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冒険者と少女  作者: 某某
2/8

EP#2 抜け殻冒険者と、肉好き少女

徐々に展開していく、という風な物語を書くのが苦手な僕です。

というか、どんな物語だろうと書くの苦手な僕です。ホントにジャパニーズピーポーかってくらい語彙力が崩壊してます。

「来てしまった・・・・」


大通りから少し外れた場所にある、とある店。

そこは、彼女が切り盛りする、花屋だった。


「流石に女々しいよな、俺・・・・」


今の自分の心境を口にだし、己を情けなく思う。

フィーには好きな人がいるのだ。しかもそいつは、凄腕の冒険者で、異名持ち・・・・それも俺と同期だという。

そんな相手に、自分がかなうわけもないし、挑もうとも思えない。

フィーの家を出てから、3週間ほど経過していた。

それでも、諦めきれないし、胸の痛みは続く。

本当に、どうしたらいいのやら。


「でも、やっぱり諦めきれねえなぁ・・・・」


情けない。本当に、情けない。

諦めきれないと言いつつ、告白することもできない自分の弱さに苛立ちを覚える。

ここ半年間、こんな風に自分の弱さを痛感する、ということは一度だってありはしなかった。

最初は恐怖すら抱いた魔獣相手に、ちぎっては投げ、斬っては裂き、滅しては滅しつくした。

つねに自信に満ち溢れ、挑戦し続けた。

到底かなわない相手にだって、挑んだ。――――その結果、死にかけた。

いや、死にかけたのではない、俺は一度死んだのだ。

フィーに助けられ、そんな己の状況を把握した時点で、俺の中からは既に慢心とも言えた異常なまでの自信が抜け落ちていた。

もう、以前のように盲目的に戦うことができない。戦闘狂だった己の大部分は、死んだ。自分の現在の限界、力量を悟ってしまった。

それは、大きな収穫とも言えるし、大きく取りこぼしてしまったとも言えた。

以前のままの自分だったなら、いつまでもうじうじせず、彼女の想い人にだって果敢に挑めた。

だから、だからこそ痛感する。


「来ちまったんだし、顔くらい見に行ってもいいよな・・・・」


こんなことを弱弱しく口にする俺の中にはもう、以前までの俺がいないのだと。

今ある俺は、多くを失った、抜け殻だと。




店内に入る。

外の出で立ちは、周りの店に埋もれてしまうほど地味だったその店は、外装より、内装を優先したらしく、なんだかファンシーな雰囲気に包まれていた。


「いらっしゃいませー・・・・ってあれ、ディード?久しぶりだね!」


「・・・・おう」


力なく答える俺に、疑問符を頭上に浮かべ、首をかしげるフィー。

なんでもない、という風に苦笑する俺を見て、ならいい、という風に微笑む彼女。

頼む、この場所にいる間だけでいい、俺に虚勢を張らせてくれ。

誰に願っているのか自分でもわからなかったが、それでも俺は抜け殻と化した自分の中に、無理やり中身を詰め込んだ。

・・・・気を取り直して。

エプロン姿で、花に囲まれて微笑む彼女は、女神か天使か。


「どうしてここがわかったの?私、言ってないよね」


「ああ、いや・・・・」


「?」


言いたくない。

『この街の花屋って、どこにあるか知ってるか?』

『あ?んなこと聞いてどうするんだよ』

『まあ、その・・・・行きたいから』

『は?・・・・ぷっ、ぎゃははははははははは!!!!おま、おまえぇ・・・・ぶっ、は、花屋・・・・?お前、が?ぎゃははあははははははははにあわねえええええええええええ!!!!!!』

