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世界の果てに立つ木

目を開けると、窓の外から子等の集まり騒ぐ声がする。



このちかくで、何かの花が咲いたらしい。子等はそれを手折りに行くのだ。



自分も行こうと思い立ち、起き上がって、ゆるゆると身支度をした。




表に出るころには、子等の声はだいぶ遠のいていた。

すでに花を手折ったのだろう、金銀の粒がはじけ乱れるようなはしゃぎ声があがっている。



「これは我の次のいのちの贄になるもの。もう生かさぬぞ」


「これも、これも、皆潰す」


「弱きものを屠るもののみ生きるのだから」


「弑逆するも良いものぞ。あれは素敵だ。心が躍る」


「根も茎も蹂躙せよ。こちらも、あちらも、すべて」



騒ぎ踊る子等の手は、ちぎり取られて息絶えた花々からしたたり落ちる紅色の血で染まるけれども、すぐにそれは、命とはほど遠い青鈍色(あおにびいろ)へと変わっていく。



「命が足りない。世界の果ての木よ、花を寄越せ、もっと咲かせよ」



子等は花の残骸を踏みしだきながら、日の沈む方角に向かって罵り続けたけれども、花が増えることはなかった。日暮れとともに、子等の身体は朽ち果て、闇へ吸われて消えた。



朝日がのぼるころになって、枯れ草の陰に隠れるようにして、ひっそりと、一輪の花がひらいた。



浅い根ごと掘り起こし、両手ですくい上げると、花が言葉をつぶやいた。



「なまえが、わからない」



育てたら、わかるようになるのだろうか。


おそらくは、わからないままだろう。この決して終ることのない、世界の果ての木のある地平にたどりつく命のかけらは、自らを持たないものばかりだから。あの妄執の子等も、そして自分も。



わからない。

おわらない。

はじまらない。

なにもない。



窓辺に据えた鉢の花にむかって、そうささやきつづけていたら、花が、ふっと笑った気がした。





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