目覚めたら、今世
初のファンタジー物の連載です!
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あぁ、眠い、身体が重い。でもそろそろ起きなきゃまた変人扱いされそうだしなぁ……起きるか。
そう私が起き上がろうとすると、天井のような物に頭を打ち付け、後頭部に強い衝撃が走る。確かに私の家はお世辞にも広いとは言えないが、流石にここまで天井は低くないぞ。
慌てて目を開けて周りを見渡してみるけれど、目を瞑ったように、暗いまま。とりあえず、手当たり次第に動いてみよう……って、手が、無い?……嘘、足の感覚も無い。リアル過ぎるけれど、まだ夢の中とかかな。
とりあえず今の状況を確認しなくては、でも確認するにしてもどうやってするべきだろう。夢オチ確認の際のお定番、「頬をつねる」も出来ない訳ですし。
もう面倒臭い、身体でタックルしちゃえ。
完全に思考放棄し、物理での解決を試みる。例えここが夢の中だとしても、この忌々しい低い天井を突き破ってやりたい。
全身を使い、身体を動かし闇の中に突っ込む。天井に突き当たったが、先程とは違い一部変化が起きている。
天井に何やら、ヒビが入っていた。ヤケ気味に天井に突っ込んだのだが、本当に破れるんじゃないか?この天井。
少々ヒビを観察してみると、ヒビにそって、ジグザグ模様に光が漏れている。どこかで見た事のある模様だなと思ったら、確かたまごに入ったヒビがこんな模様になっていたはず。
とりあえず、もう一度、タックルしてみよう。
また一段とヒビが大きくなり、それに伴ってジグザグ模様も大きくなる。案外、楽しいかもしれない。
……って、うわぁぁあ……眩しいっ!
いい気になった私が三回目のタックルをすると、唐突に身体が宙に投げ出された。衝撃と共に、目には溢れんばかりの光が差し込んでくる。いや、刺し込んだといってもおかしく無いほど、目が痛い。
空中でもがきつつ、プチパニック状態の私に、二度目の衝撃が訪れた。今度はお腹への衝撃だ。そのまま安定しているという事ばどこかに着地出来たのだろうか。幸い、胃袋には何も入ってないらしく、吐き気とかは大丈夫だ。
しばらく瞬きを繰り返していると、ようやく光に目が慣れてきた。どうやら、さっきのは本当にたまごだったらしい。私の足元には殻の残骸が落ちていた。
とりあえず、今度こそ状況確認といこう。
まず、目に入ったのは自分の身体。スライムに毛を生やしたみたいな、たまご色のもふもふ……以上。
凄い、ゴミがつきそうだ。埃取りの先端につければ掃除に役立ちそうなレベル。しかも口が下に付いている。丁度地面と面している所なので、移動と共に土を食べちゃいそうだ。でもこの見た目、どこかで見た気がするんだよなぁ。
次に目に入って来たのは、周りの風景。寝る前と変わらず、洞窟内なんだろうけど、私の周りだけ妙に明るい。ふと、上を見てみると赤い鉱石のような物が、壁やら天井やらに所狭しと並んでいる。確か炎結晶だなんて名前だった筈。明るくて便利だけど触ると大火傷という身近に潜む危険物質だ。
そして、最後に目に入って来たのは、自分と同じような色とりどりのもふもふがすし詰めになっている様子。沢山集まると中々気持ち悪い。よく見ると、ピンクや水色とお子様に人気そうなカラーもあれば、緑色のもふもふもいる。緑色とかカビにしか見えないんですけどね。
周りにたまごの殻が散乱してる所から、私の兄弟ってとこか。その兄弟達が、何かに群がっている。
やぁ、兄弟諸君。何をしてるん…………え?
