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望まない戦記  作者: 脱兎
戦の前
13/34

13・かわいそうだな、馬が

いつも読んで頂きありがとうございます。

華サイドです。

華の友達に鈴木正之という男が居る。

ライトノベルが好きで、華にも薦めてきた

異世界ファンタジーが良いらしい。

ある日、主人公が死んで異世界に行くらしい。その時に神様に逢って、特別な能力を貰い、現代知識と共に無双していく!

との事だ。




華は商人と別れた後反省し、商人の後を追う形で道を歩いている。

疲れた頭で何と無く昔を思い出す。

正之君まだ異世界ファンタジーとか言ってんのかな?良い顔して話してたなぁ。

そんな前の話じゃ無いはずなのに、随分前に感じる。

あの時、無双ってどういう事?って聞くと、さして苦労もせずに良い思いをする事って言ってたっけ?懐かしいなぁー。

進んでは居るが、道が合っているか解らないのが辛い。この先は丘になっており

先に町が有るか解らない。前も後ろも人影が無いのも不安材料になっている。

兎に角、あの丘までは頑張ろう。

そう思って歩いていく。しばらくして

華は丘にたどり着いた、丘の先には町が見えた。町をぐるりと城壁が囲んでいる。

こっちであってたんだ。嬉しさが込み上げてくる

遠くに馬車が見える、おじさんかな?

そう思いながら少し休憩する事にした。

どれだけ急いでも間に合わないだろうし

間に合った所でどうする事も出来ない。

馬車も一台では無くて、ちらほら見える。

鎧姿の人も居るな。

いよいよここは日本じゃ無いなぁーなんて思っている。

正之君、神様なんか居なかったよ!

能力もね!

異世界かぁー。

もう、お父さんとお母さんには会えないのかな?そう思いながら泣いた。



ある程度泣いて、気分が落ち着く。

華は立ち上がると、町に向けて歩き出した

町までもう少し、よし、頑張ろう!










華より先に町に着いたコナーは門の横の警備兵詰所に向かう。

街道での出逢いを報告するためだ。

今はもう疑ったりしていないが、万が一盗賊だった場合報告を怠っていると、同罪となる怖れもあるのだ。

まあ、コナーからしてみれば、あの少女を保護してあげて欲しいという思いが強くなって居るが。


「すまんが、さっき街道で一人の少女に会った、いきなり現れたから盗賊かと思ったが、怯えて逃げてしまった。林の中に行ったから追いかけられなかったわ

一応報告させてもらうぞ」


そう言って立ち去ろうとすると


「おい、まて盗賊だったのか?だから逃げたのか?何人いた?どんな格好だ?」


こうなるから嫌なんだ。長旅で疲れているのにお構い無しに質問攻め。宿だってまだとっていないのに。同じ事を繰り返し話す

しばらくして、漸く解放される。

無駄な時間だった。そう思い馬車に戻ると、門のあたりが騒がしい。

普段のコナーなら無視して立ち去るのだが、何故か気になり騒ぎの方へ向かう。


「何で身分証が無いんだ!怪しい奴だな

変な格好だし」


門番が騒いでいる。

良く見ると、さっきの少女が居た。


「ですから、学生証ならあります。

貴方のいう、証明書とか、ギルドカードとかは持っていません」


あちゃー。証明書無しか。

まああの状態だと、落としたか盗られたか

どちらにしろ厳しいな。

騒ぎを聞き付けて警備兵が出てくる。


「なんだ!何騒いでいるんだ!喧嘩か?」


助ける義理もない。良くある話なんだ。

あの子は捕まって奴隷送りになるだろう。

これからの人生を奴隷として生きていく。

良く聞く話なんだ。

でも、目の前で胸くそ悪い出来事がおこったら、自分にそれを回避出来る力が有ったら!


やるしかないだろ。なあ、サリー。


「おーい待ってくれ、そいつは俺のツレだ。なあ、こっちにこいよ。」


その場に居た全員がこっちを向く。

あの少女は一瞬怪訝そうな顔をしたが驚いた顔になる。


「時間掛かったな。やっぱり馬車に乗れば良かったんだ、それをお前が歩くって言ったからこうなったんだぞ。バカ野郎!」


少女に向かって進みながら、大きな声でそう言う。


「なんだ、お前の知り合いか?」


警備兵にそう言われる。


「ああ、道中で喧嘩してなぁ。そいつが歩いて行くってでていったのよ。

馬鹿が、証明書落としやがって。

再発行にいくら掛かると思ってんだ!」


まわりに愛想笑いを振り撒きながら歩いて行く。


「すんません、おい、お前も謝れよ!」


目の前の少女の頭を無理矢理下げる。


「なんだ人騒がせな!痴話喧嘩なら他所でやれ!おい、再発行するから早く来い!

