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新しいなかま

 壁から天井にかけて広がる大きなステンドグラスから、昼の陽光が差し込み、幻想的な教会。

 街から歩いて数分の高台に建つ、教会に私とノエルは足を運んでいた。

 別に宗教の集会があるわけでも無く、祈りを捧げに来た訳でもない。

 いや、祈りを捧げるというのは、あながち間違っていないのかな?


 まぁ本題に戻り、何故こんな所に来たかと言うと、今日はノエルの七歳の誕生日、つまり役職を貰いに来たという訳だ。

 水晶玉に手を置き、神に願いを捧げる。なんて簡易的な儀式だが、「役職下ろし」だなんてお名前がついている。


 朝起きて、そーいやノエルの誕生日だなぁ って事で、教会に送り出されたのだ。

 護衛として私だけつけて、折角の儀式だというのに誰も来なかった。

 なんかいつも通り、というかいつも以上に冷たい対応に違和感を覚えたけれど。

 ……はぁ、折角の誕生日だというのに、なんだか寂しいものだね。

 まぁ昨日の出来事のせいで気乗りしない私はお祝いムードなんて作れない訳だし、黙っているのだが。


 「ノエルさん、此方へ」


 椅子が置かれた簡易的な待合室で待っていると、奥からシスターが現れた。

 ノエルが私を抱いたまま奥へ向かおうとすると、シスターさんに止められる。

 モンスターは立入禁止らしい。大人しく待ってるから、行っておいで。


 待合室の椅子の上で数分待っていると、ノエルがシスターさんに連れられ戻ってきた。

 右手にはクルクルと丸められた紙が一枚。

 私を抱き抱え、紙をまとめていた紐を解くと、その中身を見せてくれた。

 今時見かけない白い羊皮紙に、黒インクで綺麗に描かれている。



 ノエル様の役職「獣使い」となりました。

 これからの冒険者生活に幸あらんことを。



 獣使い……? これってモンスターを使う役職だよね?


 「希望職だったんだよ! やったねモリィ」


 珍しくノエルが歯を見せて笑った。

 獣使いって事はノエルと会話したり、一緒に戦えるって事だよね?

 役職の存在を聞いた時から、憧れていた人との会話、特にノエルと話せるようになるという事が叶ったのだ。

 昨日からずっと暗かった私の心に一筋光が差し込んだようだった。


 帰り道は行きよりも、少し身が軽かった気がする。



 「おったんじょうびぃーー! おめでとーー!」


 うわっ!? ……び、びっくりしたぁ。


 宿屋の門をくぐった瞬間、破裂音と共に目の前にヒラヒラとテープの様な物が舞う。

 前を見るとクラッカーを持ったミアが悪戯に笑っていた。

 周りには、ガンツ、メレディス、団長、それにデューク……とパーティーのメンバー達が集まっている。


 「いやぁ、頑張って準備したんだよーー?」

 「サプライズって事でして……朝は冷たく接してごめんなさい」


 サプライズは私の提案なんだぞーー!と胸を張ってドヤ顔をするミア。

 なるほど、それで今朝はみんな何か様子が違ったのか。


 「準備するのが大変でね。一人で護衛を任せてしまってごめんなモリィ」

 「デュークも参加出来る様に、庭の使用許可貰ったりと大変だったんだぜ〜」


 デュークも流石に誕生日パーティーは留守番したくねぇだろ!とガンツが笑っている。

 庭を覗くと、風船などで色々飾り付けられており、中心には白いクロスをひいたテーブルが置いてある。

 その上にはケーキやチキン……他にもノエルの好物をメインに料理達が陳列している。


 整った会場に目を奪われていると、ふと、背中に冷たい物が落ちた。

 なんだ! 雨!? と頭上を見上げると、ノエルが泣いていた。


 「み、みんなぁ、ありがどう……ぐすっ……」


 涙で声を濁らしながら言うノエル。

 その身体にそっと寄り添った。


 私には新しい仲間がいる、それを守っていけばいい……。

 暖かいノエルに包まれながら、私はそう思うのだった。



 「……しまらないなぁ」


 パーティーが始まってから二時間。

 最初の方はケーキを食べたり、ゲームをしたりと良い時間だったのだが、途中から祝い事で飛ばし過ぎた大人達は浴びる様に酒を飲み、後半はただの飲み会と化していた。

 酒を好まないミアと未成年のノエル以外は見事にノックダウンしている。

 プライドの高いデュークは自分の主人と仲間達がこうもだらしない姿を露見させている事が気に入らないらしく、先程からなんとか隠そうと馬屋へと運搬作業をしている。

 ……藁とモンスターの匂いで目を醒ませ、大人達よ。


 「そーいえばっ、これを聞いてなかったね」


 ミアがいきなり思い出した様に言った。

 すると手を丸め、マイクのようにノエルの口元へ当てる。


 「ノエルさん、あなたの役職は如何にぃっ!」


 ……そうじゃん、肝心の役職発表してなかったじゃん。

 全く、酒に溺れた大人っていうのは怖いね。


 「あっ言ってなかった……こ、これ」


 ノエルはテーブルに置いていた紙をミアに見せた。

 それを見たミアはぱあぁっとと顔を明るくして、思いっきりノエルに抱きついた。


 「ノエルぅ……おめでとう! 希望職じゃん!」

 「や、やめて、苦しい……」


 大騒ぎなミアの様子を見て、デュークも気になったのか、こっちに来たそうにしている。

 だけど、まだ足元に転がっているのは泥酔した主人と愉快なお仲間達……あっ、面倒臭くなったのか、後ろ足で蹴りを入れた。

 衝撃を受けた大人達はコロコロと馬屋へ収納されていく。こんな扱い、良いのかね。

 どすどすと近づいてきたデュークも何やらいつもより鼻息が荒くなった気がする。

 きっとデュークも喜んでいるのだろう。


 そんな不格好な終わり方だが、ノエルの誕生日パーティーは楽しい思い出となった。

作者のちょっとした小話


団長はワイン、ガンツはビール、メレディスは焼酎が

好きらしいです。


酒は飲んでも呑まれるな。良い教えですね。


今回もありがとうございましたーー!

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