ちょっと多すぎませんか?
留学二日目のお昼の食堂にて、大変なことに気付いてしましました。
アルフォンス殿下を囲っている女性は、全部で17人でした。
昨日はガネーシャ様とトラヴィス様と一緒にご飯を頂いていたので気づかなかった。どうやら下の学年に9人もいるらしい。この学園は二年制だから年上はいないけど、もしいたらもっと多かったかもしれない。これでも少ないとか冗談だけにしてほしいわ。
ギルベルト様がわざわざ六人掛けのテーブルを三つも繋げて、アルフォンス殿下が一人一人椅子に座らせてあげて、全員が座ったのを確認してから食事をする。彼女たちは食事をしながら口々にアルフォンス殿下と話そうとするし、アルフォンス殿下もおざなりにならない程度に返事をする。
そのうるささと言ったら、夜更かしした時の朝の鳥の合唱くらい鬱陶しいわ。どうして昨日は気づかなかったんでしょうね。不思議だわ。
「今日はツイてないわ。」
ガネーシャ様が小さな声で呟く。
「昨日は運が良かっただけだよ。」
「隣になるなんて、ひと月にあるかどうかよ? ツイてないに決まってるわ。」
トラヴィス様も、これには思わず苦笑い。
どうやら昨日はこの集団から遠い席に座っていただけらしい。
「いつもこんな感じなんですか?」
「そうよ。殿下が在学中に伴侶を決めると公言してから、ずっと。」
「あまり言いたくないのだけど、他所でやってほしいわ。」と、ガネーシャ様は頬を膨らませた。
「でも、食堂って、こんなもんじゃありませんか?」
「それでも少しうるさいですけど。」と言うと、トラヴィス様は驚いたような顔をした。
「ジェラード帝国では大勢で話しながら食事するのが普通なのか?」
「少なくとも私の街では普通ですね。まぁ、それでも一組10人程度ですけど。」
「そうなんだ。」
「ノヴェロ王国では違うんですか?」
「ああ。少数で静かに食事をするのがほとんどだよ。」
……せっかくおいしい食事なのに、ガネーシャ様もトラヴィス様も、よく見れば周りの人も、少し落ち込んだ表情をしている。
面倒だけど、おいしい食事はおいしく頂かないと、作ってくれた人にも食材にも申し訳ないわ! 言うしかないわね。面倒だけど!
「お食事中に申し訳ありません。少し、声の大きさを抑えていただけませんか?」
うん、20人近い団体相手はやっぱり少しビビるわ。あーあ、これが魔物なら平気なのに。
「申し訳ない。少しうるさかっただろうか?」
“少し”なんてかわいらしくないですけど、そうです。……なんて言えるはずもなく。
「いいえ、殿下。ですが、せっかくノヴェロ王国に来たのに、ノヴェロ王国ならではの食事方法がしづらい状況でしたので、お声をかけさせていただきました。楽しくお食事なさっていたのに、申し訳ございません。」
「いや、こちらも配慮が足りなかった。謝らないでほしい。」
「ありがとうございます。」
サクッと挨拶を終わらせてガネーシャ様たちの元に帰る。
団体は、殿下の一声で随分と小さな声で話すようになってくれた。やったぜ。
「ルーシー様っ!」
席に戻るなり、ガネーシャ様が一際小さな声で話しかけてきた。
「びっくりしましたわ! いきなりあの集団に声をかけるんですもの!」
「だって、せっかく留学しているのですもの。ノヴェロ流の食事を堪能したいですからね。」
ニコッと笑って見せると、ガネーシャ様はムッとしつつも嬉しそうにしていた。