直しますから」


 そう言われて、綿菓子の実験を見守ることにした。


 缶の下にアルコールランプを入れてしばらくすると、乃那未がやばいやばいと焦り出す。遠目では分からないが、近付いて見ると缶から飴が吹き出してテーブルの上に散らばっている。蕾には割り箸を持ってテーブルのホコリを取っている動作に見えた。


「ちゃんとテーブルをアルコール消毒したか? 衛生的じゃなさそうだが」

「ちゃんと拭きましたよ。部室で薬品は使えないのでテーブルを舐めても死なないです」


 信用ならない。


「どうぞ」


 小さい綿菓子をつけた割り箸を蕾に渡した。乃那未の綿菓子の方が大きいのは気のせいではない。

 味見しても良いですか、と聞いてラムネもどきの入ったビーカーを取り上げる。


「ちょっとクエン酸と重曹が多かったみたいですね」


 そう言ってもう1つのビーカーに分けて、水で薄める。そして砂糖を追加。


「炭酸が抜けてしまいましたが、乾杯しましょ!」


 蕾と乃那未はビーカー同士をぶつけて乾杯する。

 乃那未が作ったラムネは、ほぼ砂糖水のような気がしたが、甘くて意外と美味しかったし、綿菓子にはホコリは含まれていなかった。

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