追加EP#2 心配症な少女と傷だらけ冒険者
内容が薄いのと、時間が連続してるわけじゃないので2話投稿
今現在、やや特殊な客人がいる部屋の扉を控えめにノックする。起きていれば気づくだろうし、寝ていれば気づかない程度の音。まぁ職業柄、小さな物音でも聞き逃さず飛び起きるかもしれないが。
起きているならば、朝食を。まだ寝ているようであれば、そのまま寝かせてあげよう。
「どうぞ」
返ってきた返答により、行うべき行動は前者。いちおう体調確認のため、一度部屋に入る。
「おはよー」
「ああ、おはよう」
部屋の隅のベッドで上半身のみ起こしている存在。
彼の名はディード。数日前、街の外で倒れているのを発見し、介抱することにした青年だ。
ディードの意識が戻って、幾日か経過した。
今日も、顔色がいい。体の調子はよさそうだ。
簡単な確認の後、一応本人にも確認。
「気分はどう?」
「大丈夫だ」
「痛むところは?」
「まだいくつか動かせば痛い箇所はあるけど、激痛ってわけじゃないな」
「そう・・・・ならよかった」
彼自身の口から聞けて安心する。
もうこれ以上、自分の知っている人が死ぬなんて嫌だ。
寿命で亡くなるのなら仕方がない。でも、自分の手が及ぶ範囲で、助けることができるなら、絶対に助けたいと思った。
彼は戦闘職の一つ、『冒険者』にその身を置いている。
つまり、狩りなどで生計を立てているということだ。
彼の話から察するに、ディードは強い。一人で魔獣の群れを壊滅させたこともあるらしい。
それに、彼が自分の仕事のことを話すとき、後悔の念にとらわれているようで、たまに暗い表情になったが、どこか生き生きとしてもいた。
おそらく、ディードは狩りが好きなのだ。例え死にかけても、その感情は勢いを止めていない。
何日もベッドで寝たきり(私が出さないのもあるが)になっている彼だ、そろそろうちを出ていくなどと言い出しかねない。
「なぁ・・・・フィー」
何か言いたそうにしている気がしたが、それを遮って朝食のメニューを伝える。
「今日はシチューを作ったよ。朝からだけど、食べられる?」
「ああ、うん。それくらいなら。・・・・で、フィー」
何か言いかけた気がしたが、それを遮って質問する。
「他に何か食べたいものある?」
「いや、別に。・・・・なぁ、フィー」
何度遮っても食い下がってくるので、一度言ってやることにした。
「駄目だよ?」
「へ?」
何を駄目だしされたのか、それがわからないらしい傷だらけの冒険者は、頭に疑問符を浮かべた。
まったく、無茶な人だ。そろそろ禁断症状でも出てくるのではなかろうか。狩りに行けないストレスで。
「まだ、傷が完全に癒えたわけじゃないんだよ?自分が一番わかってるでしょ?そんな状態で依頼なんて受けたら、今度こそ死んじゃうよ」
「・・・・はい」
「私は、私が知っている人が目の前で死ぬのも、どこか見えないところで死ぬのも嫌なの。助けられるものなら助けたいの。死んじゃう可能性が高い人を、わざわざ死んじゃう可能性が高いところに送り出すわけにはいかないよ」
「・・・・」
「ディード、私はあなたを心配してるの」
押し黙るディードへ、最後に何言か付けたせば、
「・・・・すみませんでした。もう少しだけお世話になります」
彼は頭を下げる。よろしい。
「いくらでも、いていいんだからね」
「それはちょっと・・・・」
「いていいからね」
「・・・・はい」
これが、最近新たに加わった私の習慣。
外へ飛び出したそうにしている傷だらけ冒険者を、引き留める習慣。
もうすぐ終わりが見えそうで、少しさびしいけれど。