『・・・・』

シルに花屋の場所聞いて、大笑いされたなどとは、言いたくない。

奴のことを魔獣並みに殺してやりたいと思った瞬間だった。そして、それでも殺さなかった俺の自制心を褒めてほしい。


「まあいいや。聞かないでおいてあげるよ」


「・・・・そうしてくれると」


「それで、何をお求めでしょうか?お客様」


そんな彼女はいつの間にか、やけに輝いた笑顔を顔に貼り付けていた。営業スマイルというやつだろうか。


「あ、いや、うん。ほい、これ。渡しに来たんだ」


「?」


フィーに持ってきた包みを渡す。

またまた疑問符を浮かべ、それを受け取るフィー。


「なにこれ」


「開けてみてくれ」


「・・・・りょーかい」


中身は何ぞ、という彼女はゆっくりと包みを開ける。

すると、中からそこそこ新鮮そうな肉が出てきた。


「へ、これ・・・・」


「コマイノの肉。たまたま群れ見つけたから成体共々殲滅して取ってきた」


「た、たまたま・・・・?殲滅・・・・?」


「おう」


恐ろしい物を見たような表情で俺を見る少女。何かおかしいことを言っただろうか。

ちなみに、『コマイノ』とは、魔の猪の幼体。その略称だ。

子供の魔のイノシシ→子魔のイノシシ→子魔イノ→コマイノ、といった感じで、大抵の冒険者にそう呼ばれている。

普段は依頼以外の狩猟を街の外で行うことは(食糧調達してた以外)ほとんどないのだが、ふとフィーに出された料理を思い出したのだ。

彼女の料理には、コマイノの肉が多用されていた。

つまり普段から、コマイノの肉を多く保管しているということで――――、


「だって、好きだろ?コマイノ肉」


「え!?何でわかったの!?」


驚いた表情のフィーを見て、よし当たった、と心中でガッツポーズ。


「だって、出してくれた料理によく入ってたし。魔獣の肉は結構値が張るのに、たくさん持ってるってことは好物だからあえて買ってるんだろうな、くらいには予測できる」


「へー・・・・!よく見てるんだねぇ」


まあな、とさも当然のように言う。

なぜなら、俺は冒険者だからである。

冒険者は、魔術師などの職のように特定の動作、詠唱によって特殊な事象を起こすなどの、職種による能力補正を持たない。

それゆえに、己の身体能力、運といった生まれながらの武器のみで戦わねばならない。

だが、能力補正はないが、多少の『限界の引き伸ばし』が効く。

というのも、冒険者の職に就くものは、身体能力の向上が、常人に比べ恐ろしく早い。

そして、依頼をこなせばこなすほど、体はより頑強、己の戦闘スタイルに合ったものに変化していく。

そうして時を重ねると、稀にもはや人とは呼べないほど脚力に秀でたもの、筋力に秀でたもの・・・・というように見た目は普通の冒険者でも、身体能力的に『化物』が生まれることもある。

その異質さゆえ、冒険者は一部の者には人外職、などと呼ばれていたりする。

俺の場合、剣を中心に体が変化してきている。

剣を扱ううえで、己がしたい動き、しようとした動き、そしてそれらを補助する動き・・・・。

それに合わせ、体はより俺のイメージに合ったものに変わっていく。

その過程の一つとして、俺の目はいろいろ便利になっただけのことだ。

だが、あまりにも無茶なものを目指すと、体が変化に耐えきれず、壊れてしまったりする。

例えば昔、ずっと眠らずに狩りができればさらに金が稼げる・・・・!などと考えた者がいた。

その者は、周りの静止を振り切り、あの手この手を使って、何日も、何日も徹夜を繰り返した。

体に、その行動を馴染ませ、眠らずとも生活できるように変化させるため。

――――結果、その者は死んだ。

その後も、何も食べずに生きられる体を目指したものが死に、痛みを感じない体になろうと、己に拷問にも等しいことをした者もまた、死にはしなかったが、精神の方が過程で耐えられなくなり、廃人になった。

