はじめての進化
▽早急に意識の回復をして下さい。
▽早急に意識の回復をして下さい。
▽早急に……
あぁもう、うるさいなぁ……。
誰かがずっと私の耳元で騒いでいる。
いや、耳元というより、もっと私に近い所だろうか。
▽状態異常毒。状態異常気絶。HP残り5。早急に意識の回復をして下さい。
あぁ頭痛いし、吐き気するし、身体は節々が痛いし、散々だ。
もう、ずっとこうして寝ていたい。という衝動に駆られる。
ううっ……。
ずっと響く声に注意を向けた事で、更に吐き気が増した。
▽状態異常毒の効果により、HP3減少。残りHP2。大変危険な状態です。早急にHPの回復をして下さい。
HP2…………HP2!?
その声で、急に意識が醒めた。
視界は霞みがかったままだが、何とか顔を上げる。
このままだと死ぬ。という事実が、何とか自分の身体を突き動かしているようだった。
▽質問確認。ケリール草の摂取でHPの回復を試みて下さい。
了解……。
私は近くに群生している草を食べ始めた。
波のように襲い来る吐き気を必死に堪える。
意識が朦朧としている中、ただ、ただ、ケリール草を食べ続ける。
食べて、食べて、食べて……。
HPが回復して来たのか、徐々に視界がスッキリしてきた。
目の前にかかっていたモヤが晴れていくような。
吐き気もいつの間にか無くなり、痛く重かった身体も軽くなった。
▽時間経過により状態異常毒から回復しました。
▽進化先「ポイズン」を開放。強制的に進化されます。
おおっ、毒から治った……!!
何とか堪えきった感動に目を潤ませた。
……って、進化?
その瞬間、身体がほんのりと熱くなった。
慌てて、よく見てみると、身体が紫色に発光している。
なんか、デジャヴな気がするのだが。
そう思っている内にも、身体の熱はどんどん増していく。
熱と共に増した光に、思わず目を瞑る。
……ん?あれ?
いきなり身体が熱く無くなった。身体の発光も止まっている。
▽進化先「ポイズン」に進化しました。
▽スキル「毒牙」を獲得。
▽進化したため、HP、MPが回復します。
▽ステータスを表示します。
現在値
パワー65
スピード800
ディフェンス258
HP 200/200
MP 300/300
ど、どうやら進化してしまったらしい。
……結構ステータスが大幅に増えてるな。
▽進化先「ポイズン」のプレビューを開示します。
天の声ちゃんの声と共に、浮いたモニターが出てきた。
そのモニターにもふもふが映し出される。
たまご色の毛はピンク色に。
背中にはコウモリの羽根みたいな黒い羽根が生えていて、白い牙は先端が紫色に染まっている。
いかにも悪魔のような見た目だ。
しかし、そのまん丸ボディと、可愛らしいピンクの毛のおかげもあり、マスコット感がある。
「ポイズン」って事は、やっぱり状態異常毒が関係しているのね。
▽通常形態に戻りたい場合はお声掛け下さい。
「ポイズン」形態では十分にMP1を消費します。
……ん?
今、聞き捨てならない事が聞こえた気がする。
「通常状態に戻りたい場合は」……って、まさか、戻れるの?
それじゃ、可愛く無いからって「ボーン」への進化拒否してた私って一体なんなのだろう。
しかし、こんな事、一度も聞いていないきがする。
もしかして、忘れてた?
▽質問確認。返答しかねます。
響いた声からは焦りを感じた。
自然と早口にもなっている。
……誤魔化す為に、今回は強制進化させたって訳かや?
▽……。
まぁ過ぎた事は仕方無し。
確かに進化後のケサランパサランを見ないなぁって思ってたのは、このせいだったのか。
あと、新しいスキルも手に入っていたはずだ。
どんなスキルなのだろう?
▽スキル「毒牙」はスキル発動後、対象に噛みつくとボーナスダメージと状態異常毒を付与します。
おお、中々強そうだ……。
ステータスも大幅に増えて、スキルも増えて、あの苦痛に見合う分の成長はできたんじゃないかな。
▽瀕死状態は危険です。これからは控えるようお願いします。
…………あっ、ごめんなさい。




