表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/34

もふもふと青い石

 手足と、ふわっとした耳と尻尾を生やせばエセカーバンクルになれるんじゃないか、これ。私がブツブツと呟いていると、再び頭に声が流れる。 


 ▽進化先「カーバンクル」に必要な条件を満たしていません。


 ちょっと待ってくれ。今「進化先」って言った?という事は、進化さえ出来ればケサランパサランってカーバンクルになれてしまうという事だ。カーバンクルといえば、その生命を使えば、願いが叶うっていう幻のモンスターだ。人間達が血眼になりながら、探してるようなモンスター。希少価値はそこら中にいるケサランパサランとは雲泥の差だ。まだ、生まれて数分の命だけれど、正直今世一番の驚きだ。


 ▽進化先「カーバンクル」に必要な条件。

  スペシャルアイテム「赤龍の石」を摂取。

  L v80になる。の二つの条件クリアで解放。


 「赤龍の石」ってことは、これの赤いバージョンが必要って事か。てかL v 80ってどんな領域よ。早死にしたとはいえ、前世でもL v15止まりだったのに、生きてる中でそんな高レベルにとても到達できるとは思えない。

 しかし青龍に赤龍……ね。なんか五龍神の方々とご縁がある気がする。この世界には水を司る青龍、炎を司る赤龍、雷と気を司る黄龍、植物を司る緑龍、闇を司る黒龍がいて、合わせて五龍神と呼ばれているのだけれど。それぞれ大きな特徴があって、青龍は大きな角、赤龍は炎結晶を身に纏い、黄龍は長い髭、緑龍は頭に木が生えている。ここまではゴブリンの端くれだった私でも知ってる位の常識だ。

 黒龍だけは詳細不明。知ってるモンスターは殆どいないらしい。


 ちなみに、このペンダントにしてた青い石は「青龍の石」はゴブリンだった時に頂いた物だ。

 昔、洞窟の出入り口のすぐ側にある川で洪水が起きて、何日も続いた大雨が原因だったらしく、その水は洞窟内にまで及んだ。洞窟の浅い所に住んでいた私は、被害をモロに受け、瓦礫の片付けやら、食料調達やら、に追われていたのだ。ゴブリン仲間達からは変人扱いされていた私はたった一人で働いていたのだがそんな時、足元から声がかかる。

 ふと足元を見ると、洞窟のすぐ近くに生息する、スライムといえばという見た目の青いスライムがいた。その小さな身体を震わせながら、何やら切羽詰まったような様子で叫んでいる。


 「飯を分けてくれ!腹が空いて死にそうなんだ!」


 何、この子。私も食料余ってないし……忙しいしなぁ。

 そう思い、無視しようとした途端に罪悪感が私に押し寄せた。この子を見捨てていいのか、本当に。正直、このまま放置したらしばらく夢見が悪そうだ。

 仕方ないのでお昼に食べようと腰にぶら下げておいた帝王カエルの干し肉を投げてやった。ちなみに、帝王カエルというのは我々ゴブリンの主食の一つだ。大層なお名前だけど、本当は小さく弱い。適当にかけた罠でイチコロだ。


 「ほれ、大事に食えよ」


 干し肉をほいっとスライムへと投げる干し肉を取り込んだスライムが何やら蠢きはじめた。

 にゅるにゅる……へんしーん。顔の位置やらが動いたグロ映像を見せつけられた私は思わず困惑する。とりあえず、そんな大変身を遂げたスライムは、大きな角の生えた龍の姿になっていた。まるで青龍様みたいな。その青い身体とも相まって、凄い似ている。いや、実物は見た事無いけれど。でも、そんなお偉い方のモノマネとか大丈夫かな。「パクってんじゃねぇ!」って青龍様に怒られない?私が色々と心配していると、青龍様の腹の部分が開き、声が出る。うえっそこが口なのかよ、ホラーかな?


 「安心したまえ、私は青龍の化身だ。帝王カエルか、有難う。礼をしたい」


 あちゃぁ……これは重症だよ。「化身だ」とか言っちゃったよ。そうやって遊びたいお年頃なのは分かるよ、凄い分かる。声もそれっぽいし、お友達に褒められて調子乗るのも分かるよ。でも、誰にも怒られない内に辞めといた方がいい。あんまり目立つ行動は私みたいに変人扱いされる原因になる。


 「ちょっ……そんな白けた目で見るなぁ! 今、お前が声を出さずとも話が出来ているであろう?これが証拠だ!」


 おぉ、念話的なやつか。これって受け取る側がただのゴブリンでも構わないのね。確かに念話は高レベルのモンスターしか、使えないらしいけど、流石にそれで「青龍様でしたかぁ」とはならない。


 「では、証拠を出そうでは無いか」


 スライムはそう言うと、またにゅるにゅるし始めた。お決まりのグロ変身に、思わず顔をしかめる。もうこれモザイク付けようか。そして一通りにゅるにゅるし終えると、半透明の身体から、ぺっと何かを吐き出した。ガムの吐き捨ては条例違反ですよ。まぁ条例なんて無いけど。

 って、これ何だろうか。吐き捨てられたのは何やら艶めく青い石。綺麗に丸い形に磨かれたそれは、洞窟内に関わらず、美しい光を放っていた。


 「証拠として出したが、礼としてやろう。 それは青龍の石だ。きっと君の力になるだろう」


 それだけ言うと、スライムは砂の様に溶け、地面に吸い込まれて消えてしまった。残った石をよく見ると、角を模した青龍様の印が……。


 「本物じゃん……」


 その後、周りの子には「たまたま拾った綺麗な石」と説明して、あえて堂々とネックレスにして着けていた。大事な物は隠すより、目につく所にあった方が安全だったりする。これは二年前辺りにぽっくり逝っちゃった婆ちゃんの教えだ。

 そんな風に不本意な形で青龍の石は手に入ってしまったのだが、本来は有り得ない。今回のパターンは青龍様の気まぐれだ。龍の鱗が永い年月をかけて、結晶化したのが、この石。本来は五龍神様に試験を申し込み、力を龍神様達が認めたら、頂ける物。これをポイポイとチラシのように配っているのは青龍様位で、他の四龍様達は、ちゃんと昔からの決まりに則り、試験で認めた者にしか授けない。


 レベルの話は置いといても、これは無理だな。こちとら、ただのもふもふよ。赤龍様の試験とか絶対無理よ、やめたやめた。進化すれば強いのかもしれないけれど、ドラゴンとか、フェンリルには敵わないっしょ。たとえ物凄く強くなっても臆病な私には無理だ。ゴブリンの時も戦闘は苦手で、それでからかわれてたくらいだし……。実際、ケサランパサランはよく見かけるのに、カーバンクルは全然見つからないのも、厳しい道のりって事を示しているんだろう。


 まぁ、カーバンクルなんて夢物語は置いといて……

 自分(前世)が食われてる、この状況に目を戻そうか。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