新たな目覚め
新編突入です。
結構賑やかになると思います。
▽周辺に異種族を確認。目視での確認をお願いします。
ん?何よ、目視での確認?
ちょっと頭痛いんだから寝かせてよ……。
▽周辺に異種族を確認。目視での確認をお願いします。
はぁしつこいなぁ。
ちょっと位寝かせなさいよ。
▽周辺に……
……うるせぇぇぇええええ!!
頭痛と、ずっと響き続ける声。
とうとう痺れを切らした私は、思わず飛び起きた。
……っ。
勢いのまま、顔を上げると、また頭が痛む。
……って、ここどこ?
周りも見渡すと周りに天蓋の様な物が掛かっている。
多分、テント……かな?
そして、その中心に置いてある机の上に枕が一つ。
私はその上にぽいと置かれ、寝かされていたみたいだ。
なんかおまんじゅうみたいだな。
テント内に灯りの様な物は見受けられないが妙に明るい。
テント内から照らしているというより、外から光が入って来てるみたいだ。
▽推測ですが、ここは洞窟内では無いと思われます。
…………マジか。
確かに日の光って感じだ。
暖かく、久しぶりに感じる光。
でも、あの後ここに連れて来たのは誰?
よく見ると、包帯のような物も巻かれている。
傷口が大きいのに身体が小さいからほぼミイラ状態だけど。
てかあの後に、傷口って……?
……っ!
その瞬間、あの血の匂いと出来事を鮮明に思い出した。
急激に意識が醒め、身の毛がよだつ。
息が乱れた、一度死んでるとは言え、前世は呆気なくやられた分マシだったかもしれない。
だけど私は生きている。
包帯も巻かれているし、誰かが助けてくれたのか。
包帯が巻けるって事は人型のモンスターかな。
ゴブリン……とか?
でもあの状況でスラッシュベアから助けられるって中々強いよね……。
色々考えながら、途切れ途切れの息を繋いで必死に落ち着きを取り戻していると、何やら外から話し声が聞こえる。
「何やら鳴く声が聞こえたし起きたんじゃねーの?」
「だから見に行くんです。ガンツさんは来なくていいですよ?」
「いいじゃねーか。俺だって見てぇし」
聞き取れる話し声だ。しかも言語は人間語。
じゃあ外に居るのは……人間!?
起きた瞬間、いきなりやってきたトラウマ種族に、頭はグルグルだ。
どうすべきかと、頭痛そっちのけでフル回転している。
……ちょっと待って、全然覚悟も準備も出来てない。
「入るぞーーもふもふーー!」
「刺激しない様に静かに入って下さい!」
ふぎゃぁぁあああ!
案の定、天蓋の裂け目から入って来たのは人間。しかも二人。
大きくて濃い肌の男と優しそうな笑顔の女の人。
男は肌にベストをそのまま羽織り、半ズボンにサンダル、頭にはヘアバンドと、露出高めな格好をしている。
まるで、どこかの民族衣装のような雰囲気ま。
女の人は男とは正反対に殆ど肌を見せていない。
黒いシスター服のような服で全身を包んでいる。
……って色々観察しちゃったけど、こうやって人間に近づくの何年振りだって思ってるのさ!いきなり過ぎるでしょ!
神の不条理への不満を心内で叫んでいると、女の人の方が近寄って来た。
「ピギィ!ギィィイ!」
何するつもり!?と叫んだはずなのに出てくるのはホイッスルみたいな音のみ。
洞窟内で、ゴブリンの時とは違って言語が話せないっで確認した気がするな。
人間語習得した意味って何だったの……聞き取り専門じゃないか。
私の叫びも虚しく、女の人が更に近づいてくる。
あっちょっとそれ以上は近づくなーー!
……フワッ。
まだ痛む身体に鞭を打ち、牙を構えようとした時だ。
近づいて来た女の人は何をするでも無く、ただ撫でていた。
そう私の頭をひたすら撫でている。
「……わぁ、ふわふわぁ」
女の人は片手を頬に当てながら、あぁ至福〜と言わんばかりの顔をしている。
正直ミイラ状態の私……撫でて気持ち良いのかな。
とりあえず危害を加えられる事は無いかな。
多分きっとこの包帯を巻いてくれたのも、この人かこの人の仲間辺りだろう。
感謝しなくては、ほれ、撫でろ撫でろ〜フワフワで恩返しじゃ〜。
「そんなにフワフワなのか……俺も良い?」
「優しく撫でて下さいね?」
女の人とは違い、男の大きくて逞しい手が近寄ってくる。
うっちょっと怖い。爪が長かったら絶対駄目だわ。
命の恩人だし……我慢しよう。
ガシッ……ワサッグリッ。
……痛っだぁぁぁぁあああ!
本能か知らないが、痛みと同時に男の手に思いっ切りかぶりついていた。
力強過ぎ!痛い!傷口掴まないでよ!
「ちょっと強過ぎ!ああっ傷口開いちゃってる!」
「……こんな繊細なモンなのか」
そうよ!繊細なのよ!
……ってまた頭が痛くなってきた。
あぁ意識がまた遠のいてく……。
「うわっまたこいつヘニョって来てる!どうすんだ!」
「ガンツのせいでしょ!手当てするから外に出ていて下さい!」
「俺、戦力外通知!?」
うがぁ、賑やかだなっ。頭割れるわ。
不憫なガンツ(?)は早く!外に!行け!
「ごめんなさいね……よし、手当て完了!」
私の威嚇と女の人の睨みでガンツ(だと思う)を追い出し、包帯を巻き直して貰った。
前の包帯もやっぱりこの人が巻いたらしく、慣れた手つきで手当ては直ぐに終わった。
さっきまで痛かった頭も幾分かマシになった気がする。
女の人の手は良いな、なんだか温かいし落ち着く……。
ぎゅるるるっ……。
ふぁっ!?何!モンスター!?
▽状態異常空腹です。
……あっ恥ずかしい。
また自分の腹の虫をモンスターの唸り声と勘違いしてるよ。
「あらあら、お腹空いたんですね。ご飯にしましょっか」
そう言うと女の人は「準備しますね」とテントを出て行った。
沈黙が戻ったテント、何故かちょっと不安になった。
なんか人間に助けられちゃったけどさ
▽……。
私、これからどうなるんだろうね
▽……。
人間の事はどちらかと言うと信用してない……してない筈だ。
だけれど、こうやって助けられちゃうと、どうも邪険には出来ない。
……だから、しょうがないのだ。
そうやって心の内を誤魔化した。
 




