第八歩
引っ越し等いろいろあり、前作から期間が空いてしまいました。
初作品ともあり大切に作っているつもりですが、出来るだけ時間を掛けず描きたいと思います。
この施設では教会を兼ねているため、食事の際にはその食材に感謝を示すために身体の前で手を組み、それぞれ祈りのようなものを唱える。
その時に自分の中で決めた神様にそれぞれ語りかけるというのがこの教会でのルールだ。イエス・キリストでもなくブッダでもなく、一人一人が決めたそれぞれの神様に祈りを捧げる。
Mは毎回女神のような人物を思い浮かべる。しかし、顔だけがいつもイメージできなかった。
3分間に渡るお祈りが終わり、テーブルの中央にいる子供達の父親代わりを担っている牧師が手を合わせ、
「頂きます」
と言う事で皆んなが手を合わせ
「頂きます」
と料理を食べはじめる。
Mは向かいに座っているFの事を気にしながら料理を食していた。
「何?なにかついてる?」
「いや、やっぱり春巻き美味いなと思って」
ちょっと見すぎたかもと反省した。
「でしょ!私は調理師免許も持ってるんだから、料理には自信しか無いわよ。」
「シスターが調理師免許ってなんか違和感があるような。」
「なによ、美味しい物食べれるんだからいいでしょ、そんなこと言ってるとご飯抜きだからね!」
「ごめんなさい!」
Mとシスターの会話で食卓が和み、Fも柔らな笑顔を見せている。MはFが笑うたびにその笑顔の虜になっていることを自分でわかっていた。
食事も終わり子供達は若い順からお風呂に入っていく。幼稚園児組が終わり、MとFの順番になった。
いつもは行動が早いFが先に入って、面倒くさがりのMが後に入るが、今日ほどドキドキしたお風呂はMにとって初めてだった。
「Fが入った風呂に俺も入るんだよな。」
今までそんな事は一切思わなかったのに、好きになっただけで気持ちは変わりすぎる。
Mは心の中で必死に自分に言い聞かせた。
「いつもの事だろ、普通、普通。変に意識すると変態って思われてしまう!」
必死な考えを巡らせているMを横目で不思議そうに見ながらFが風呂場に向かっていく。
そうこうしてるうちにFが風呂場から出てくる、肩くらいまで伸びた髪をシットリとさせタオルを肩にかけながら歩いてくる。Mの横スッと通り過ぎていく。
「やばい、メチャクチャいい匂い。」
今までと同じシャンプーを使っているし、自分もこれから同じ匂いになるのに、Mは変に心拍数が上がっていた。
Mはこの匂いが一番好きな匂いになった。
無駄に緊張したお風呂を終え、Mは髪の毛を勢いよく素早く乾かして宿題をやる準備をした。Fは先に宿題を終えたらしく、ちびっ子どもとブロックで遊んでいた。
「くっそ。。あのちびっ子どもー。こうなったら早く宿題終わらして、俺も遊びに混ざってやる。」
いざ、意気込んで宿題を始めて3分で諦めモードに入った。
「なんだよこれ、わけわかんないよ。」
Fにはわからない事を聞いてと言われていたがカッコ悪いとFに思われたくなくて、あえて聞かずにいた。
「くっそ!わかんねえ!もう、どうにでもなれ!」
Mはやけくそになり、わからない問題は勘という1番自分の中で信頼できる物に頼った。後にその宿題が案の定間違いだらけであったことはMはまだ知らない。
「終わったー!!」
Mはようやく宿題を終わらせて遊びに混ざろうとしたが、思ったより時間がかかってしまい子供達は皆、部屋に戻ってしまっていた。
「俺の神様。もう祈ってやらないからな。」
Mは心の底から泣きたくなった。
読了頂きありがとうございます。
この話を書き始めて、少し初恋を思いだしました。
「本を好きな全ての人に幸せな日々を。」