表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/34

はじめての狩り

 ぎゅるるるるっ……え、何の音だ?


 辺りに響いたモンスターの唸り声のような音。いきなり轟く音に寝ていた私は思わず飛び起きた。


 ▽質問確認。状態異常空腹が原因と推測します。


 どうやら、自分の腹の虫が原因だったらしい……女の子として、恥ずかしいね。空腹って言われると、途端にお腹が空いてきた。忘れていた飢餓感が身体に蘇る。そういえば、生まれてから青い石と骨しか口に入れていない。この二つが食べ物として認識していいのか、微妙なラインではあるが。


 そうなると、食料調達に行かなきゃいけないのか。

 家にあった保存食は滅茶苦茶にされており、殆どが駄目になっている。前世では愛用していた罠は手が無いから使えないし。折角家に戻ってきたのに、良い事が何一つも無い事実に項垂れた。


 狩り、狩りかぁ……。

 ゴブリンの時は苦手だった戦闘。主に罠で獲物を引っ捕らえていた訳だが、今はただのもふもふ。罠とか設置出来ません。この牙と、サーフィンで何とか仕留められるかな?


 ……前世の肉、食べとくんだった。


 何とか倒せないかと脳内シュミレーションをしながら、作戦を練っていると、一つ名案が浮かんだ。サーフィンで相手の足場に波をつくって、バランス崩した所に奇襲という案だ。自分だって、あの波に乗るのは苦労した。突然、足元が揺らげば、かなり此方が有利になる。


 ▽質問確認。自分の接点以外に波を作るスキル「波おこし」は、スキル「サーフィン」の派生スキルです。L v5で開放。


 ……使えないんかい。

 転生してから何度目かの、脳内ツッコミを入れる。

 再び頭を捻り、何とか仕留められる方法を模索する。


 あっそうだ。

 サーフィンで波を作って、飛び降り、生き埋めにするっていうのはどうだろう。昨日も家へと到着した時、砂はすぐに戻って、地面に落ちていった。あの下に獲物がいたら、中々の攻撃力になると思うんだけど。


 ▽質問確認。可能です。

  しかし、高波から飛び降りた場合、着地失敗でダメージの為、高波からの飛び降りは推奨しません。


 落下ダメージとかあるんか、まぁ当たり前か。家とか着地できる高台があればいいけど、そんな都合良く見つかる事は殆ど無いだろう。とりあえず、飛び降りてもダメージが入らない程度の波で、生き埋めにできる獲物を狙う。という事で脳内作戦会議は終了した。


 さて、肝心の獲物を探さなくては。作戦も決まり、私はまた洞窟内を歩き回っていた。今回の作戦は「サーフィン」を使う為、MP浪費防止に歩きである。

 そろそろ疲れ始めたという頃に、藪のような場所で丁度良い獲物が見つかった。


 ガァァ、ガァァ。


 目の前で呑気に鳴いてるのは帝王カエル。可愛らしいとは言い難い声と、マスコット化はできない見た目だが、ゴブリンの時もお世話になりました。ヌルヌルした見た目なのに、干し肉にしても肉が残る程、水分少なめのカエル系モンスター。香辛料を付けて、焼くと美味しい。


 さて、いよいよ作戦実行だ。帝王カエルの背後で、波をつくる。いつも通り、ぼこぼこと地面が揺れた。高波の時より、揺れは少ないが、相手だって鈍感では無い。


 じゃあ、どうなったかって?

 揺れを察知した、帝王カエルは、猛スピードで逃げて行った。


 ちょっ、ちょっと待て!


 波に乗り、必死に追いかけるがその差はどんどん開いていくばかり。洞窟の複雑な地形も相まって、ついにはその姿を眩ませてしまった。

 

 ……スピードが足を引っ張りすぎだよ!


 心の叫びも虚しく、帝王カエルとの追いかけっこのせいで、余計に腹の虫は元気になっている。食料をどうするべきかと頭を抱えていると、頭にまたまた声が響いた。


 ▽質問確認。近くに虫系モンスター「ゴマコオロギ」を発見。


 確かに、右手の茂みに小さい虫がコロコロ鳴いている。秋を感じさせる音だが、実は一年中鳴きつづけているという。ゴマコオロギは、小さな身体に不釣あいな大きな足を持ち、すばしっこい見た目してる虫系モンスターだ。しかし、そんな見た目とは裏腹に凄い鈍足な残念モンスターだ。繁殖力とうるささにかけては一人前な彼らは立派な食料になる。……なるんだけど、味が……。


 香ばしい香りがした瞬間、泥みたいな味が口にへばりつくのだ。ゴブリンの時も一度口に入れて、後悔した覚えがある。


 ▽状態異常空腹。あと二十分経過で、一時間毎に1ダメージ。


 食べろと言わんばかりに、繰り返す頭の声。

 分かった、分かったよ! 食べればいいんでしょ!

 自暴自棄に茂みにジャンプして突っ込み、ゴマコオロギに噛み付く。ゴマコオロギはその見た目だけの味をバタつかせ、必死にもがいているが、すぐに動かなくなった。


 ▽ゴマコオロギとの戦闘に勝利。経験値を獲得。

 ▽L v2になりました。

 ▽ステータスポイントの割り振りをお願いします。


 能天気なパラッパラー!という音と共に、レベルが上がったらしい。もう、レベルが上がっちゃったらしい、前世より幾分も成長が早い気がする。そういえば戦闘に勝利しないと経験値入らないんだっけ、狩りは頻繁にやってかないといけないのかぁ。

 ステータスの割り振りとかあるけど、とりあえず新鮮なうちに食べちゃいたいな。


 後回しじゃ駄目かね?


 ▽質問確認。大丈夫です。


 ありがとう。それでは、いざ、実食。手もないので、調理する術が無い私は、そのまま新鮮な生で頂きます。まだ神経が生きてるのか足は地味に動いている……。

 勢いで食べちゃえ!と思い切ってかぶりつく。その瞬間、口に香ばしい香りが広がった。その直後、泥臭い味が広がる。でも身体が違うからか、ゴブリンの時よりかなりマシだ。美味い!って訳では無いが、普通にいける。まぁ蠢く足の感触は気持ち悪いけど……。


 ▽状態異常回復。適度な飲食を心がけましょう。


 はい、ご馳走様。

 私は転生初の食事を終えたのだった

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