再戦
よし、大体選別出来たな。
あの後、家へと戻った私は食べれそうな食料と、駄目になった物の選別をしていた。
粗方が荒らされ、食べれなかったが、香辛料の一部等は幸い無事だ。
よく、帝王カエルの料理にも使っていた香辛料も残っている。
そろそろ、HPとMPが全快する頃だ。
今度こそ、私の晩餐に帝王カエルが並ぶだろう!
作戦としては、まず本格的に相手の動きを止めたい。
それで考えたのは、土と土でのサンドイッチだ。
「波おこし」で地面を動かし、バランスを崩した所に、さらに「サーフィン」から飛び降りて、土を被せる。
そうする事で、より相手の動きを封じる事が出来るという訳だ。
そして次に、喉を引きちぎる。
「獣の咆哮」の怖さを思い知ったからね、あれは潰しておきたい。
戦闘中に使われたら、本当に堪ったもんじゃない。
さて、帝王カエルを探しに向かおうかな。
今回もMPが勿体無いので、歩き移動だ。
……おっいたいた。
歩いて移動すること十五分。
帝王カエルが前と同じ茂みの所でゴマコオロギを食べている。
私の殺意に気づかず、もそもそと食べ続ける姿は何とも呑気なものだ。
私は背後から忍者のように忍び寄る。
気付かれない事が第一だ。
そして「波おこし」を発動。
相手の下の地面がボコボコと音を立てながら揺らぐ。
帝王カエルの身体がぐらりと傾き、明らかにバランスを崩した。
よし、ここまでは計画通りだ。
その隙を逃さず、すぐに「サーフィン」で波に乗る。
滑るように波を操り、相手の真上で飛び降りる。
「サーフィン」の使い方もだいぶ慣れたものだ。
波から戻った土が、雪崩のように、容赦無く帝王カエルへと降り注ぐ。
もがいている手足を土が次々に封じ込めていった。
「ゲェェガァァァァ」
土に押し潰され、帝王カエルが苦しそうに呻く。
ガブッ。
その声さえも潰すように、私は喉へと噛み付いた。
帝王カエルのヌメッとした感触が牙に伝わってくる。
しかし、これも二回目だ。
もう狼狽る事は無い。
もがく相手に、噛み付く私。
空気がピリッと変わった。
すると、視界に突然大きな影が映った。
その瞬間、頭に強い衝撃を受ける。
ぐらりと歪んだ視界を必死に戻しながら、相手に噛み付き続ける。
次々に飛んでくるのは相手の馬並みのキックだ。
蹴られた箇所から身体に痛みが広がっていく。
後ろにのけ反りそうになるのを必死で堪えつつ、離したら死ぬ。と言わんばかりに噛み付き続けた。
毛が綿毛の様に飛び散り、赤いモノが視界の隅に映った。
広がる血の量に、背筋が凍る。
どうも、血が滲むのは慣れなかったようだった。
……狼狽ては駄目だ。今は痛みなんて気にするな。
そう、自分に言い聞かせ、相手を睨みつける。
そして、噛み付いたまま、全身を使って、後方へと引っ張った。
ゴム質の喉袋が伸び、今にもはち切れそうになって
とりゃぁぁぁぁぁあああ!
その瞬間、破裂する様に喉袋が千切れた。
紫色の血液が雨のように、辺りに降り注ぐ。
それでもまだ動こうとする帝王カエル。
喉を潰され苦しそうにしている顔面を、容赦無く噛み砕いた。
断末魔もあげること無く、火花のように紫を散らしながら、ついに帝王カエルは動かなくなった。
▽帝王カエルとの戦闘に勝利。経験値を獲得。
▽残りHP20。敵襲には気を付けて下さい。
▽残りMP25。使い過ぎにはご注意下さい。
▽戦闘、お疲れ様でした。
……ふぅ、作戦は成功かな?
前回より、かなり余裕を持って戦えた気がする。
私の目の前には仕留めたてホカホカの帝王カエルが転がっている。
周りに広がる紫色のドットは、ちょっとした勲章だろうか。
転がる帝王カエルを、頭に乗っけて、本拠地へと運ぶ。
割と私の頭の上は安定感があるのだ。
まぁ、折角の御馳走だからね、安全な所でゆっくり食べたいよね。
鼻歌を歌いながら、私は本拠地へと戻った。
この身体で鼻歌を歌っても、「ピィピィ」としか鳴らないんだけどね。




