18・僕の物語
いつも読んで頂きありがとうございます。
「何のこと?って言っても無駄かい?」
正之?何を言って・・・
「主よりお前をサポートするように言われている」
え?
「マサヒロさん多分ですが、あなたに弟さんは居ません」
何を言って
「これは、あなたの弟では無いんです。
あなたの記憶は弄られたものです。
管理者の都合で居ないはずの架空の弟としてあなたの前に居る」
正之が?え?
「多分、転移がらみで僕と接触してしまった為に創られた擬似生命体ですかね」
ミント君が問う。
「主は命を弄んだりしないよ。
私は擬似生命体なんかじゃない」
正之がそう言う。
アルト君を見ると、驚いた顔をした後、真剣な顔で首を振った。君も知らなかったんだね。
「どの辺りから疑われたのかな?
良かったら聞かせて欲しい」
正之だった者がそう言った。
「あなたの存在が無意味だった為です。
正直、マサヒロさんはあなたを呼ぶ必要が無い、話を聞く為だけにね。
それに、一瞬だけあなたの存在から微弱な魔力を感じた。
ここで僕が言わなければ、僕たちが帰った後、マサヒロさんの記憶を弄り直して全てを無かったことにしようとしていたんでしょう。
華さんの記憶を含めてね。
転移自体が無かった流れになっていたかな?」
「それこそが主の、願いでもあり救いなのです」
主からの伝言です。
「貴様等が帰る手伝いをしよう。貴様等は異物だ、この世界に相応しく無い。敢えて不干渉の理を外れよう。大人しく消えろ
そして彼の物は異物となった、帰還は許さん」
華ちゃんは帰ってこれない、神様がそれを許さない。
その事を忘れさせてやる。それが優しさだ。そう言いたいのか?
その為に俺の記憶まで弄っていた?
ふざけるな!神だかなんだか知らないが
余計なお世話だ!
お前の都合なんか知るか!
「マサヒロさんは納得出来ないみたいですよ?」
「ヒトの納得など必要無いのです、お前達は素直に帰りなさい」
主より許可が出ました。少し速いですが、お前達を飛ばします。
正之だった者がそう言うと、俺の目の前が暗くなってきた。
意識を切られる感覚だ。
ぼくは暗闇の中へ落ちていった。
「場所に希望はあるか?」
「その前に、あなた方の言葉が信用出来ません、マサヒロさんの記憶を消して保護?
消すのはマサヒロさん自身じゃないのですか?華さんの事は沈静化しつつある。
ここまでこだわり続けているのはマサヒロさんだけ。
今日の記憶を消して、後日山での事故死いかにもっていう未来しか見えないのです」
「私はさっき、命を弄んだりしないと言ったはずですが?」
「禁忌に触れたペナルティとでもしましょうか」
僕の事を僕抜きで語られる。
それも、物騒な話を。記憶を書き換えられる事と、殺される事。違いは何だろう?
同じことの様に思えて仕方ない。
どちらにしろ、今この僕は消えるのか。
それなら
「僕も向こうに行っては駄目ですか?」
僕の出した結論。今の僕が消えない方法
「駄目ですね」
「やめた方が良いです」
揃って否定されるとは思わなかった。
アルト君、ノリで首を振らないで。
「偶発的ならともかく、人為的な転移など主は認められません」
「マサヒロさん、向こうの世界は危険です。
文明も未熟なのでこの世界の人は厳しいと思います。それに、確実に管理者より妨害され、下手をしたら異空間に取り残されるかも」
僕の覚悟は否定される。
「マサヒロさんのこの地での安全を約束してくれるなら今すぐにでも帰りましょう」
「解りました、約束しましょう」
そう言って片手を上げる。
「マサヒロさん、ありがとうございました。華さんの事は任せて下さい。
願わくば、どうか健やかに」
空気が震えている。
「その、なんだ、マサヒロ!ありがとよ。
楽しかった。華ちゃんは俺の名誉にかけて助け出す!だから、幸せに生きてくれ!」
ミント君とアルト君が別れの言葉を告げる
ぼんやりと人生って儘ならないなぁー
なんて考えてしまう。
部屋が振動している、縦に横に
物理法則を無視した様な揺れ。
「さあ神の奇跡です、ヒトの身でありながら目にする事の栄誉を噛み締めなさい!」
振動が消え、目の前に草原が広がる。
その中心に一際大きな黄金の門がある。
静かにゆっくりと扉が開くと中は暗闇だった。
「行こうアルト」
ミント君はもうこっちを見ない。
進み出したミント君にすがる様に手を伸ばすが届かない。
アルト君が僕とミント君を何度か見比べた後、悔しそうな顔でミント君に続く。
ここで、僕の物語は終わった。
いつもの僕の部屋、どうやら寝てしまっていた様だ。仕事の疲れが溜まっているのか
両親は起こしてくれなかった。
お腹が空いたから、ご飯を食べに一階に降りたついでに文句を言おう。
実家暮らしも長いと、両親に依存してしまうなぁ。
今度、独り暮らしの物件でも見に行こうかな?一人息子だから、許してもらえないかな?まあ、楽だし、部屋も広いから実家で良いか。
次回更新も12時(正午)です。