運命の人とディナーへ行く
待ちあわせスポットでは、大勢の人が人を待っていた。その中から、人を探すことは困難に思える。
しかし、雄太にはその人が光って見えたので、すぐに見つけ出すことが出来た。
「おまたせしました」
きょろきょろ周りを見ていた運命の人――赤城奈緒に声をかける。奈緒はこんばんはと返す。
「すごい、よく分かりましたね。今電話でもしようと思っていました」
雄太は、運命の人だからという言葉をぐっと飲み込んで微笑んだ。
店を予約してあるので、さっそく移動を始める。
「イタリアンが好きなの?」
どの店に行くかメールで話し合っていた時に、奈緒はイタリアンが良いですと返したのたった。
「まずチーズが好きで……パスタとかデザートまで好きです」
「イタリアのデザートって何かな? イタリアンプリンしか分からないや」
雄太が言うと、奈緒は考え出し、ジェラート、パンナコッタ、ティラミス、アフォガード……と挙げていく。知っていた名前が挙がると、それってイタリアのデザートだったんだと金森は感心した。
ずっとにこにこして、嬉しそうに話すので雄太まで嬉しく思う。
店は、奥まった場所にあるからなのか、客は少なかった。
厨房の方には、大きな窯が見えた。
「本場の味ってメニューに書いてますね。ピザを頼むかパスタを頼むか迷います」
「大きさにもよるね。どれくらいなのか聞いてみよう」
「直径40センチくらいです」
店員に聞くと、笑顔でそのように返ってきた。ピザを2人で分け、それぞれ好きなものを頼むことにした。
ピザが到着すると、テーブルの上が狭くなった。
このピザの為にテーブルが大きかったのかと雄太は納得する。
「本場のピザって大きいんですねぇ」
それに対し、店員が答える。
「本場は、このピザ1人で食べますよ」
さすが本場……と2人は思った。
会計を済ませて店を出ると、奈緒が言った。
「金森さんって、英語の先生だからか、雰囲気が他の方と違う気がします」
「そう? どんな風に違うのかな」
「よく分からないですけど。……海外留学とかされてました?」
雄太は笑い出す。
「してないよ。日本人じゃない雰囲気ってことかな」
奈緒は頷いた。雄太は奈緒の手を握る。
「いつか、奈緒ちゃんだけに僕の昔の話を教えてあげるよ」
「昔の話……」
奈緒は不安げに雄太を見上げた。何か重い話でもあるのだろうかと。雄太はただ笑顔を返す。
「今日は良い時間だし帰ろう。駅まで送るよ」