12・器
いつも読んで頂きありがとうございます。
「うん、良い機会だし、ここで言うよアルト、驚かないで聞いてほしい」
そう言って、ミント君は語りだした。
「アルトは、僕の渾名知っているよね。
バケモノの子、そう呼ばれている事に
君も薄々は気が付いていたんじゃ無いかな?
僕が普通で無い事に。
初めて出会った時、学園内に魔族が沸いた時、あの時も力を使いすぎた。
普通の子は設置型の魔方陣も、無詠唱も出来ないよね。おまけに、魔族の特性も知っていた。
あの後、頭を抱えちゃったよ。
目撃者は消す!ともね。
まあ、冗談だけど。
僕はね。
君達の言う
知的形態の魔族なんだよ。
ドラコンと同クラス位かな?魔力は僕の方が上だね。」
静かな告白だった。泣きそうな顔で絞り出す様な告白。
「魔族だと?お前が?悪い冗談だ。
お前は抗魔の儀も受けてたじゃ無いか。
ずっと一緒にいた俺は穢れに掛かってないぞ。どさくさ紛れに嘘は良くないぞ」
アルト君がそう言って笑おうとするが、ミント君の状態を見て止める。
「アルト、僕は抗魔の儀は受けていない。
あの時、あの場所には居た。それだけだよ。
穢れはこのペンダントで抑えている。
小型の結界だね。自作だよ。
僕はこのペンダントを学園内で外した事がない。
騙して居るつもりは無かったけど、隠していた事はごめんなさい」
静かな時間が流れる。
誰も喋らない。重い空気だ。
「ミント君、ドラコンクラスなんだ!
無双パターンかぁ。
んじゃ、アルト君は王族辺りかな?」
ナイス弟!
空気を読まない発言。
よし、ドリップコーヒーを淹れてやろう。
「飲み物も冷めたし、新しいの用意するよ、待ってて」
そう言って立ち上がろうとした時
「ふざけんな!ごめんなさいだ?
何で謝るんだ!何でそんな顔してるんだ!
俺はその程度の男だと思っているのか!!」
アルト君、激怒です。かなり怒ってます。
ミント君は、驚いてます。
まあ、驚くよね。論点ずれてるし。
「うん、うん!思ったより大きな器だったみたい。凄いねアルト!」
出逢ってから今迄で最高の笑顔で答えるミント君は、少し泣いているのかもしれない。
「で、王族なの?当たり?ハズレ?」
諦めない弟。そこは自重だ!間違うな。
「王族じゃ無いですよ。しがない貴族ですけど」
貴族様ですか。そうですか。
俺達兄弟、無礼だな。
「あちゃーそのパターンね」
ぶれない弟、お前が居てくれて良かったよ。
コーヒーを淹れる為に席を立つ。
喉乾いた。
「えっと、後質問無いですか?」
ミント君がそう言う。
「どうやってここに来たの?死んだら来てた系?時空の裂け目に飲まれた系?
スキルとか貰えた?神様が出てくる系もあるなぁ」
「先程は、スズキさんに僕の推察を聞いて頂こうとして、スズキマサユキさんに来て頂いたんです。」
「あー俺も鈴木なのよ、紛らわしいから
マサユキ、マサヒロでいいんじやね?」
「はい、マサユキさん、僕達は講堂で
講義の途中に発生した時空の歪みに入った事でこの世界に来てしまった様です。
歪みは、途中まで解析しましたが
異常な魔力を感じました。
歪に圧縮された部分と薄い部分が混ざっている様な、重なり合っている様な。
転移魔方陣の多重積載で、作った立体式魔方陣の様な・・・・。
僕とアルトは別の場所に飛ばされました。
先に入ったのは僕ですが、後から入ったアルトが先にこの世界に来た様です。
時間と空間が安定していないみたいですね。
使用魔力の関係か、成功率の関係か、因果率の近しい世界に飛ぶ様になっていたみたいです。
人為的では無いと思いますが
出来るとしたら最上位魔族の一握り位ですか。リスクが高すぎてやろうとはしないはずです。そうなると、自然発生ですが
恐ろしい確率になりますね。
術式の中に相互間が見えたので、僕達の替わりに同質量程度の物があちら側に行って居るかも知れません、ここ最近、何かが消えたという、噂とか有りませんか?」
コーヒーを淹れて戻って来た時、聞こえてきた。
消えた噂?まさか、いや、でも。
正之を見る。
正之もこちらを見ている。
3年前、この村で一人の女の子が消えた。
何の手掛かりもなく。
まるで
神隠しの様に。
次回更新も12時(正午)です。