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調理実習


「今日の調理実習は、前回具材を皆に考えて貰ったサンドイッチだ。教科書にあるようにロール状でも良いし、三角でも良い。完成して片付けが終わった班から先生に報告してください」


 蕾は、すでにエプロンと三角ずきんをかぶった生徒たちを見回す。いつもは授業の補助だが、調理師免許を持っている蕾は調理実習のみメインで授業を進めることを認められていた。


「はーい」


 今回の調理実習は、サンドイッチだったので蕾は気楽な気持ちだった。実習が始まれば後は"見回り"をするだけ。

 生徒たちはてきぱきと調理を勧めている。不思議なことで、班の中にはしっかりしている生徒がおり、講師の代わりに先生役をやってくれる。サボる者はほとんどいないが、苦手な者はいて……そういう生徒を引っ張ってあげていた。


「せんせえ、時間が足りません!」


 相原乃那未が鍋をかき回しながら手をあげている。


「何を作ってるんだ?」

「塩生キャラメルとチョコレートのサンドイッチの、塩生キャラメルです!」


 聞いただけで、甘党以外の大半の人は吐き気を催すだろう。テーブルの上には、1キロの砂糖が置いてあった。


「時間内に終わるのか? 班の他の人は――」


 蕾がそう言って見ると、他の班の人は鍋を使わないジャムやフルーツ、生クリームといった具材を使ってサンドイッチを作っている。


「相原だけ別に作っているが、ちゃんと話し合いをしたのか?」

「相原さんがどうしても生キャラメルを手作りするって聞かなくてですね」


 班の女子生徒がそのように答えた。


 ――相原乃那未は問題児なのか!?


 観察対象なので、他の人に及ぼす影響も考えなくてはならない。と思い始める。


「もうちょっとで生キャラメルになると思うんですけど……」


 蕾はため息をついた。


「相原さんは食べる時間も使っていいから授業中に片付けまで終わるようにしてください」

「はぁい」


 乃那未はクラスメイトからチラチラ見られていたが、本人は気にする様子も無かった。生徒たちが食べ始めてもまだ鍋をかき回している。家庭科室内は、キャラメルの匂いが充満していた。

 授業が終わりに近づいても、乃那未は片付けをしようとしなかった。


「相原さん、もうすぐ授業終わるよ?」


 班の女子生徒が乃那未に言う。


「うん。もう完成するよ! 食べる?」


 そう言ってスプーンでキャラメルをすくい、その女子生徒に渡す。


「ありがとう……」


 微妙な顔をして受け取ると、熱っ! と言いながらキャラメルを食べた。え、めっちゃ美味しいよと笑い出す。

 私も俺もと、他の班からも乃那未に喋りかけた。


「ほら授業終わるぞ。相原さんは片付けてから昼休みね」

「了解です!」

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