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望まない戦記  作者: 脱兎
戦の前
15/34

15・フルールになりました

いつも読んで頂きありがとうございます。

華サイドです。

「俺はコナーだ」


おじさんは言う。


「お前は・・・なんだっけ?」


どうやら、お礼を受け取ってくれるらしい。


「えっと、お礼を」


言い掛けたが遮られる。


「違う、名前だ名前。」


あ、そっちか。


「佐伯 華といいます。」


そう言いながら、コナーは名前だったことに気が付く。コナーさんか。思い切り日本人顔なんだけどなぁ。


「変な名前だな。証明書の名前はフルールにした。だからお前はフルールを名乗れ」


変な名前って・・・中々ショックだ

フルールって、恥ずかしいなぁ。

あれ、確かフランス語で花じゃなかったっけ?凄い偶然。


「年齢は16才、職業は商人見習いだ。

出身は・・」

「待ってください、覚え切れないのでメモします」


そう言って鞄からノートとシャーペンを取り出す。すると、コナーさんが慌てる


「ちょっと待て。それは何だ?

紙か?もう一つは・・・解らん。

兎に角、それをすぐに仕舞え」


良く解らなかったが、言われた通りに鞄に仕舞う。


「ここじゃ駄目だ、宿を取るから付いてこい」


そう言って馬車に乗った。


「速くしろ、ほら」


御者台の上から手を伸ばす。

馬車って初めて乗るなぁー、てか、馬って思ったより大きいなぁー。

そんな事を思いながら御者台の横に乗る

さすがに目立つか?

そんな呟きが聞こえた。セーラー服は目立ちますね。

コナーさんは後ろをゴソゴソした後

マントを渡してくれた。ちょっと匂う


「俺のだ、とりあえずはそれを着てろ」


これを着るの?虫とか湧いてないかな?

嫌だなぁ。でも、目立つと色々マズそうだしなぁ。


「中々似合ってんじゃねえか、そうか、服も必要か」


「ありがとうございます、でも、私はお金が無いですが?」


まさか円が使える訳無いしね。


「ああ、気にするな。働いて返せば良い

この辺りじゃどうせ安物しか無いしな」


娼婦じゃ無いですよね?信用して良いんですよね?この世界のファッションなんて解らないし、


「お任せします」


と答えた。暫く馬車を走らせ、一件の露店で止まる。そこで丁稚用の服を買い

宿に向かう、定宿だそうだ。

宿に着くと、早速部屋をとる。

同部屋だそうだ、少し怖い。


「とりあえず着替ろ、終わったら下に来い」


そう言うと、部屋を出ていった。

意外と紳士なのかも知れない。


渡された服を手に取る、ゴワゴワしている。着替えて制服をちゃんとたたみ

鞄に仕舞うと、下に向かう。


一階は受付と食堂になっており、食堂の前でコナーは待っていてくれた。


「鞄は置いてこいよ・・・」


呆れ顔で言われた。だが


「いや、万が一もあるしな・・・まあ良い」


そう言うと、食堂に向かう。

実は、かなりお腹が空いていた。

でも、それどころじゃ無かった。

安心したら余計に空腹が気になった訳である。

「とりあえずメシだ、エールは要るか?」


そう言われたが断った、未成年は飲酒してはいけません!

少し前、酔ったお父さんにビールを少しだけ貰ったけど、苦いだけで美味しく無かったのもある。


「まあ良い、適当に頼むから食え」


そう言われた。運ばれてきた料理は、美味しく無かった。シチューの様な物や肉を焼いた物など全部味が薄く、臭みが強いのだ。調味料を入れ忘れた様な感じ。

コナーさんが普通に食べている所を見ると、これが標準的なんだろう。

食堂の中は込み合っているので、ここだけが不味い訳じゃ無いんだと思う。

空腹を誤魔化す程度食べ、後は果実のジュースらしき物を飲む。


「あんまり食ってねえなぁ。遠慮するなよ」


赤ら顔でそう言ってくれる。

美味しく無かったなんて言えない。


「普段から少食なんで・・・」


と、言っておいた。食事が終わって部屋に戻る。上機嫌だったコナーさんが、真顔で尋ねてくる。


「お前は何者なんだ?初めは世間知らずの貴族様辺りだと思ったが、服や鞄、さっき出した紙なんか見たこと無い品質だった。

そもそも紙自体か高級品だしな。

確か門で学生証?とか言ってたな。

それがお前の証明書なら見せてくれ」


華、もとい、フルールに迷いはもう無い。

コナーを信じると決めたから。

鞄から学生証を出すとコナーに渡す


「おい、何だこりゃ!これも紙で出来てんのか?それにこの絵!細かい仕事だな。

何かがびっしり書き込まれてる。それもほぼ同間隔で!これは文字か?こんなもの、王家ですら用意出来ないぞ!!おい、他には無いのか?」


コナーさん・・・興奮し過ぎ。

やっぱり読めないんだね。まあ、校則を読んでも意味は解らないだろうけど。

私もさっきから文字だと認識出来るけど読めなかったりするし。英語のスペルは読めるけど意味は解らないみたいな感じ?

言葉が通じただけでも凄いよね。


他にと言われて思い出した。

お礼を渡さなきゃ。

鞄の中から手鏡、筆記用具、ノートを出す。

コナーさんはその度に騒ぐ、そして、目が怖いです。

鏡は歪みも無く、ここまでの物は王宮にも無いらしい。サイズが小さいのが残念らしい。大きければ、冗談じゃ無く城が買えるかも!だって。

お礼にあげます!って言ったら物凄く怒られた。

なんか理不尽。

人前では絶対出すな!って言われた。

貰ってくれれば良いのに。

ペンやノートなど、ひとしきり騒いだ後

作り方を聞かれた。

知る訳がないよね。紙だけちょっと知ってるかも・・・レベルである。

向こうの世界では何でも売っていたから

敢えて自分で作るって事をしない。

あの田舎の村でさえ。

作り方は知らないと答えると。

全身全霊落ち込む。ちょっと面白い。

残りの鞄の中身は、教科書と制服

何故か電源の入らなくなった携帯電話

のみである。

携帯は説明の仕様が無いので、出していない。スマホでもないし、フルールは依存症では無いのだ。無くても問題ない。

そして、結局お礼は受け取って貰えなかった。






















次回更新も12時(正午)です


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