以来、体に完全に刻まれた習慣、性質を変えるのは禁忌とされている。

ほとんどの場合、体、または精神が耐えられず、死に至るか、死んだも同然の状態になるためだ。


「・・・・でも、これは受け取れないよ」


苦笑を浮かべ、包みを俺に返そうとするフィー。


「なんでだ?それ、好きなんだろ?」


「うっ・・・・ぅ。す、好きだけどっ!大好きだけどっ!嬉しいけどっ!そこそこ高いもんこれ!そんなもの、ただでもらうわけにはっ・・・・!」


どうやら、己と葛藤しつつの判断だったらしい。

だが、彼女の喜ぶ顔が見たくて群れを殲滅した身としては、受け取ってもらいたいものだ。


「じゃあ、命の恩人へのお礼の品、って事じゃあだめか?」


「へ?」


「あーあ。恩人に報いたいなー。なのに、受け取ってもらえないなー」


「うぅ・・・・卑怯だよ、それぇ・・・・」


「じゃあ、受け取ってもらえるか・・・・?」


「でも・・・・」


「あーあ。恩j」


「もう!わかったよ!もらうよ!もらえばいいんでしょ!?」


「ありがとう」


にっこりと気持ちの悪い笑みを浮かべて礼を言う俺を、フィーは不機嫌そうに睨みつけた。

その手にしっかりと、肉の包みを抱いたまま。

なんだかんだ嬉しいんだろうな、と思いながら俺の頬は綻び、笑みはさらに気持ちの悪いものになっただろう。








「それで、何をお求めでしょうか?お客様」


「何をって・・・・そういえばここ花屋だったな、うん」


「そういえば!?忘れないでよ花屋だよ!?」


気を取り直して、といった様子でフィーが営業スマイルを浮かべた直後、俺の発言でその表情が崩れて驚愕の色に染まる。うん、あんた接客業向いてないじゃないかな。


「それにしても、花か・・・・何買うか考えてなかったな」


「本当に何しにきたのディード・・・・」


「フィーを喜ばせたくてコマイノ渡しに来た」


「もう予定を完遂している・・・・!?」


「いやいや、それ以外にも花買って売り上げに貢献しようと思って来たんだぞ?」


「ふーん・・・・?」


忘れてたくせに、と視線が物語っていた。こちらはこちらで視線が泳ぐ。

ともかく、忘れてたとはいえ、当初の予定では花も買おうと思っていた。本当に。

以前、フィーは店がうまくいっていない、と言っていた。生活できているということは、そこそこ売れているのだろうが。

――――もしかしたら、両親の代の頃の売り上げと、比較しているのかもしれない。

代が変わったばかりなのに先代と比較しても意味がないと思う。それでも、比較してしまうのならば。

その売り上げに少しでも近づくように、後押ししてあげたいと思う。だから――――――、


「じゃあ、店で一番高い花を出してくれ」


「はい、少し待ってて・・・・ん?ちょ、ちょっと待って!?」


「どうした?」


「どうしたじゃないよ!?一番高い花!?本気!?」


「おう」


「え?えぇ・・・・?け、結構高いと思うよ?そんな無理しなくても・・・・」


「いやいや」


「いやいやいや・・・・」


「いやいやいやいや」


「いやいやいやいやいや・・・・」


高い花を買おうとする客を、なだめようとする店長。やっぱりおまえ接客向いてないよ、うん。

でもまあ、値段がどれくらいか知らずに買おうをするのは確かにまずかった。


「じゃあ、どれくらいの値段なんだ?」


「えっとね・・・・」


ごにょごにょと、耳打ちしてくる。

くすぐったい。でも、悪くない。いや、恋する相手に耳打ちされているのだ、幸せである。

閑話休題、それは置いておいてだ。

その値段を聞いて、俺は青ざめた。


「ご、ご忠告、ありがとうございました・・・・」


「・・・・どういたしまして」


今の俺には、痛すぎる出費だった。

後々、そんな花買うやついるのか、と聞いてみたところ、両親の代からのお得意様が買ってくれているらしい。

そんなわけで、俺にとってそれほど痛手でもなく、店にもそこそこ売り上げが入る花を買わせていただいた。

花の値段、恐るべし。




「ありがとうございましたー!」


「おう」


精一杯の営業スマイルで送り出される。今更遅いのではとは思ったが、言わないでおこう。


「あ、そうだ」


「どうした?」


「その・・・・なんだか催促してるみたいでごめん、なんだけど、さ」


「・・・・?」


「『死を呼ぶ新参者(レッドルーキー)』のこと、何か、わかったり、した・・・・?」


「っ・・・・」


まずい、虚勢が剥がれる。咄嗟にそう悟って、俺はフィーから顔が見えない方向を向いた。

