表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/34

閑話 クテラ観光

 私は暗い所が嫌いだ。

 その理由は幽霊が怖いだなんて可愛らしい物じゃない。私にはオカルトの類なんかより怖い物が……いや、辛い物があるから。今でも思い出すだけで、頭がガンガン痛くなる。

 三日前、初めて受けたギルドの初仕事も自分だけ足を引っ張ってしまった。しまいにはデュークに当たってしまうし、自分の情け無さを毎日痛いほど痛感する。

 ……私もアークみたいになれたらいいのに。

 いつも私達、赤き龍を引っ張ってくれる団長としてだけでなく、やっぱり昔からアークは凄いし、カッコいいし、憧れる。

 私もあんな風だったらモリィは怪我をせずにすんだし、報酬から下水道の修繕費を取られる事も無かっただろうし……。

 ……また、どんどん落ち込んでるよ。

 これも私の悪い癖だ。一つ嫌な所を見つけると、どんどん鎖のように嫌な所が繋がっていき、いつの間にか自分をがんじがらめにしている鎖のせいで身動きが取れなくなる。


 「おーい、ノエル!置いてっちゃうよ!」


 前方から元気なモリィの声が聞こえてくる。

 修繕費を取られたとはいえ、元々の目標の三十匹を大幅に超え、女王の群れを壊滅させた事により報酬はかなり貰えたので、今日は一日クテラの街を観光する事になった。

 メレディスは個人の用事が、他の三人はクエストに行ってしまったので私達だけでの観光だけれど。

 ちなみに初仕事をきっかけに心からデュークと打ち解けたモリィは、今日もデュークの背中の上を陣取っている。

 モリィ曰く、ふかふかで居心地が良いんだとか。

 最初は怪我を労るために安定したデュークの背中に乗ったのが始まりだったけれど、怪我が治っても私の腕の中には戻って来ないだろうなぁ。


 「ノエルっ!」

 「あ、今行くよ!」


 今は置いていかれないようにモリィ達について行く日々だけれど、いつかあの二人と肩を並べられたら……。



 「……近くで見るとさらに怖い」


 街の中心にそびえ立つ古城オプスキュリテ。

 昼間は観光客が多い集まり賑やかで、夜は綺麗にライトアップされるのだが、どこか禍々しい雰囲気を感じる。まるで心の奥深く、自分すら気付かない所まで見透かされているような……。

 ふとモリィを見ると、物凄く険しい顔をしていた。恐怖するというより、少しでも目に焼き付けているような。一方、デュークはクエスト中とは打って変わって「立派だな」と惚けている。


 「じゃあ、中に入ろうか」


 二人の表情の違いに漏れ出そうになる笑いを堪えながら、古城の中へと入っていく。

 古城オプスキュリテは一階のホール部分が開放されており、古城の主オプスキュリテの肖像画や、古城にまつわる書物が展示されている。

 黒魔術の城であるため、ホール以外の場所は危険らしく、立ち入り禁止の看板の前には厳つい顔の警備員が常に立っていた。

 ホールをモリィ達と共に観覧していると、ふと一枚の絵が目に留まった。

 肖像画と同じ漆のような黒髪のオプスキュリテの周りに、何人もの女性が立っている。その女性全員が黒いシスター服を纏い、オプスキュリテへ恍惚の笑みを浮かべながら寄り添っているのだ。

 絵のタイトルはオプスキュリテと黒魔術教徒。

 黒魔術教徒はオプスキュリテの使う黒魔術に心を奪われ、その身体の全てをオプスキュリテと黒魔術に捧げた人々が創った宗教団体……考えただけで虫酸が走る。

 黒魔術教徒、黒魔術教徒、黒魔術教徒、黒魔術教徒!


 「……ノエル?大丈夫?」

 「あ、うん大丈夫だよ」


 ……絶対に許さない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