わたしの名前
「よし、もう大丈夫よ」
グルグル巻きの包帯を外して貰いスッキリ。
爽快感バッチリな感じだ。
どうやらスラッシュベアとの戦闘も倒せた訳では無いけど貢献したとして経験値が入ったらしい。
レベルも一つ上がって今はこんな感じだ。
Lv13(+1)
パワー1965(+300)
スピード2250
ディフェンス1358(+300)
HP 320/330(+30)
MP 620/620(+50)
HPも大体回復して良い感じだ。
一日でこの回復力……恐るべし。
包帯よ、一日限りだったけど、お前との日々忘れねぇよ……。
茶番はさて置いて、一日経った今日、意外と馴染めてしまっているものである。
あの後、驚きで中身が抜けてた私を置き去りに、団長が色々と説明してくれた。
獣使いというモンスターと会話ができ、本格的に使役できる役職がいないこのパーティーで、私が人間語を知らなかったら意味無いのに頑張ってくれたので真面目に聞いたけどね。
まず、冒険者ギルド。
この世界には私達モンスターが生息している。
そのモンスターを狩る事を職業にしている冒険者達の所属元となる団体だ。
まぁ配達とか薬草取りとか雑用も結構するんだけどね。
国など政治には大きく関与しない第三勢力だが、大きな力を持っている。
そんなギルドの中でパーティーというものを組むらしい。
冒険者という職業は危険が伴う、なるべく大人数の方が良い。ということで基本的にパーティーを組む事を推奨されている。
二人以上ならパーティーと呼べるらしく、二人から百人以上まで様々なパーティーがあるらしい。
そんなパーティーの一つ「赤い龍」は弓使い兼団長のアーク、戦士のガンツ、神官兼遠距離魔法のメレディス、格闘家のミア、そして役職を持っていないノエルの五人から成り立つパーティーだ。
役職は冒険者希望の子が七歳の誕生日に貰えるらしく、それぞれに合った物が授けられるらしい。
その役職からの変更は出来ないらしい。
ノエルは現在六歳らしく、もうすぐ誕生日で役職が貰えるそう。
ちなみに、このパーティーはE〜Sランクという強さのランクの内、Aランクパーティーとして分類されているらしく、中々強いらしい。
まぁ団長談の為、脚色が加えられているかもしれないがスラッシュベアから楽々助け出してくれたし、きっと強いのだろう。
このパーティーは世界中を周りながら冒険者としての仕事をしているらしく、私の出身の洞窟に丁度来ていたらしい。
いきなりはぐれたノエルを探していた所、何やら人影が?と思ったら、まさかのご本人。
ノエルが私の事を伝えてくれたらしく助けに行ったの事。
そして、仲間にしよーぜ。との事。
「ノエルも懐いてるし、ね?お願い?いいよね?ありがとう!」
と団長に言われて加入してしまった。
というか言語も話せず、獣使いもいないこの状況では拒否権が無いんだけど、それは。
そんな成り行きでパーティーの一員。
正確にはパーティーの使役モンスターになってしまった私はちょっとフクザツなのである。
人間は信用しねーー!って思ってたのに、案外居心地良くて、馴染めてしまった……という心境……。
実にモヤモヤする。
▽……適応出来るならそれがベストかと思います。
パーティーの使役モンスターになったからには仲間ですし。
……天の声ちゃん。確かに、確かにそうだな。
仲間か。うん、折角だしね。
よし、仲良くしてみようじゃないか。
▽案外安直……ですね。
ん?何か言った?
▽いいえ。
よし包帯も取れたし、動いてみよう。
傷が開くといけないから!と昨日は一日メレディスに足止めされていたけど、もう大丈夫らしいし。
「おおっ何か光ってるーー!」
……って、ミアは何やってるんだ。
額にはめ込まれてる青龍の石を何やらコツコツ突いている。
うほほっと変な笑い声をもらしながらニヤニヤしてる為、地味に怖い。
「ミア、顔変になってますよ」
「うほほっ……ハッ、マズい!嫌わないでーー!」
慌てて涎を拭いたミアが抱きついて来る。
うぐっ……ミアもアタックが強い。
私がミアの腕の中でもがいていると、天蓋が開いた。
振り返るとノエルが立っていた。
そういえば昨日の自己紹介からノエルとは全然接点無かったな。
んーー嫌われてない……よね?
そんな心配をしていたのが伝わったのか分からないが、ノエルが近づいてワサワサと撫でてくれた。
ノエルが一番上手いと思う、撫でるの。
おっといけない、つい顔が緩む。
撫で担当がノエルにバトンタッチされ、至福のひと時を味わっていると、救急箱の整理をしていたメレディスが何やら思い出した様に言った。
「あっそういえばノエル。この子に名前つけてあげたら?」
そうか。ゴブリンの時も個人の名前は持ってなかったし違和感は無かったけど、人間にとって名前って持ってるものなのか。
でもなんか名前つけて貰うって贅沢なような……。
ノエルに期待混じりの視線を向けると、何やらブツブツ呟いて、私を折り畳みの机の上に置いてしまった。
あれ?撫で撫でタイムは終了らしい。
名残り惜しい気持ちもあるが、ノエルは個人の時間モードに入ってしまってるので、そっとしておこう。
「ノエル本気だなぁ。んじゃ私が野営地を案内するぞーー!」
うがっ、またミアに抱き抱えられた!
ちょっと待って力強いんだってーー!