そして、嘯く。


「ああ、いや・・・・。新しい情報は、出て、来なかった、な・・・・」


これは、嘘だ。彼女とあいつを会わせたくない、そんな俺の身勝手な感情から来る嘘だ。

本当は、シル辺りに聞けば、何かしらわかったかもしれない。身体的特徴なり、本名なり。

そこから本人特定をかけることだってできるはずだ。できたはずだ。

でも、しなかった。したくなかった。自分がかなうわけもない、挑もうとも思えない、なんて考えながら、彼女があいつにたどり着くのを阻止している。

本当に情けない、醜い感情だ。

そんな俺の心中など知る由もないフィーは、


「・・・・そっか。うん、ありがとう!」


少しの間、彼女の声の調子が残念そうに沈んだのを感じた。

胸が、抉られるようだった。


「・・・・じゃあな」


「うん、またね。死なないでね」


短く言い残すと、彼女もそれに答え、最後に以前と同じ言葉を口にした。

『死なないでね』・・・・両親を失った少女の悲しみが詰められた言葉。

普段は努めて明るく振舞おうとしているのだろう、その分だけ、その言葉に重みを感じた。

孤独な少女。フィーと『死を呼ぶ新参者(レッドルーキー)』を会わせたら、悲しみに蝕まれた彼女も、少しは救われるのだろうか。

などと考えていると、より自分の醜悪な感情に嫌悪感を抱いた。



店を出て、そのまま大通りには出ず、一目のつかなそうなところへ向かう。


「・・・・耐え、抜いた」


その呟きで、剥がれかけていた虚勢が完全にとれたのを感じた。

俺は、普通に彼女を接することができたのか?

それで、俺がささやかな幸福感を得られたとして、彼女の方はどうだろう?

喜ぶ顔がみたい、店の売り上げに貢献したい・・・・つまり、俺は、彼女に幸せになってほしいということだ。

なのになぜ、一番の幸せであるはずの、『死を呼ぶ新参者(レッドルーキー)』との対面を実現してやらない?

なぜ、彼女から、あいつを遠ざけようとする?

なぜ、彼女をがっかりさせるんだ?

なぜ、俺は、彼女とあいつを会わせたくない・・・・?

なぜ、なぜ、なぜ、なぜ―――――――――?

答えは、とうに頭に浮かんでいる。


「俺は彼女が、フィーが好きだからだ」


けれど、その感情が、彼女の幸福を遠ざけるのならば。

彼女の幸せを、邪魔するのならば・・・・。


「こんな感情は、いらないッ・・・・!」


捨ててしまいたい。捨てられるものならば、捨ててしまいたい。

でも、今の俺にはそれが無理なようだった。

本当に、自己嫌悪で死にたくなる。

いつか、いつか彼女の幸せを、心から祝福して、応援してあげることができるようになるだろうか?

なれたらいい。いや―――――、


「ならなくちゃ・・・・いけない」


彼女は、幸せにならなくちゃいけない。両親を失って、それ以上の悲しみを、彼女に与えるわけにはいかない。

そして、彼女を幸せにするのは、俺じゃない。俺じゃ、ない。


「俺じゃ、ないんだ・・・・」


そう声を漏らせば、何故か、目から熱いものが流れ出してきた。

女々しい。本当に、女々しくて醜悪で我儘などうしようもないやつだ、俺は。

だけど、この瞬間、誰も見ていないこの場所でだけ――――――。

俺に、泣くことを許してほしい。

この願いは誰へ願ったものか、今度は明確なものだった。


「うわあああぁぁぁぁあぁあああぁああああああああああぁああああぁぁぁぁぁああああああああぁあああああああああぁあああああああぁぁぁあああああああああぁぁあああああああぁああああぁあああああぁああああああああああああぁぁぁぁあああああああああああああああああああぁああああッッッッ!!!!!!!!!!」


ふと、涙で濡れる手に持った植木鉢に、目をやる。

植えられている花の名は、ナデシコ。

花言葉は・・・・何だったかな。

とにかく、今の俺にまったく合わない言葉だった気がする。


そういえば 忘れないでよ 花屋だよ 五七五になってんじxy(殴

ちなみに、魔獣の群れを殲滅するなんて芸当、普通の駆け出し冒険者には無理です。ディードの野郎がやたら鍛錬と狩りばっかして今まで生きてきたからこそ、たやすくできることになってるだけで。

そういう、周りと俺は違う、って自分は特別だと思いこんじゃうような厨二要素があったのも、彼が調子こいちゃった要因の一つです。


評価された!感想貰えた!やったぜふぉーーーい!!!

・・・・すみません静かにします。


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