表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/9

俺がこの仕事を全うするにあたっての心持ちについて



小さい方は明らかに就学年齢に至っていない幼女。彼女の手を引く少年も小2くらいだろうか。



盆は過ぎたが茄子の牛と、胡瓜の馬をこさえてやった。


少年と幼女はニッコリ笑って、「ありがとー」と喜んだ。


そして幼女が尋ねてきた「お兄ちゃんは八百屋さん?」


「ちがうよ」


「スーパーの人?」


「ちがうよ」


幼女は首をかしげる。代わりに少年が尋ねてきた。


「じゃあ何屋さんなの?」


「働いてはいるけど、これといった屋号はないね」


「やごう?」


二人揃って首を傾げる。少しいぢわるをしてしまった。


「よくお聞き。茄子の牛はゆっくりと歩く。まったりまったりと、来た道を何度も振り返りながら進めるようにね。胡瓜の馬はとても速い。ぱからんぱからんと、行きたい所へひとっとびだ」


二人はうなずく。わかったような、わかってないような。とにかく続けた。


「茄子の牛を選ぶといい」


「どうして?」と尋ねる二人に言った。


「君たちの、パパとママの為にだよ。」


そして足下を指した。二人は俺の指した方角へ視線を移すと。


「ママ! パパ!」


嬉しそうに叫んだ。


血まみれになりながら泣き崩れる男女が空を見上げ、幼女と少年を見つけて目を見開き泣き叫ぶ。


「茄子の牛の手綱はひいてやるから、前は見なくていい。ずっと手を振っておやり。見えなくなるまで」



これが何を意味するのかわかってるのか、わかってないのか。幼女と少年は言われるがままに手を振り続けていた。



命はあっという間に尽きる。


故に儚いのだ。別れを惜しみながら最後を迎えられる者など、どれだけいようか。


生き物の領分にいるうちは、何もしてやることはできないが。 黄泉路に入ったなら気休めくらいはしてやりたいのが人情だろう。


怨みつらみは受けて候。それで気が休まるならば。

代わってやることはできないから、お前じゃないから。

つらさはわかるが、代わってはやれない。お前じゃないから。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