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油断は毒となりて

 本拠地に戻った私は、水場で軽く身体を洗い、帝王カエルの前に立つ。

 前世は焼いたり、干したりしていたが、手が無い私は何も出来ない訳で。

 折角、選別した香辛料も今の所は使い道が無い。


 ……生でいけるのかなぁ。

 紫色の血液が滲んでいたりと、中々グロデスクな見た目だが、見た目で判断するのは良くない。


 いただきますーー!


 手の代わりに心の中で手を合わせ、かぶりつく。


 ガブッ、ムニっ、ムニュムニュ……。


 まず、牙に当たったのは、弾力のあるゴムのような皮。

 膜のように、口に残る感じ。

 周りについている粘り気のある水分は泥臭く、粘着質なので口の中にへばりつく。

 皮は洗って、焼かないと不味い。改めて実感した。

 前世の時に作った丸焼きの方が百倍美味しい。


 まぁ、大事なのは中の肉だ。

 牙で器用に皮を剥いて、顔を出した赤紫色の肉を口に運ぶ。


 ガブリッ、グニュグニュ……ジュワァァ。


 筋肉質な肉は、筋が少し気になるが引き締まっていて美味しい。

 獲りたてだからか干し肉よりジューシーで、口の中に肉汁と共に旨味が広がる。

 帝王カエルが良く食べている「クリン」というハーブがほのかに香り、見た目に反して爽やかな味わいだ。

 中身は生でも結構いけるな……。


 粗方の肉が食べ終わると、あるものが目についた。

 赤黒く、不思議な匂いのする内臓だ。

 そういえば、内臓って食べれるのかな。

 薄い膜が張ってて、此方もグロデスクだけど、お肉もこんな見た目で美味しかったしな……。

 前世では、グロデスクな見た目が嫌だから絶対抜いてたけど。


 えぇい!食べてしまえ!

 私は勢いで、内臓にかぶりついた。


 ガブッ。グチャァ……ゴグッ。


 ……うわっ。苦いっ!不味いっ!

 周りの薄皮みたいなのを突き破ったら、苦く、血生臭い汁が、溢れ出してきた。

 ちょっと発酵臭もする。

 慌てて、吐き出したけど、口が痺れている。


 ……これ、大丈夫かな。


 ▽帝王カエルの一部の内臓には毒があります。


 えぇ!? 食べちゃったよ?飲み込んじゃったよ?


 私が何とか口から汁を取り除こうと、水場へ向かった時だ。

 グラリ、と視界が歪む。

 焦っている暇も無く、次は視界が霞み始めた。


 (あれ、地面はどこ? なんか、浮いてる?)


 浮遊感と悪寒に襲われながらも、必死に状況を探る。

 霞みと歪みも酷くなり、自分のすぐ近くしか見えなくなった頃、頭の中に声が響く。

 その声にさえ、頭痛がした。


 ▽状態異常毒。五分毎に3HP減少します。


 状態異常、毒……?

 ……ってダメージ有りかよ。

 戦闘後のHPじゃ余裕で死ねる。


 解毒剤になるパチリカ草って近くにあるかな。

 紫色のゼンマイみたいなやつ。

 前世はこれで大体は対処していた。


 ▽周辺にパチリカ草は生息していません。

  ケリール草であれば一メートル範囲内に生息しています。


 あぁ、もう少し洞窟の奥に行かなきゃパチリカ草は無かったっけ。

 このままじゃマズい、ケサランパサランをすり潰せば解毒剤になるけど、流石に仲間を潰して飲み込むのは勇気がいる。

 

 とりあえず、HP確保だ。

 足元に生えているケリール草を口につける。


 飲み込む度に吐き戻しそうになるのを、必死に堪えて食べ続けた。

 天の声ちゃんが減少HPと回復HPを伝えているけど、上手く聞こえない。

 そんな必死の抵抗も虚しく、視界全体が白みがかり、見えなくなった。

 視界を塞がれた事により、繋ぎ止めていた意識は、次第に遠ざかっていく。

 ついに、私の意識は白い光に完全に呑まれていった。



 (あれ?私、何やってるんだろう。 眠いし、もう、寝ちゃおうかな)



 ▽状態異常気絶。意識の混濁も確認。

  状態異常毒の状況では大変危険です。早急に意識の回復を……

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