仕事の邪魔をするな!」


警備兵にそう言われ、門番に小銭を掴ませる。


「ほんと、すんません。これで何か呑んでください」


そう言うと、少女の手をつかみ、引っ張っていく。

後ろで

「仲良くな!次は無いと思えよ!」


という声が聞こえた。

少女は戸惑いながら

「何なんですかあなた、あ、おじさん?」


などと言っている。呑気なもんだ。

小声で

「悪いようにはしない。俺に合わせろ、

助けてやる」


そう言って警備兵の後に続く。

又、詰所に逆戻りだ。

中に入ると、さっきの奴が


「どうした?忘れ物か?」


なんて言って来やがる。上手く誤魔化さないと。


「いや、別件だ、ツレが証明書を無くしたみたいでな・・・はぁー」


大袈裟目にため息をつく、少女も


「そうなんです。落としてしまったみたいで」


と言っている。うん、合わせて来てるな。

だが、襤褸が出ないとも限らない。


「お前はだまってろ!馬鹿が」

と言っておいた。


「騒ぐなと言った筈だぞ!お前達!!」


まずい、機嫌を損ねると厄介だ。


「すんません」


愛想笑いで誤魔化す。

警備兵から用紙を渡される。


「解っていると思うが、反則金銀貨5枚だ

まずは納めろ!」


そう言われる。

本当の反則金は銀貨4枚のはずだか、敢えて6枚出す。


「うちのは字が書けないから俺が代わりに記入しますね」


銀貨を渡した兵にそう言うと


「書けないなら仕方が無いな。

記入漏れの無いように」


そう言われた。

この時点でもう、問題は無い。

適当に書いて、金を受け取った奴に提出するだけだ。そうすれば、新しい証明書をくれる。

それで終わりだ。

本来なら面接や、怪しければ身体検査や持ち物検査なんかがある。

ここでは、奴等が黒と言えばどうなろうとも、有罪となる。滅多には無いが。

だから、普通は

反則金に少し色を付けて済ますのが一般的だ。俺はかなり多目に渡した。

それを受け取った時点で白に成った訳だ。

勿論、町の中で犯罪行為が有った場合は

即死刑になるが。そのあたりは暗黙の了解だな。


新しい証明書を受け取り、今度こそ詰所を出ると馬車に向かう。

宿屋に行ってエールを飲んで寝る!

そう決た。今日は色々疲れた。


「あの、助けてくれたんですよね?

ありがとうございました」


私は、佐伯 華と・・

「待ってくれ、聞きたくない」


被せる様に言う。


「成り行き上助けたが、これ以上は勘弁してくれ、頼む」


冷たいようだか俺は自分一人で精一杯なんだ。訳あり少女の面倒など・・・。


「あの、それでも、お礼をさせてください。何か差し上げる物は」


そう言いながら鞄を漁っている。

お礼を?俺に?

助けたんなら最後まて助けろ!じゃないのか?


「お前、危ういな。」


思わず言ってしまった。

俺も俺もお人好しがすぎるな。


「俺が奴隷商人だったらどうする?

お前の身分は俺が握っている様な物だぞ

助けた様に見せかけて売り払う事だって有る。

どの道、バレたらおまえは奴隷送りなんだから。

娼舘に売っても良い。お前は高く売れるだろう。娼婦の仕事は辛いぞ」


あり得た可能性を示す。世間知らずの少女に。


「そうなれば、怖いですね。

でも、ここでそう言うあなたは違いますね。

多分だけど、そんな人は私が疑問を抱かない様に、もっと優しく上手く接してくると思います。

私を遠ざけようとはしないです。

ですよね?」


真面目な顔で少女はそう言う。

頭は悪くない。だが、物を知ら無さすぎる

どっかの王族か貴族か?にしては、傲慢さが無さすぎる。こいつは何だ?

良く見れば、かなり奇抜なデザインだが

凄まじい技術で出来た服だ、鞄も靴も。

金の匂いと、それより大きなトラブルの匂い。

なあ、サリー。俺は・・・・どうするべきなんだろうな?








次回更新も12時(正午)です。


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