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一月が経ちました。


 あれから一月が経ちました。

 

 放課後は、私が皆様に話す日と、地域や話題ごとに分かれて皆様が私に話してくれる日になりました。全員参加ではありませんが、ほとんどの方が集まってくれます。おかげで下の学年の方ともお話しする機会があります。


 ええ、お話しする機会があるんです。


 殿下を慕う方々に睨まれることが増えました。ほとんどの方はせいぜいよく目を向けてくるくらいだけど、たまにイザベラ様のように私に「邪魔をしないで。」とおっしゃります。それでも部屋を汚しに来たり、階段から突き落とそうとしたり、悪い噂を流したりしないので、十分可愛らしいものだ。

 まぁ、私なら周りを蹴落とすよりその人を奪うね。他人がなんと言おうと問題ない程度に大人たちを取り込んでから、周りからお似合いだと羨ましがられるくらい外堀を埋めきって、婚約せざる負えないようにするわ。もし嫌がるようなら一つだけ脱出口を用意して、そこに佇んでいましょう。「一度心を折れば大抵のことは上手くいく。」と、円満な結婚講座で習ったし。


 まぁ、私の部屋までお話しに来た同学年のオリビア様とアイリス様、下の学年のダリア様、エミリア様には、イザベラ様と同じように「王妃候補として行動しているか」と投げ掛けつつ、立ち振舞いや各国の貿易、国の政策、街の流行などについて、彼女たちが他の人より武器にしやすそうなことを話題にした。

 その甲斐あってか、数名で殿下を囲んでいても、オリビア様たちは特定の会話で殿下と仲良さげに話しているようだった。


 お陰でイザベラ様たち5人とは定期的に、殿下とより親しくなるためにはどうしたらいいかと話し掛けられるようになった。正直、そこはご自分で考えてくださいと言いたいが……。まぁ、蒔いた種がしっかりと芽吹くまでは、水くらいは与えましょうかね。伸びる方向が決まれば勝手に伸びていくでしょ。



 彼女たちからお話や呼び出しを食らううちに、気づいたことがあるの。


 私の学年はやや女性が多いけど、下の学年は7~8割が女性。ガネーシャ様が言うには卒業した上の学年も下の学年と同じくらいの男女比率だったみたい。ちなみにガネーシャ様のお兄様がいた五年ほど前は、逆に男性が多かったそう。そのせいか、ほとんどの公爵家と侯爵家の娘は生まれた時には婚約者が決められていたらしい。家同士の結束なんて、私にはよくわからないけど、この国は政略結婚が多いらしいから、きっと普通なのね。

 まぁ、釣り合う立場の女性の多くがすでに婚約者が決まっていたから、殿下は未だに婚約者がいないのだ。そして婚約者のいない子爵から男爵の娘たちが躍起になって玉の輿を狙っている。

 没落寸前の子爵から商人あがりの元平民男爵までいるから、さすがのロベルト陛下も調査しきれないっぽいのよね。……お父様ならやれそうだわ。それに私に頼らなくても殿下護衛のギルベルト様がいるわよね? あれ? なんだかわざわざ私に頼る理由がわからないわ。

 ……考えても分からないから、放っときましょ。



 そうそう、あの日から殿下と話す機会が増えてしまいました。ちょっと気分が落ち込むわ。殿下と話す時は、少なくとも5人以上の彼女たちともお相手することになるから。

 まぁ、殿下との話は、私個人の話よりもジェラード帝国の文化や魔法、魔物について話すことが多いから、それは救いだわ。殿下も気にしていらっしゃるのか、はたまた彼女たちが敏感なのか、殿下と二人になることはなかったし。もし私個人の話や二人きりになったりしたら、殿下を慕う彼女たちと開戦するしかなかったわ。助かったー。




「エマです。ルーシーさまはいらっしゃいますか?」


 控えめなノックと共に幼い声が聞こえてきた。


「エマさん。如何致しましたか?」

「ルーシーさまあてのおてがみを、おとどけにまいりました。」

「まぁ! わざわざありがとうございます!」


 エマさんが手紙を二つ届けてくれました。いつもは寮の管理人さんから受けとるけど、今日は管理人さんと会えてなかったのよね。とても助かるわ。


「あの、ルーシーさまは、じじょがついていないのですか?」


 エマさんは不思議そうに言いました。そっか、そうよね。


「ええ。私の国では侍女がいないのが普通なの。」

「えっ! あ、た、たいへん、しつれいしましたっ!」

「気になさらないで。」


 慌てて謝罪するエマさんに、私はそう言いニコッと笑う。


「あ、ありがとうございます。」


 エマさんはほっとしたように、年相応の笑顔を見せてくれた。かわいい。

 ガネーシャ様から「エマはまだ見習いだから、無作法があったら教えてちょうだい。その場で叱ってもいいわ。」とは言われたけれど、素直でかわいい子だわ。私の知ってるエマさんくらいの子供たちはみんな、生意気かやんちゃか糞生意気かのどれかだから、つい眺めてしまうわ。やっぱり"かわいい"は、心穏やかにしてくれる素晴らしいものだわ!

 つい、エマさんが帰られるまで笑顔で見送ってしまったわ。ニヤけていないといいけど。



 手紙は、お父様とお母様からで、二人とも私の近況を聞きつつ、妻・夫の近況を報告していた。

どうしてお父様はお母様の、お母様はお父様の近況報告してるの? 手紙の中でも夫婦揃って相手のノロケ話をしなくていいよ。むしろしないで。もう耳にタコができて踊り出してしまいそうだわ。


 他には来週のノヴェロ王国の建国祭について書かれていた。

 ちょうどガネーシャ様たちと一緒に祭りに行こうと話した所なのよね。問題はこの手紙にある「予定は全部決めてあるから!」という言葉。


「……」


 娘が友達を作らないとでも思ったの!?

 私だって友達と一緒にお祭り巡りしたいのよ!?



 ……とりあえずこれは抗議しとこ。最低でも一日はガネーシャ様と一緒にお祭りに行きたいわ。




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