兄弟達に近づいた私が見たのは、兄弟達の捕食風景。
別に兄弟達のもふもふの毛に隠された鋭い牙に驚いた訳でも無いし、お食事マナーが悪い訳でも無い……良くも無いが。
注目すべきは、その食べてる物だ。
兄弟達がその牙で、もりもり食らいついてるのは、緑色の肌、尖った耳、廃れた腰蓑、そして胸には青いペンダント……いや、ペンダントは血で濡れ、赤く染まっているが。つまり血を流しながら倒れているゴブリンに、兄弟達が食らいついている。
そして、ペンダントの元の色が分かったかって?
これ、私の前世だ。
予想外だ、予想外すぎる。あぁ夢オチじゃなかった、こんな確認の仕方嫌過ぎる。おはようみんな、目覚めた先には前世の私、兄弟に食べられてます。あぁ神よ……自然の摂理よ……無慈悲な……。
それだとこのもふもふは私の次の身体になるって事だ。昔からゴブリンの中でも囁かれていた、前世の記憶を持ち、生まれ変わるモンスターが稀にいるって噂、本当だったのか。
私が心の中で大騒ぎしている内にも、前世の私ーー目の前のゴブリンはどんどん兄弟達の胃袋へと格納されていく。ころっとした見た目をしておきながら、恐ろしい食べっぷりだ。
ふと、兄弟の一人が、ペンダントを飲み込もうとしているのが目に入った。前世の身体が食われようとも自然の摂理だと諦められるが、あれだけは渡せない。慌てて私は飲み込もうとしてた兄弟にタックルする。転生してからタックルしかしてないね、私。
その瞬間、口に何やら固い物が入ってきた。飴玉のように口の間で転がっていく。飴玉を舐めずに飲み込む癖のあった私はついそれを反射的に飲み込んでしまった。
▽スペシャルアイテム「青龍の石」を獲得。ーー摂取完了。
▽「青龍の石」と「種族名ケサランパサランL v1」との合成を開始します。
突然、頭の中に声が流れた。少し落ち着いた女性の声。前世からお世話になってる天の声ちゃん(私命名)じゃないか。ご無沙汰しております。前も「レベルアップしました」とか言ってくれてたね。
天の声ちゃんの声で少しずつ落ち着いてきた私は、先程頭に流れた音声を思い出す。種族名ケサランパサランという事は私ケサランパサランに転生したのか。ケサランパサランというとあのモジャモジャバージョンのスライムか。洞窟内でもしょっちゅう見かける。比喩では無くまん丸ボディな為、通りで手足の感覚がない訳だ。ケサランパサランかぁ、すり潰せば解毒剤になった気がする……モジャモジャだから口当たりは最悪だけど。
改めて自分がその立場に立つと実感するけど、本当にケサランパサランって名前で良かったよね、緑の子が最初に見つかってたら、下手したらカビスライムとか付きそうだもんね。第二の人生がカビとか嫌よ。ただでさえ前世がゴブリンだってのに。
そういえば、聞き流してたけど、そういえば摂取完了って何だ。ゴブリンの時は獲得はあったけど摂取なんて無かったよ?青龍の石ってペンダントにしていた石の事だよね。あれって、結構大事なのだけれど、これって大丈夫か。
そんな事を思っていると、何やら身体が青色に発光にしている、身体もほんのり熱を持ってきた。
……何これコワイ。
未体験の感覚に全身の毛がゾワっと立つ。私が震えている間にも熱さと光がじわじわと額の方に集まり、額にデコピンされた時みたいな衝撃が走った途端、熱さも光も収まった。
▽「青龍の石」と「種族名ケサランパサランL v1」の合成が完了しました。
▽スキル「青龍の咆哮」を取得。L v40で解放。
▽スキル「サーフィン」を取得。現在使用可能。
▽ステータスの内、スピード、MPが強化されました。
合成って、まさかの石とがっちゃんこ……?
スキルも増えてるけど、とりあえずどうでもいい。丁度良い所にあった近くの水たまりに、自分の姿を映して見てみる。水面に映ったのは、たまご色のもふもふに、鋭い牙……額にはペンダントの青い石がはめ込まれている。この青い石はご丁寧に綺麗に磨かれていた。
……って、カーバンクルかよ。