ミアは私を抱き抱え、外に飛び出した。嵐のような人だ……。
今キャンプをしているこの場所は洞窟から少し離れた所にある。
森の開けた所に二つテントが張られており、中心で火を焚いている。昨日、自己紹介したり食事をしたのはココだ。
テントの内、さっき出てきた所は女子用テント。
女子用テントは基本的に女子の同伴無しだと入るのは禁止とされていて、ガンツは女子だけ厳しいよなぁとぼやいていた。
治療等はメレディスのいる女子用テントで行う為、結構男子も入る機会はあるそうだけど。
私はノエルに懐かれているからという理由で、女子用テントで寝泊りする事になった。
もう一つのテントは男子用テント。
男子が女子より少ない為、男子用テントには食料や生活用品等、必要な物が置かれている。
これらの管理は団長任せらしいし、丁度良いんだとか。
男子用テントには初めて入ったけど、女子用テントより飾りっ気が無いというか、ただ寝るだけって感じのテントだった。
旅をしていて直ぐに片付けるから男子は結構いつもこうなんだとか。
反対に女子用テントはメレディスがアロマを焚いていたり、ミアがコレクションしている民族の人形が並んでいたりと、割と物がある。
最後に紹介されたのが私と同じ使役モンスターのデューク。
種族は闇獅子とかなり強く、レアモンスターだ。
闇獅子は影のような黒い毛並みに鋭い牙を持つ、獅子のようなモンスターだ。
深い山奥にしか生息していないらしく、またプライドが高い事から使役するのは難しいとされている。
良い関係を築ければ主人に対して牙を剥く事も無く、また母性愛も強い為、主人の子供なんかにも優しいんだとか。
ちなみに今使役しているのは団長らしい。
団長から命令を受けているから攻撃はされないが、私は人間ではなくモンスターだ。良い顔はされず唸り声をあげられた。
ちなみに同じ獣使いが使役してるモンスター同士でなら会話が出来るらしい。モンスター目線になると獣使いって凄い重要な役職なのね……。
「そろそろお昼ご飯だぁーー!もふもふ!今日もいっぱい食べてねーー!」
そんな感じでミアに案内というか振り回され、午前はあっと言う間に終わった。
一人の時より充実……してるのかな?
火が焚かれている広場に戻ると団長が何やら鍋で炒めていた。
鼻歌まで歌って……ご機嫌だな。
「団長は料理好きなんだよねーー!美味しいよーー?」
「ピィッ」
ほう、そうなのか。
……ってまた心読んだ?もしかして私、顔に出やすいタイプ?
果たして、こんなもふもふの表情なんて分かるものなのだろうか……。
「ねぇ団長何作ってんのーー?」
ミアと一緒に鍋を覗き込むと、お米と肉と野菜が炒められていた。
炒飯か。ゴブリンの時、森に住んでるモンスターが人間の業者が落とした米を分けてくれて作った気がする。
「もうすぐ出来るから皿とか準備してくれ、お前はこっちな」
そう言われ、私の前にどんっと置かれたのはお粥……かな?
あの子が風邪をひいた時食べさせて貰ったと言っていたお粥にそっくりだ。
「怪我もまだ全治している訳では無いし、内蔵も傷ついていた。消化の良い物が良いだろう」
内蔵が傷ついてた……?
スラッシュベアとの戦闘で内蔵関係あったっけ。
▽進化先「レッド」解放時の炎結晶が原因かと。
あっあれか……。ケリール草食べながらやってたから気付いてなかったけど、ちゃんと身体に影響はあるのね。気を付けなくては。
私だけご飯がもう用意されちゃってるけど折角だから、いただきますまで待とうかな。
ミアとかお皿どこだーー!って駆け回ってるし、落ち着いて食べたいかな……。
広場で準備が終わるのを待っていると、隣に誰かが座った。
誰だろ?と顔あげるとノエルだった。
ノエルはジッと此方を見つめてくる。なっなにかついてる?
「あのね、私、名前考えてみたの」
えっ!本当に!?
もしかして朝にブツブツ言ってたのはその事かな……!?
これ違ったら私相当な自意識過剰だけど……。
「あのっ、モリィってどうかな?」
ふわぁぁあ!私にもついに名前がついたぁあ!!
うん!いいよ!素敵な名前!
精一杯同意の意思を表現する為にジャンプしたりピィピィ鳴いてみたりした。
その様子を見たノエルはふわっと抱っこしてくれた。
ミアともメレディスとも違う不慣れだけど優しい抱っこ。
この日は私の中で素敵な思い出になるだろう。
▽おめでとうございます。ステータスに追加。
種族名ケサランパサラン 固有名モリィ
作者の出てきたグッズ紹介コーナー!!
特に需要無さそうですが思いつきでやってみます。はい。
つまんねぇ!本編だけでも苦痛なのにおまけなんて見れるか!という方はパスで構いませんっ!
今回紹介するのはサラッと出てきた折り畳みの机ってやつです。
キャンプ道具として折り畳める机は見た事あると思いますが、ぶっちゃけ徒歩で旅をしている奴らがあんな大きいの持ち運ぶかって感じですよね。
異世界の技術は恐るべしって所で、スマホ並のサイズまで折り畳み可能、折り畳んだ時の厚さは十センチ程、重さはペンケース一つ分位とスーパーハイブリッドなんですね(ハイブリッドの意味は分かっていない)
治療用に使うのがメインなので、いつもメレディスがカバンに引っ掛けて持ち歩いてます。
救急箱もメレディスの担当なので比較的メレディスと団長の荷物が多くなります……。
今回はここまで!
お読み頂きありがとうございましたーー!




